第195話 ハワイの三連星誕生

ハワイ女王国の誕生から二日。


カイヒカプマハナ女王の独立宣言のラジオ放送電波は、大日本帝國、アメリカ合衆国、そして世界中に瞬く間に駆け抜けた。


その結果、世界中の受け止め方は様々であったが、真珠湾奇襲攻撃直後の、悪の枢軸国日本に立ち上がる正義の国アメリカという完璧な構図は崩され、ハワイ王国の不当な併合からの開放戦争と女王の独立という新たな問題提起により、アメリカ国民のみならず、世界中の世論に微妙な空気感を醸し出すことに成功したのだった。


とはいえ、アメリカ合衆国大統領、フランクリン・デラノ・ルーズベルトの方針は変わることはないし、変えられるはずもない。

アメリカ合衆国はそのような独立宣言を認めるはずはなく、ハワイ王国は正当な民主的手続きにより併合されたものであるとして、独立などあり得ず、現在のハワイ準州の扱いから、正式にハワイ州とするよう議会に提起することを宣言するに至った。


その宣言に多くの国民は納得したが、その性急な宣言によりハワイの住民達は、住民の意見も聞かずに勝手に併合論を押し進めるアメリカ合衆国に反発心を抱く結果となるのであった。


ハワイの住民は基本的に、ハワイが好きなのであって、遥か遠くのアメリカが好きという訳ではなかった。そして、そのことに改めて気付かされる住民が結構居たのである。


つまりこういうことだ、


ハワイ女王国?イイんじゃね?

Queendom of hawaii? It's fine, isn't it?



そんな世界中の混乱をよそに、真珠湾はそよ風が海面を撫でてさざ波を創り上げると、今まで入港したことの無かった新たな大型船を包み込むのであった。


その大型船は、正規空母赤城。二日前までは大日本帝國海軍の空母であったが、現在は乗員と共にハワイ女王国に船籍を移し、寄港して応急修理に入ったところであった。


その飛行甲板に腰掛けている、飛行服の二人組がいた。


「しっかし、いまだに信じられんなぁ、神鳥谷」

「はい、那須一飛曹。」

「オイオイ、その一飛曹はやめろ、俺達はもう日本海軍じゃねえんだ、まぁ階級はそのままらしいがな、これからは「先輩」でよいぞ。水兵も、精神注入棒の使用を止めたみたいだしな。」


「ありがとうございます。那須先輩。二人のときは先輩と言わせていただきます。でも、あの精神注入棒制度だけは嫌でしたが、ハワイ海軍になった途端に無くなるなんて、ハワイって、そんな悪い風習を吹き飛ばす優しさとおおらかさを感じますね。」


「ああ、日本人は、良くも悪くも、規律、規律だからな。加賀、蒼龍飛龍の連中も皆んな、ハワイ女王国軍となった我々赤城組を羨ましいと言ってるよ。」


「ハワイ女王国海軍。山本長官は、本当に凄いお考えをお持ちですね。未だに信じられません。」


「そうだな。信じられない。俺達は、どうなるのか・・・・まぁ、どうせ死ぬだろうから、華々しく面白く死ねれば本望かもしれないがな。」


「そうですね。まだまだ死ぬ気はないですが、後悔はしなそうです。」


「ホントか?これでもうアヒル君に会えなくなったぞ」


「それは・・・それだけは残念であります。あの美しい首筋を撫でられないなんて」


「それ、他の人が聞いたら勘違いするぞ、アヒルのこと言ってるとは思えん。精神注入が必要だな」


「先輩!それはないですよ!」


ハッハッハッハッ!

ハッハッハッハッ!


ヵッヵッヵッヵッカッカッカッカッ!


リズム良い靴音が聴こえてくる。

二人は後ろを振り返る、ハワイの日差しは冬でも強い、空中戦で太陽に隠れた敵機のように、その人は見事に太陽を背後にして奇襲を成功させつつあった。


しかし那須と神鳥谷の二人は綺羅星の熟練兵。そのシルエットですぐに理解し行動に移る!


「少尉ィィ!!!!!!」


「新海小隊長ぉぉ!!!ご無事を信じておりましたぁぁ!!」


「待たせたな!!!心配かけてゴメン!!!今戻った!!!」


三人は抱き合い、久方ぶりの再会を祝う!!!神鳥谷は涙ぐんでいる!


数秒後、神鳥谷が呟く

「・・・・・なんだろう、このとても良い匂い・・・・」

少しだけ、イラッとした。

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