第9話「物語食べ」
「さてと、じゃあそろそろ冒険者ギルドに行きましょうか?
それにしてもユーリ、あんた食事したことないって、いったいどうなってんのよ?」
みんなすごいのね、「物語食べ」なんて初めてみたわ。
「さっきから言ってるけどその「物語食べ」って何よ」
え、口で食べることよ?
本の中の人たちって、みんなそうしてるでしょ。
でも、普通は「チューブ」で食事するでしょう?
赤ちゃんのへその緒と同じよ。
生まれるまで赤ちゃんとお母さんは「チューブ」で繋がってるの。
でも、生まれたらすぐに切ってしまう。
だから、身体に「代わりの」チューブを付けないと……
「も、もうわかったから!
いや全然分かんないけど……ほら、最後の一口頑張って食べなさい。
あーん……よしっ、いいわよ」
あ、あーん……んむんむ。
口の中が幸せ……とっても不思議……んむんむ。
「あ、あの……今日のお肉は少し弾力があるので、また私が代わりに噛みましょうか?」
んむ? ありがとうクリスティーナ。でも、もうコツが分かったわ……んむんむ。
「甘やかしちゃダメよクリスティーナ!
むしろこういう固いもので噛む力を養わないとダメなのよ。
小さい子どもなんかにも「グミ」とかよく食べさせるでしょ?」
「あ、グミってそういう為のものなんですか?
てっきり見た目が可愛らしいから人気なのだとばかり……リリアーナ様って物知りですのね」
んむんむんむ。でも、それならリリアーナ。私もっ……んむんむ、グミ食べてみたいわ?
「ま、確かにそっちの方がいいかもね……、ギルドの近くで買えるはずだから後で買ってあげる。
って、いつまで「んむんむ」してんのよ!
もう行くんだから貸しなさいっ!!」
んぼっ!? ……ん? リリアーナの手もなんか……ぺろぺろ、おいしいかも?
「きゃー!
指舐めなんじゃないわよ!
ったく、こんなの「ぱくっ」すぐ食べちゃいなさいよね?」
あ、あともう少しだったのに……。
リリアーナってば食いしん坊なのね?
あら、どうしたのクリスティーナ?
「リリアーナ様ずるい……はっ!?
べ、別に何でもありませんわっ!
では、私はお昼から用事がありますのでこれで……」
「あ、そうなの?
じゃあ、また夜になったら来るわね?」
あら、クリスティーナは来てくれないの?
「そういう言い方するんじゃないわよ。
クリスティーナだって用事があるんだからしょうがないでしょ?」
あ、ごめんなさい。
クリスティーナと一緒にいるのが楽しいから、つい。
また夜になったら来るわね。
「そうそう、それでいいのよ。
じゃあね、また後でクリスティーナ!
行くわよユーリ!」
あ、待ってリリアーナ。
じゃあまた会いましょうね? クリスティーナ。
「は、はい。
それではお気をつけて行ってらっしゃいませ。
また会いましょうね……(いつか、きっと)」
あれ、今何か言ったクリスティーナ?
「ほらほら、置いていくわよ!
わわっ、ちょ、ちょっと引っ付くなってば!」
……ユーリ様、私はいつかきっとあなたのもとに帰ってきますわ。
リリアーナ様、あなたもお友達と思っていいんですよね?
でも、ひとつだけいいですか?
この大きな猫のきぐるみ……いったいどうしたらよいのでしょう?
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