第11話 夏だ!プールだ!
夏休みに入ってから、最初の1週間は宿題を片付けた。残りは読書感想文のみ。
それからは、
そんなある日。美夜ちゃんから連絡がきた。
メッセージを見ると。
『
あの篠木さんから?!
何か企んでやがんな!
『ちなみに他には誰がいるのか聞いた?』
10分後、返信がきた。
『篠木さんの友達経由で
友達経由とはいえ、安藤君も!?
なら行かなきゃ!抜け駆けは許さーん!!
『美夜ちゃん、行こう!』
『りょっ』
てなわけで、篠木さん主催とはいえ、安藤君がいるから、行くことにした。
とびっきり可愛い水着を準備しよーっと!
※
「美夜ちゃん、この水着良いかな?」
「あんずはどんな水着でも似合うから大丈夫!」
「美夜ちゃんは?」
「私は水着だけど水着に見えないやつあるから」
「ショーパンの?」
「そうそう!Tシャツ着ちゃえば水着に見えない水着さ」
「なるほど!」
羨ましい、目立たずとも自分に合う水着があって!
「このフリフリついてるやつ良いじゃん!」
美夜ちゃんが見つけたのは、胸元にフリルのついた白の水着。
「可愛い・・・かも」
「これに決定!」
現在、プールにきていた。
篠木さんを筆頭に安藤君、私、美夜ちゃん、篠木さんの友達の
それぞれウォータースライダーで遊んだり、浮き輪でただぷかぷか浮いてのんびり過ごしたり、泳ぎの競争など、思い思いに遊んでいた。
私は・・・Tシャツを脱げずにいた。
美夜ちゃんと同じなんちゃって水着にすれば良かったのか、後悔。
篠木さんは安藤君に密着していた。
腕を絡めて、なんか胸を押し付けてないか?
大きいからって調子こいてんじゃないわー!
ダメだ、小ぶりな胸の私って・・・。
「おっぱいで張り合っちゃダメさ」
「美夜ちゃん!?」
美夜ちゃんは浮き輪に乗って優雅にぷかぷか浮いていた。あれ?お胸が篠木さんと良い勝負していないか?
「大丈夫、必ずチャンスは巡ってくるさ!」
グハッ・・・心の傷が・・・。
「Tシャツ脱がんのかい?」
「脱ぐ自信を下さい」
「ほぉほぉ」
と、美夜ちゃんはプールから上がって私のTシャツを脱がそうと手を伸ばしたその時だった。
どこからかパタパタと近づく足音。軽快だ、女子かな?
あっ・・・。
「あーんーずーちゃーん!」
うわぁっ!!!抱き付いてきた!!!
「こっ
「あーん、可愛さ倍増する水着姿を私にみッ」
「こーら!」
湖波先輩の両肩を掴んで先輩はグッと後ろに。
「
「ごめんね突然」
「いえいえ」
まさかの遭遇!
「なんでいるんですか?」
「生徒会の2年生だけでプールに来てね。3年になると受験か就活の波にのまれるから今のうちに」
「そうでしたか!」
「ううっ離せ橘君!もうあんずちゃんのことガオーッてしないから!」
「はいはい」
パッと手を離した橘先輩。
すると湖波先輩はいたずらっ子の顔になり。
「えーい!」
「うわぁぁっ!!??」
思い切りTシャツを脱がされてしまった。
あわあわしていた私は、ある人と視線がぶつかった。
「ぁっ・・・」
「・・・」
安藤君、
「見ないでー!!!」
※
湖波先輩と橘先輩たちがいなくなった後、私は正気を失っていた。
「私は、私のタイミングで、いや、でも、恥ずかしくて、意気地無しが発動・・・いやいや」
体育座りで小さくなり、独り言をプールの隅でぶつぶつ言っていた。
「とにもかくにも、一生の不覚。合わせる顔がない」
いきなりTシャツ脱がされて、安藤君にまじまじと見られて、ショックです。
自分で脱いで、うぉぉぉっ!て感じなら平気だったのに。
俯いていると、隣に誰かが座った。
「大丈夫?」
「誰?」
「結城、結城斗緒哉」
安藤君のお友達か。
「佐藤さん、名前覚えて」
「私は安藤君しか覚えてないです」
他の同い年の男子なんて覚えてない。
「時生のこと好きなんだ」
「あっ!」
「面白いね」
クスクス笑う結城君。
「あの、内緒で」
「分かった分かった」
信用できない、怪しい。
「時生、君の水着姿以前に、俺たちと遊んでいても、積極的にアピールする篠木さんといても、佐藤さんのこと気にしてたよ」
「えっ?」
知らなかった!
「だって、遊びに夢中かと」
「夢中なようで、佐藤さんが気になるようだよ?」
私は篠木さんと会話している安藤君のことをじっと見てみた。
すると、安藤君はチラッチラッと私の方を見ていた。
き、気になるの?私のことー!
気にしてもらえるなんて幸せだー!
「本当だ!」
「嬉しいのか!」
「うん!」
満面の笑みが咲き誇る。嬉しくて幸せです!
「可愛いなぁ」
「ん?」
「なんでもない、じゃまた」
彼は安藤君たちの所に向かった。
えー、あの彼の名前なんだっけ?テヘッ♪
忘れてしまったのはしょうがない、諦めて。
うん、最後の最後に、安藤君からお言葉があれば立ち直れるのに・・・。
私はさらに縮こまる。
ペタペタと、ゆっくり誰かが近づいてくる。
さっきの人?しつこいなー・・・
「よっと」
「えっ」
私の隣に、王子様が降臨しました。
※
私と安藤君はしばらく無言だった。
互いに何から言えば良いのか迷っている感じ。
早く言わないと、早く早く早く・・・。
「あの」
「あのさ」
言葉が重なった。
「安藤君からどうぞ」
「いや、佐藤から」
譲り合い。なんだかちょっと笑える。
「ふふ」
「?」
「お互い、始めの言葉に迷うって、ちょっと笑えるなって」
「確かに」
2人でクスクス笑う。
「安藤君、プールは好きな方?」
「普通」
「私は室内だから良い。外なら日射しが嫌だな」
「焼けるよな」
「それそれ」
他愛ない会話。
「なぁ?」
「うん」
間が1つ。
私の方を向いて一言。
「水着似合っているな」
・・・・・・・・・・・・
「んじゃ、帰る準備すっかな」
安藤君は立ち上がり、更衣室に行った。
一方の私は放心状態。
美夜ちゃんに呼ばれるまで、意識は安藤君で満たされた。
楽しくしょんぼりからの、幸せをまた1つ味わうことが出来た1日になりました。
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