第205話 亜米利加のタッチダウン
ドーントレス隊の空母までの距離は約10キロメートル!!現在の高度5000メートル!!
SBDドーントレス急降下爆撃機43機は隊長の指揮を受け、海上に小さく見える、相手の投じたメンコのような日本の3隻の空母に対し、1小隊3機編隊を4つ、計12機ずつに別れて翼を翻し、各小隊はお互いの表情が見えるまでに接近すると、ライトR1820サイクロン9空冷星型エンジンが唸りを上げる!!
アメリカ海軍の急降下爆撃法は、日本のそれとは異なり、基本的に小隊3機が横隊で一斉に降下し、一斉に投弾する方式である。
日本の急降下爆撃法は全機が縦隊に、一直線に連なって順次投弾する方式である。
被弾率を軽視し点による命中率を重視した日本と、被弾率軽減と面による命中率の両面をとったアメリカ。
例えるなら、日本は羽織を着用した武士の日本刀での縦隊切り込み戦術、集中砲火を受けるので被弾率が高いが、コントロールが容易で命中率が高く、破壊力は普通。
アメリカは軽鎧を着用した戦士の、戦斧での横隊振り下ろし戦術、射線が別れるので被弾率が低くなり、コントロールが難しく命中率は平準で破壊力は高い。
ダリル中尉は叫ぶ!!
「ドーントレス隊各小隊に告ぐ!!2小隊ずつ!!2列横隊隊形つくれ!!!」
今、ドーントレス隊は、三派に別れ、各波は2小隊6機が若干先行し、少し距離を置いて2小隊6機が続く二段構えの突撃隊形を取る!!
最高速度の時速400キロを超え、まっしぐらに爆撃コースを疾走!!各機から伸びる航跡はまるで航空ショーのクライマックスの様相!!!
しかし!!クライマックスに横槍を入れるべく、そうはさせじとその群れに向かって急速に接近する白い機体!!!
パイロットからは、太陽光を反射させ、両翼に描かれたレッド・サークルが悪魔の血眼のように見えた!!!
「アレは!!来るぞ!!ジャップのファイター!!!2時の方向ォォ!!」
「クソッ!!後部銃座では銃口を向けられないぞ!!!護衛はどこに行きやがったァ!!」
「爆撃コースだ!!隊形を崩すな!!!耐えろォ!!」
弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾!!!!
ジャップの悪魔は、その鎌を振り下ろす!!!
「ジーザス!!!ゥゥ!!!」
弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾!!!!
零戦隊は3つの群れに襲いかかる!!密集隊形のドーントレス隊は格好の標的!!!
頑頑頑頑頑頑!!!頑頑頑頑頑頑頑頑頑頑頑頑!!
零戦9機は鮮やかに一航過すると、ドーントレスは2機が爆散!!5機が黒煙を吐くと下降曲線を描いて墜落を始めた!!
零戦隊はすぐに旋回に入り、ドーントレス隊の後方からの攻撃に移行する!!!
「クソッ!!これ以上はさせるかよ!!!」
ジミー・サッチ中尉は、F4Fワイルドキャット戦闘機を駆り、旋回中の零戦に喰らいつく!!!
弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾!!!!
敵戦闘機に回避運動を強要し、ドーントレス隊から遠ざける!!!
「バッファロー隊は!!?」
後方を一瞥する!!付いて来ていない!!!旋回に時間がかかりまだ遠くに居る!!
「クソッ!!!こんなにも違うか!!!この白い奴!!この機体でも付いていけねぇ!!」
弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾!!!!
零式艦上戦闘機は、白い塗装を輝かせながら嘲笑うように回避運動する!!
「白いヤツガァァ!!!」
零戦隊は、2機のワイルドキャットを引き連れながら、再びドーントレス隊に肉薄してゆく!!!
「高度4000!!全機30度降下!!キャノピーを開けろォ!!」
ドーントレス隊が吠える!!!
各パイロットは、急降下の気温変化で風防が曇らないようにキャノピーを開放!!
豪豪豪豪豪豪豪豪豪!!!
凄まじい風が操縦席に吹き荒れる!!
スロットルを絞り、操縦桿を押し込むと、機体は慣性による自由落下を始める!!前方に航跡を引くジャップの空母が近付いてくる!!!
まだだ、投弾まで、あと40秒!!!
弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾!!!!
後席がブローニングM1919連装重機関銃を激しく撃ち始める!
「敵?!もう後ろに居るのか?!後席頼むぞ!!」
弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾!!!!
白い悪魔は後方機銃の死角に潜り込みむと、執拗に攻撃を加えてくる!!!
「ウワァァ!!隊長!隊長!」
一機、また一機と僚機が火を吹き墜落
してゆく!!
しかし零戦隊も回避を厭わず身を賭して攻撃しているため、零戦隊の更に後方に位置するサッチ中尉のペアは零戦を2機撃墜する!!
そのうち、ドーントレス隊の空域には、後方からは零戦隊!!更に横から零戦隊の増援部隊の突撃!!!そしてそれを阻止しようと味方バッファロー戦闘機の突撃!!全周囲が凄まじい機銃掃射に沸騰し!!20ミリ、12.7ミリ、7.7ミリ弾が空間に溢れ出る!!!
爆撃コースのドーントレスは、一機、また一機と火炎に巻き込まれてゆく!!!
ドーントレス隊のパイロットは、浮き上がる身体を両足で押さえつけながら片目にMK3望遠標準器、片目に高度計と速度計を見ることに全集中する!!
「高度2000!!!ここだぁ!!全機60度降下ァ!!!ダイブブレーキィかけろぉ!!!全隊突撃ィィ!!」
ダリル中尉は、ドーントレス両翼下部のスイスチーズと呼ばれた穴の開いたフラップダイブブレーキを上下に展開すると、ドーントレスは孔雀が求愛の翼を拡げるようにその姿を変形させる!!!
ダイブブレーキという新たな翼は、急降下に伴う加速超過を抑制し、機体のコントロールを容易にする効果がある!!
ten!!秒速125メートル!!!
「降下角速度Yes!」叫ぶ!!
nine!!照準器にのみ集中する!!
「敵艦進路速度Yes!!」
eight!!投弾レバーを握りしめる!!
「風向風力Yes!!」
seven!!浮き上がる身体を押さえつける!!
「追従量Yes!!」
six!!敵艦隊の弾幕!!!
five!!急速に敵空母が回頭する!!マズイ!!射線がズレる!!
four!!敵艦隊の弾幕が風防を打つ!!
three!!!僚機が爆発!!クソッ照準器が気温差で曇りやがった!!
two!!僚機が投弾した!!まだ早い!!
one!!クソッ当たれ!!高度Yes!!投弾!!!
zero!!機体を引き起こす!!!
どうだ!!
座場亞亞亞亞亞亞亞亞ァ!!
450キロ爆弾は海面に衝突!!空母の周囲に高らかな水柱を上げる!!
全弾・・・・外れやがった!!!クソッ!クソッ!クソッ!!
生き残ったドーントレス隊数機は、海面に沿うようにそのまま退避に移る!!
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空母加賀上空は、日米戦闘機が激しい空中戦を繰り広げ、混乱の渦中!!対空銃座も艦が傾くほどの急速回頭のなか、尽きた弾倉の交換作業に入る!!
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・高い水柱が、水飛沫となって対空銃座に降りかかり、見張員の視界すら遮る。
全員が、一瞬の安堵・・・・・
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そこに最後のアメリカの孔雀が舞い降りる!!
殿を務めるダリル中尉以下4機は、3機を失いつつも奇跡的に理想的な攻撃位置につく!!
five!!敵空母は回頭してちょうど射線は交錯する!!イイぞイイィィ!!!!
four!!敵艦隊の弾幕もナイィ!!
three!!!僚機も完璧なフォーメーション!!
two!!まだだ!撃つなよ!!
one!!1機が投弾!!早いんだよ!
zero!!ここだぁ!!!投弾!!!
操縦桿上部の爆撃ボタンを全力で押し込無ゥ!!
ガコン!!胴体下部の450キロ爆弾が投下装置によって投弾!!
この地球上で、ここしか無いという場所に吸い込まれてゆく!!!
ダイブブレーキを解除し機体を引き起こす!!!
弩貫唖唖阿吽!!!!
弩貫唖唖阿吽!!!!
弩貫唖唖阿吽!!!!
業焔業焔炎炎炎炎炎炎炎!!!
アメリカの1000ポンド爆弾は、空母加賀の右舷後方、左舷中央、前部エレベーターに命中!!飛行甲板を容易く食い破り、格納庫内で大爆発を起こすと飛行甲板を縦に八つ裂きにして炎が吹き上がった!!!
「YES!!YES!!YES!!YES!YES!!!」
ダリル中尉は爆風と炎熱を感じ、Gで機体を軋ませながら機体を引き起こすと海面すれすれで持ち直す!!
振り返ると、ジャップの大型空母一隻は、火山の噴火のように辺りを赤々と照らすのであった。
二人は声を合わせて叫ぶ!
「Hip, hip, hooray!!」
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