第9話 しくじってからのありがとう!

 身長に勝てなかった・・・。


「二人三脚に出る人を決めまーす」

 体育祭について話し合いをしていた。

 担任は見守ることに徹して後ろにいる。

 リレーは足の速い人限定で、この前の短距離走の記録会の結果を元に話し合い、安藤君がアンカーに!

 わあ!応援するぞー!

 ポンポンの準備した方が良いのかな?

 その他の種目は決まり、残ったのが二人三脚。

 そこで私は諦めた。

 話し合った結果、私は美夜みやちゃんと。

 安藤あんどう君はなぜか篠木ささきさんと。

 なんでよー!!!

 くっ・・・なら、せめて!と、悪あがきで2番目に出走する安藤君から3番目で私がバトンを受け取るように、順番でなんとか希望通りに!

 まあまあね、うん。


 てなわけで、現在、体育祭開催中。

 二人三脚始まる5分前。

 安藤君と篠木さんは軽く練習している。

 ううっ・・・悔しいー!

「睨んでも仕方がないよ」

「はい、美夜みやちゃんのおっしゃる通りです」

「とりあえず、軽く練習しよ!」

「うん!」

 私の右足と美夜ちゃんの左足を合わせて結ぶ。

 1、2、1、2、とリズムを合わせる。

「悪くないね」

「だね」

「頑張ろう!」

「おー!」

 気合いを入れていたら、ピストルが鳴った。

 始まった!

 あっという間に2番目の安藤篠木ペアにバトンが渡った。

「よし行こ!」

「うん!」

 体育の授業でたくさん練習して、バトンパスも練習したから大丈夫。

 位置につく。来たよ来たよ!

「はい」「はい!」で、安藤君から私はバトンを受け取った。

「せーの!」

 1、2、1、2、1、2、1、2、1、2・・・

 順調に走り、2ペアを越して3位についた。

 これでクラスの入賞は間違いなし!

 次のペアにバトンを渡した瞬間に、悲劇が起きた。


 躓いて転んだ。


「大丈夫美夜ちゃん!?」

「私は大丈夫、擦りむいただけ。でも、あんずは?」

「私も大じょ・・・」

 立とうとしたら足に痛みが走った。

 足首、捻ったかも。

「あんず?」

「たいしたことないよ!大丈夫大丈夫!」

 心配かけたくない。自力でもう1度立とうと試みたけど。

「いっ・・・」

 やっぱり痛い。

「捻った?」

「うっ・・・」

「隠したらダメじゃん!ほら、手をかすから一緒に保健の先生とこ行こう」

「ごめん・・・ありがとう」

 美夜ちゃんの手をかりてなんとか立ち上がった。

 けど痛くて歩けない。

 すると、息を切らして誰かが来た。

「大丈夫か?乗れ」

「安藤君!?」

 安藤君は私に背中を向けて屈んだ。

「あの・・・」

「早く乗れ、酷くなるぞ」

「は、はい!」

 私は安藤君の背中におぶさった。


 そう、おんぶ、です。


 そして、保健の先生の所まで連れてってもらった。


 重たくなかったかな?大丈夫だったかな?

 心配不安半分、嬉しさ幸せ半分、複雑だった。

 背中広いな。あの頃から見たら、大きくなるよね。

 男の子、から、男子、なんだね。

 ドキドキが伝わっていたら恥ずかしいな。

 気づいていたとしても、知らんぷりしてよね、お願いします!


 処置の後、またおんぶしてもらって、みんなのいる所に戻った。

「ありがとう、安藤君」

「無理すんな」

 これからリレーなのに。

「ごめん、忙しい時に」

「いいよ、気にすんな」

 申し訳ないよ、この後走るじゃん。

「佐藤」

「?」

 椅子に座る私の目線に合わせて、安藤君は屈んだ。

「迷惑とか思ってない、本当に心配すんな」

 頭に何か。ふわふわって感じで、優しく。

 えっ・・・これは・・・!

「じゃ、1番取ってくる」

 そう言って立ち、彼は所定の位置に走って向かった。


 あっ、あっ、あっ・・・


 頭ポンポーン!!!!



 リレーは、本当に時生ときお君の宣言通り、1位でゴールした。

 カッコ良かった、嬉しかったー!

 みんなのために走ったけど、頭ポンポンしてくれたから私のために走ったんじゃないかと!

 あぁ・・・幸せ・・・。

「あんず、生きてる?」

「ハッ・・・!美夜ちゃん」

「今、閉会式」

 体育祭は終わりを告げていた。

 生徒会長さんの隣の人に目がいった。

「美夜ちゃん」

「ん?」

「あの人、綺麗」

「ああ、湖波こなみ先輩ね」

「知ってるの?」

「次期生徒会長だよ」

 へぇー、そうなんだー。

「うちの担任とは知り合いらしい」

「担任・・・名前なんだっけ?」

「担任の名前くらい覚えとけ」

「あはは」

 安藤君に夢中で全く記憶してなかった、ダメな生徒。

平幡ひらはた先生」

「はい、覚えました」

 ふーん、忘れそう。

 でも、あの湖波先輩とは話してみたいなー。

 ぼんやりと考える私でした。

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