第6話 連絡先交換

 今日は本当に幸せだった~♪

 でもやっぱり、意気地無しが出てくる自分にどうしようもない。

「はぁ・・・」

 溜め息を吐いた。


 コンコン


「姉ちゃん、姉ちゃん」

「何よーあずきー?」

 ガチャッと妹のあずきが入ってきた。

「姉ちゃん、とき君と会ったん?」

「今さら何よ」

「母ちゃんから聞いてさ」

「あっそ」

 中学3年のスポーツ女子の妹。

 ショートヘアで肌は今は白いけど、夏になると部活の陸上で日焼けして更にスポーツ女子感が際立つ。

「ねぇイケメン?」

「当たり前でしょ!」

「ふーん」

「なんなのさっきから」

「姉ちゃんさ、とき君と連絡先交換した?」

「あっ」

 妹よ、それは盲点でした。忘れてた!

 てことは、今この時間、友達の他にあの篠木ささきさんともやり取りしていると思うと・・・。

「ギャァァァァァ!どうしよー!!!どうすれば良いのー!!??」

「急に何!?情緒不安定になった!?」

 あずきの肩を掴んでグラグラ揺さぶる。

「ねっ姉ちゃん1回落ち着いて、ね?ね?」

 落ち着いてなんかいられんわ!

「私ってやっぱりバカだよ!アホだよ!」

「恋愛に関してはな」

「なんか言った?」

「いいえ」

「でも、どうすれば・・・」

 出だしから先越されるってどういうこと!?

 私のバカバカバカー!!!

「頭ポカポカしたって進まないよ」

 グサッ・・・

「グハッ・・・傷に塩を塗るんじゃない・・・」

「全くどうしようもない姉ちゃん」

 姉は妹より不器用なの、理解して。

「とりあえず、明日必ず聞いたら?」

「どうやって?」

「はぁ?」

 姉ちゃんバカなの?て目しないで。

「普通に交換しよって言えば良いじゃん」

 普通が出来るなら苦労なんかしない。

「姉ちゃん、ああ言えばこういう、ダメだよ」

「すみません」

 妹に軽く説教をくらう姉。

「友達の協力を仰ぐのでも良いから、連絡先交換することだね!」

「はい」

 リア充な妹には敵わない姉でした。



 今か今かとタイミングを伺っていたが、なかなか踏ん切りつかず時間だけが過ぎていた。

「このままでは、あずきにバカにされる」

 ボソッと一言。ガックシ。

 1人で話しかける力はない。誰かがいないと。

 1人だと、緊張して、言葉が出てこなくなるから。

「ではまた明日」

「起立、礼」

「「「ありがとうございました」」」

 帰りのホームルームが終わった。

 そして私も、目的達成出来ず、強制終了。

 と思いきや、鞄も持たず教室を出た安藤あんどう君。

 どこに行くのかな?ついて行っちゃえ!

 安藤君の後を追った。


「とっ、図書室?」

 安藤君と結びつかない場所だった。

 覗いて見ると、うぉっ!

 ど、ど、読書してる!

 人は見掛けに寄らない。

 あっ!そうだった。

 小さい頃、他の男子は外で活発に遊んでいるのに、安藤君は、時生ときお君だけは絵本に夢中だった。

 だから私は時生君が読んだ絵本は全て読んだ。そうしたら、本が好きになっていた。

 今でも書籍はよほどのことがない限り買わないけど、文庫本は買って読むし、図書館や学校の図書室では書籍を中心に借りて読んだ。

 やっぱり根っこは変わらないんだね。

 ハッ!私は持っていた鞄の中を漁った。

「あった!」

 その後、メモ帳とペンを取り出し、カリカリ。

 それにメモを挟めた。

 あっ、グッドタイミング!

 読書を終えた安藤君はカウンターに向かい1冊本を借りたようだ。

 よし!出る!来る!

 ドキドキが止まれと願いつつ、勇気を出して。

「あっ」

「おっ、佐藤か」

 ゎゎっ!名字、呼ばれた!幸せ!じゃない!

「あっ安藤君!」

 ぅぅっ、出せ、出てこい言葉!

「あの、その、こっこっれ・・・」

 鞄にあった文庫本を震えながら差し出した。

「おすすめ、です」

「・・・」

 ヤバいなんか言ってよ!泣きたい!

「ふーん」

 拒否されるかな?

 そうだよね、先着の本をさっき借りたもんね。

「分かった、読んどく」

「はい!」

 安藤君はそれだけ言って教室に戻って行った。


 ミッション達成じゃー!!!

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