第202話 ミッドウェー爆撃
弩華亜亜亜亜亜亜亜亜亜吽!!!
弩華亜亜亜亜亜亜亜亜亜吽!!!
ミッドウェー諸島を火炎が包む!!
ミッドウェー攻撃隊隊長、嶋崎重和少佐は、サンド島に突撃し、管制塔目掛けて500キロ爆弾を投弾すると、吸い込まれるように管制塔中央部に命中する!!
図呉ッ!!
弩華亜亜亜亜亜亜亜亜亜吽!!!
管制塔が内側から膨れ上がり窓などの開放部から爆炎が吹き出し!!兵達を肉片に変えて飛散する!!
嶋崎少佐は空母瑞鶴所属、真珠湾攻撃では第二次攻撃隊隊長も務めた歴戦の勇士である。
少佐は爆撃後、機を上昇させると、上空を旋回して眼下のミッドウェー諸島を見下ろす。
ミッドウェー諸島は美しい。
西暦1900年までは、ポリネシアの神々が気まぐれに所有する小さい環礁であったが、1903年にアメリカ合衆国が領有すると着々と整備され、サンド島とイースタン島の2島に飛行場が設置され、軍事基地化が進められた。
ただ開戦前においては、同島の軍事基地化は日本を刺激することになるため、最低限の戦力を配備するに留まっていたし、そもそも当時アメリカ合衆国は日本の戦力を極めて過小評価しており、戦略的にもミッドウェー諸島が攻撃対象になることはないと考えていたのである。
ミッドウェー攻撃隊の攻撃目標は、航空機、沿岸砲台、対空砲等であり、列機は次々と爆撃を敢行、早々に対空砲陣地を吹き飛ばすと、無防備に佇んでいたPBYカタリナ哨戒機2機をガラクタに変え、縦横無尽に破壊を与えた。
美しい青い島は、住人であるアメリカ軍海兵隊の僅かな反撃も虚しく、炎と黒煙が立ち上る赤い島へと変貌を遂げた。
被害確認すると、九九式艦上爆撃機1機が急降下爆撃中に被弾してそのまま対空砲陣地に突っ込み見事散華、水平爆撃の九七式艦上攻撃機1機が被弾し、沿岸砲台に突っ込み見事散華した。
その最後を目に焼き付け、敬礼をもって答えると、攻撃隊は速やかにミッドウェー島をあとにする。
嶋崎少佐は電信員に話しかける。
「予想通り、敵のPBYカタリナ哨戒機の残りは索敵に出ているな。我が艦隊は発見されているかも知れない。」
「はい、情報では最大20機程度は配備されているとのことですが、多数が哨戒中と思われます。」
「しかし、我が艦隊を見付けたところで、何もできまい。」
「そうですね、我々は最強であります。直掩には零戦隊も居りますし、カタリナ如きに遅れを取ることはありえません。」
「うむ、そうだな。よし!電信送れ!トラ・トラ・トラ!敵機2機破壊!」
「電信!トラ・トラ・トラ!敵機2機破壊!了解!」
トラ・トラ・トラは、真珠湾攻撃成功を示した通信略語であったが、嶋崎少佐は縁起を担ぎ、再度使用を命じたのであった。
その意味は、ミッドウェー島破壊に成功せり、攻撃成果は十分との意味が込められているのであった。
時同じくしてミッドウェー諸島から南東方に約300キロ、高度1千メートルの上空、晴れ渡る空のなか、PBYカタリナ哨戒機の横一直線の翼が太陽光をキラキラと反射させながら緩やかに飛ぶ。
その進行方向の彼方には、空母加賀、翔鶴、瑞鶴の3隻、戦艦比叡、霧島を中心とした、大日本帝國空母機動部隊が白い航跡を伸ばして粛々と進んでいた。
互いに発見したのは同じタイミングだったのだろう。
PBYは空母機動部隊の全容を視認しようと高度を上げ始める!!
通信員は慌ただしく第一報を入れ始める!
一方機動部隊は無線封止中のため、敵機発見の発光信号が明滅し、各艦に伝播してゆくと、高射砲が滑らかに回転を始める!!!!
空母加賀の艦橋からも双眼鏡でその機影が小さく視認できるが、その間もアメリカ機は緩やかに高度を上げながら偵察を続けている。
頑庵!!頑庵!!頑庵!!頑庵!!
戦艦比叡と霧島を中心に、各艦の12.7センチ高角砲が火を吹き始めた!!
PBYの周辺には、時限信管により対空砲弾が爆発してその破片をばら撒く!!
「ジャップめ!!こんな遠くだ!!当たるものかよ!!」
PBYの乗員は8名、キャプテンのドナルド大尉が操縦桿を握りしめながら吠える!!
対空砲の斉射が始まってからは、機は爆発の衝撃で揺さぶられ、カンカンと弾片が機体に衝突した甲高い音が響く!!
「無線!!入れ続けろ!!!ようやく見付けたぞジャップのCarrier Strike Group!!!高度を上げて接近する!!!」
「機長!これ以上の接近は危険です!」
「大丈夫だ!!ジャップの戦闘機は見えない!!もし来たとしても、黄色い猿が操縦する戦闘機などに遅れを取るはずがない!!もう少し近づいて敵空母の数を送るぞ!!!」
ドナルド大尉の駆るPBYカタリナ哨戒機は、最大速度である時速約300キロまで加速し、大空を翔ぶ鯨のように、その巨体を緩やかに持ち上げたのであった。
そして数十秒が経過しただろうか、皆が敵艦隊を偵察するのに夢中になってしまったいた。
ドナルド大尉は、ふと気付いた、対空砲が止んでいる?
「オイ!ジャップの対空砲!撃ってるか?!」
「えっ!そういえば、Not shot、撃つのを止めています。」
ドナルド大尉は、いや、全員が、これが初めての実戦であり、初めての敵艦隊に対する哨戒であったが、背中に感じる違和感が、刻一刻と自分の何かに訴えていたことにようやく気付いた。
「全員!!周辺の見張りを厳にせよ!!」
「リョッ!!了解!!!」
全員が銃座から、窓から身を乗り出して周辺を見渡す!!
「居ない・・・他からも報告はない。気のせいか?」
・・・PBYに上空から急速接近しているのは、直掩の零式艦上戦闘機3機であった。
まるで連凧のように連なり、太陽を背負ってその姿を完全に太陽と同化したのだ。
零戦3機は急降下最大速度である時速630キロメートルで、時速300キロのPBYに急速接近する!!
およそ1秒に80メートル接近する!射撃チャンスは1秒も無い!
隊長機は空母加賀所属の志賀淑雄大尉、上方から駆け下りながらギリギリすれ違うように操縦桿を微調整する!!!
九八式射爆照準器に映るPBYはデカい!!距離感が難しい!!20ミリの収束点は200メートル先!!狙っていたら衝突する!!ならばバラ撒いて散弾にする!!
鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍!!!
鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍!!!
鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍!!!
志賀大尉は少し早めに射撃開始!!!
列機もその意図を読み取り、射線をずらして九九式二〇ミリ機銃を発射する!!!!!
鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍!!!
鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍!!!
鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍!!!
九九式二〇ミリ機銃の弾丸は、徹甲弾、曳光弾、炸裂弾の三種類が交互に装填されており、一秒間に9発、秒速600メートルの速度で発射され大空を切り裂いてゆく!!!
PBYの上方から襲いかかる20ミリ砲弾は3機で100発以上!
そのうちの3発が機体中央、主翼に命中すると、機体と搭乗員に大穴が開く!!!
ドナルド大尉が振り向くと血に濡れた壁の向こうに青空が垣間見えた。
「・・・・・・Shit!!」
次の瞬間!!主翼右側が支えを失ってボキリと折れ曲がると、回転するプロペラが操縦席を直撃してドナルド大尉等を肉片に変えると、機体は分離し錐揉み状態となって墜落するのであった。
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