第5話 昼休みの小さな予兆

美夜みやちゃんのお陰です、ありがとう!」

「お役に立てたなら光栄です」

 昼休み、美夜ちゃんと一緒に食堂にいた。

 昨日の席替え潰し(元は安藤あんどう君だけど!)をしてくれたお礼を言った私。

「でも、なんで委員長に?」

「それは簡単だよ」

 美夜ちゃんはラーメンをズズッとすすり咀嚼して飲み込む。

 それから言った。

「内申点稼ぎ、中学からずっとさ」

 策士ではないか!

「凄いね」

「へへっ♪勉強に自信がない訳じゃないけど、内申点稼ぐと特典が良いらしいし」

「推薦とか?」

「そうそれ!」

 考えてんだな、高校生になったばかりなのに。

「あんずも考えながら行動すると良いよ」

「検討します」

 安藤君と何かやるなら即決するのになぁー。

 私の生活は安藤君を中心に動くのよ!

「とりま、私が委員長になったからには、あんずと安藤君を身近にする協力はこっそりするからご安心を」

「あぁ、私の女神」

「あはは、大袈裟な!」

 美夜ちゃんを味方にした私って今のところついてる!

 あとは、いかに安藤君を篠木ささきさんから守るか。

「むぅぅ・・・」

 同じテーブルに座る安藤君と篠木さん。

 遠くから見ることしか出来ないもどかしさ。

「行けば?」

「いやいやいや」

「先越されるよー。ツバつけとかないとダメだよ」

「どうやって?」

「意気地無しだなー」

 すると美夜ちゃんは安藤君の所に行った。


 えっ


 何か一言二言会話して、美夜ちゃんは戻ってきた。

「ほれ行くよ」

「はい?」

 美夜ちゃんは私の腕を引っ張り立たせて「はいおぼん持って」とキビキビ指示を出し、それに従った結果。


「お邪魔します」

「うん」


 安藤君と同じテーブル、しかも向かい!

 隣に座りたかったけど、篠木さん退かないから諦めた。

 何を話せば良いのー!?

「ねぇ佐藤さん?」

「!?」

 篠木さんから話しかけてきた。

 緊張しながら耳を傾けると。

「同じクラスの女子の中では可愛い方ね」

 おっお褒めのお言葉・・・昔は私のことデブブスとか思ってたくせにー!

 ここは信用してはならぬ。

「そうかな?あはは」

「自信持って」

 なんだろう、ちょっとしたバトルの予兆がするんだが。

「ねぇ安藤君もそう思わない?」

「・・・っ!」

 バカ何を彼に聞いてるんだ!

 じっと私のことを見た安藤君は一言。


「思う」


 パパパパア~ン♪

 パフパフパフ♪


 頭の上で幸せの鐘が鳴り響く。

 どっどうしましょう・・・気絶寸前。

 今から飛び降りても、翼が生えてどこまでも飛べそうだ。

 そんな気がする!

「浮かれんな」

 ビクッ!

 小声で忠告してくれた美夜ちゃん、サンキューです!


 久しぶりの会話は呆気なく終わり、それぞれ教室に戻った。

 学食を出る前に篠木さんに呼び止められた。

「どうかしたかな?」

 不安です、はい。

「たいしたことじゃないの」

 怪しい、嫌な予感する。

「私、安藤君のこと狙ってるから引いて」

 まさかの!?

 何か言わなきゃ・・・何か何か何か・・・。

「ゎっ・・・」

「?」


「私も安藤君が好き。だから引かない」


 言っちゃったアアアアー!!!


「宣戦布告・・・良いわ、受けてたつ!!」

「ふえっ?」

「良いライバルになりそうね」

 そう言って篠木さんは教室に戻って行った。

 学校生活、大変になりそうだ、トホホ・・・。

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