第204話 サラトガ攻撃隊攻撃開始
空母サラトガから出撃した攻撃隊59機は、Pacific oceanを南西方に進むこと約2時間30分、進出距離約600キロメートルに達しようとしていた。
グラマン F4Fワイルドキャット戦闘機に搭乗する、攻撃隊隊長のジミー・サッチ中尉は、眼下で編隊を組むダグラスSBDドーントレス急降下爆撃機43機の爆撃飛行隊を視野に入れながら、空の彼方を見詰め続ける。
「そろそろ見えてもいいハズだな。」
サッチ中尉は、右手首に着けたブローバA11腕時計をチラリと見る。
空を見詰めていると、感じる。背中がゾクゾクとする。
絶対にいる。
操縦桿を握りしめる。
愛機のR-1830ツインワスプエンジンとサッチ中尉の心臓は今、シンクロして早鐘のように鼓動を刻んでいる。
キラリ!
ほんの一瞬、彼方から発せられた一条の光線が、サッチ中尉の網膜に到達する!!
居た!!!!!!
全神経を集中させる!!!
敵影!!!直掩は3機、6機、9機!!!
ノンビリ飛んでいやがる!!まだ気付かれていない!!
その下方には、長い航跡が数本!!
見付けたぞ!!!Aircraft carrierrrrrr!!!!
ん?着艦している?!着艦作業中か!!
オイオイ!CHANCE!CHANCE!CHANCE!!!
まてよ、敵戦闘機隊も帰還してきているのか?
bad・・・・
「しかし!!どのみち一撃だ!!敵は気付いていない今がチャンス!!!」
サッチ中尉は無線のプレストークボタンを押す!!
「ドーントレス隊ダリル中尉!!!敵空母3隻発見!!敵空母3隻発見!!攻撃隊形作れ!!攻撃隊形作れ!!」
「イエッサー!!!ドーントレス隊!小隊ごとに高度を取れ!!!敵は3隻!!3中隊に別れて急降下爆撃隊形を作れ!!アシュリー小隊とジョーイ小隊は俺の後方で待機!!!」
「イエッサー!!!」
全機が高度を取りながら編隊を再編成させる!!
その間に、敵機の動きが変わる!直掩の戦闘機が両翼の機銃を連射し、我々の来襲を告げると機首を上げて急上昇を始めた!!!!あの連射で艦隊にも気付かれた!!!砲口が回頭し、キラリキラリとこちらに向ける!!
ゾクゾクが止まらない!!
奮い立たせて叫ぶ!!
「ここからは強襲だ!!戦闘飛行隊!!敵の戦闘機を抑えろ!!攻撃開始!!」
スロットルを全開に突撃を開始する!!
後方を見ると、ウィングマンのエドワード中尉がピタリと付いており、私の視線に気付くとニヤリと笑って親指を立ててサムズアップしてきた!
自信満々だな!やるぞ!!
視線を前方に戻す。
ウン?敵戦闘機あんなに高度上だったか?ちょっと目を離しただけだぞ?
おかしいぞ、私は何かを勘違いしていないか?
見つめること数秒間、敵戦闘機群は明らかにその動きが速い。
シルエットが丸みを帯びていて、やたら綺麗な戦闘機だ。私のワイルドキャットや、後続のバッファローとはまるで違うようだ。
「所詮ジャップの戦闘機!海に叩き落としてやる!」
お互いの戦闘機は時速500キロメートル以上の最大速度に加速すると、相互に瞬く間に接近する!!!
その接近距離は1秒間に約300メートル!!!!動体視力で捉えることは困難な凄まじい速度差!!!
弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾!!!
牽制をこめて12.7ミリ機関銃を撃つ!!!
敵機も応じて撃ち始める!!!
弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾!!!
ヒラリ!!
敵機は相当な速度の筈なのに、舞うように翼を踊らせると背面となり、お互いにコックピットを見上げながらすれ違う!!!
一瞬!敵戦闘機のパイロットが脳裏に焼き付く!!
パイロットはその先の爆撃飛行隊を見て攻撃態勢に入っている!!
サッチ中尉はその一瞬の光景で、血流が頭部に集まる!!
「野郎!!こっちを見てもいねえ!!ふざけやがって!!」
操縦桿を引いて急旋回をかける!!
「全機!爆撃隊を守れ!!」
周囲を見ると、遠くには敵戦闘機隊の増援と、空母からも戦闘機が発艦を始める様子が見える。
番!!番!!ビシッ!!
旋回中の戦闘機隊の周囲に、対空砲の砲弾が炸裂を始める!!
クソッ!!敵の迎撃体制が整う前に!!爆撃してくれよ!!!
ポリネシアの空では今、激しい空戦が繰り広げられる!!!
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