第185話 零式通常弾
戦艦大和の主砲、46センチ三連装砲塔は、砲身長20.7メートル、内径46センチ、重量は一本で約165トンの砲塔である。
砲弾は2種類用意され、戦艦メリーランドを破壊せしめた九一式徹甲弾。
そして、ハワイの大地に降り注がんとするのは、零式通常弾である。
零式通常弾は全長195.5センチ。重量1460キログラム。全体は美しい白色、腹部の帯が金色である。
両者の違いは、九一式徹甲弾は炸薬量が33.85キログラムに対して、零式通常弾は徹甲榴弾で炸薬量が、61.7キログラムである。
零式通常弾は対空、対装甲艦、対地砲弾である。
例えれば、九一式徹甲弾は指先で相手を貫く貫手。零式通常弾は拳を固めた逆突き、相手に打撃を与えつつ衝撃で内部も破壊するのだ。
その世界最大の零式通常弾は、既に砲塔内に収まり、いまか今かと発射を待っている。
戦艦大和を中心とする大日本帝国海軍第一艦隊は、オアフ島、ホノルルの南側海上に突如として現れた。
水平線から接近してくる鋼鉄の蜃気楼に、ホノルル中の警報が鳴り響く。
海岸沿いの住人は、そのあまりの重厚で壮大な姿に恐れおののくが、目を離すことが出来ない。
それはそうだ、戦艦大和なのだ。
普段から目にしているアメリカ海軍の戦艦とは比べるべくもない。
一度目にしたら、その勇姿は人々の目を、心を捉えて離すことはないのだ。
そして、先頭を征く戦艦大和を順に、滑らかな動きでその主砲を高々と掲げ始めた。
「まさか、撃つのか?」
「嘘だろう?」
誰かが言った。
全艦の主砲が高々と天を仰ぐ。その姿も美しい。
辺りの空間が、捻れる!!
火閃閃閃閃閃閃閃閃!!
綺羅羅羅羅羅羅羅羅羅羅羅羅羅羅羅ァァァァァァ!!!!!
凄まじい閃光!!!!
「撃ったぞ!!」
誰かが、皆が叫んだ!!
海面を超高速で音が、衝撃波が白波を立てて陸地に急接近してくる!!!!
しかし皆、それが何を意味するのか理解が出来ずに口をポカンと開けて佇む。
轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟!!!!!!!!!
ウワァァァァ!!!
凄まじい音と衝撃が人々に襲いかかると、人々は倒れ込み、伏せ、慌てて逃げ出すのであった!!!
その衝撃波を生み出した零式通常弾は、砲身内部に刻まれたライフリングにより、毎秒60回転という高速回転をしながら 秒速780メートル、時速2800キロメートルで突進するる!!!
オアフ島上空には厚い雲が拡がっていたが、雲に突入すると、そのエネルギーにより雲を圧縮爆発させ、巨大な立坑を作り上げる!
零式通常弾は、高度10キロメートルの対流圏で放物線の頂点を迎える!!!
周囲には、戦艦伊勢、日向、山城の放った多数の徹甲榴弾を従え、その先頭で下降曲線に移る。
眼下には何処までも続く柔らかな雲が太陽光を反射しており、落下地点は見えない。
死へのカウントダウンが始まる!!
拾!!!
仇!!!
捌!!!
漆!!!
陸!!!
伍!!!
死!!!
雲を突き抜ける!!
目の前に広がるのはアメリカ陸軍スコフィールド基地!!!
すでに大穴が幾つも空いて黒煙が噴き上がっている!!
参!
我が向かうは!!厳重な防壁に囲われた建造物か!!面白い!!
弐!
我は零式通情弾!!!
壱!!
なさけと知れぃ!!!!!
華華華華華華華華華華華華華華華華
華華華華華華華華華華華華華華華華
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
弩豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪貫唖唖阿吽!!!!!!
業業業業業業業業業業業業業業業業ゥゥゥ!!!!!!
臥臥臥臥臥臥臥臥臥臥臥臥臥臥臥臥ァァァ!!!!!!
アメリカ陸軍スコフィールド基地には、外縁部に設置された大型弾薬庫があった。
もちろん大型弾薬庫はぶ厚い防護壁に囲われ厳重に護られていたが、基地の外縁部ゆえに、今回の陣地としては、最前線に弾薬庫が存在することとなり、最大の弱点と言えるものであった。
もちろん陣地構築の際も考慮されたが、防護壁は800キロ爆弾の直撃にも耐えられる設計であったため、貧弱な日本軍の砲撃や空爆ならば問題はないと司令長官は一蹴し、むしろ弾薬補給を重視してその周辺に対空砲や大型のカノン砲を設置したのである。
しかし、アメリカ軍にとって不幸だったのは、戦艦大和の最強の徹甲榴弾、零式通常弾はその徹甲と運動エネルギーで弾薬庫の重厚な防護壁を易易と突き破って弾薬庫内に侵入したのだ。
零式通常弾は弾薬庫内に突入すると同時に、炸薬である下瀬火薬61.7キログラムが直後に大爆発し、内部は一瞬で灼熱の火炎と爆散した弾片が吹き荒れる!!!!
密閉空間に保管されていた弾薬は一瞬で全てが誘爆!!!!
その爆発の力はベクトルを上空に向けると、辺り一面を巻き込んで凄まじい爆発の竜巻を発生させ、周囲の陣地、砲、兵士、全てを遥か彼方まで吹き飛ばすのであった。
その炎の竜巻は、遥か遠方からも視認出来るほど高々と舞い上がった。
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