第18話 正体
帰り道、初めて
「お嬢様ってことは・・・」
「言葉の通り」
「親は何を?」
「会社の次期社長が父親、祖父が現役の社長。母親は教育委員会の偉い人だったかな」
超面倒くさいじゃん。
「中学の時に自慢気に話すのを聞いたからさ」
なんて女なんだ。
「てことは、前の高校でのことは揉み消した的な?」
「多分な」
ややこしい。
苦虫を噛んだような顔をしている時生君。
「あんず、何かあったらマジで言えよ」
「分かってる分かってる!」
明るく言わなきゃ。
心配はかけられないから。
「約束な?」
「うん!」
この時はまだ知らない。
そして、
※
最初は小さかった。
金井さんの席の横を通ると、足を出して転ばされる。
金井さんが私の所を通るとわざと机を蹴られた。
1週間が過ぎると、教科書に異変が起きた。
小さな破れ、小さな落書き。
次に内履きが濡れていたり汚れていたり。
小さなことだったから気にはしなかった。
一方で、執拗に金井さんは時生君に話しかけていた。
でも彼は無視ばかりで、彼女は自分の席に戻るとイライラしていた。
すると、クラスで出来た友達が声をかけて慰めると泣いていた。でも嘘泣き。
私は思った。
あの子はきっと・・・
私は怒ることをしなかった。
それが、後に後悔する。
ちゃんと対処しておけば、エスカレートしなかったのに。
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