第176話 落下傘降下
新海とノアの零式水上観測機は、さっきまでの華麗な飛行が嘘のようにヨタヨタと右に左に飛行する。
「キャアァ!!」
「わわわわ!!こいつ言うことを聞け!!」
「ソラァ!!sorry!sorry!!soraaaa!!」
機体が揺れて傾くたびにノアの胸も激しく揺れる!
新海は機体を安定させようとあの手この手で操縦するが上手く行かない!
「クソ!!こりゃダメだ!!白鳥が神鳥谷のアヒルになっちまった!!ノア!!脱出するぞ!!」
「What's that?!脱出?!って、パラシュートで?!!」
「ああ!!パラシューティングだ!!この機体は操縦不能だ!!それにさっきの体当たりでフロートが壊れて着水も出来ない!どのみち無理だ!!こうなったら高度を上げてパラシュート脱出するぞ!!」
「Oh my God!!Oh my God!!」
新海はスロットルを慎重に操作して高度を上げてゆく!!
「ノア!!まずは座席の腰バンドを外して!!」
「ホントにやるっちゃ?!!」
「やるんだノア!!私はもう外したぞ!!」
「分かったっちゃよ!!」
ガチャ!!
「外しました!!」
「よし!ノア!!点検だ!!パラシュートに付いているカラビナ2個は、ノアが着けているハーネスに繋いであるか!?」
「はい!繋いであります!!カトーに繋いでもらったから大丈夫です!!」
「よし!!それと!赤色のヒモの先のナス環は機体に繋いであるか?!」
「はい!繋いであります!!これは何?」
「それは自動曳索環といって、引っ張られると勝手にパラシュートが開くんだ!!」
「よし!!大丈夫だね?!!」
「うーーー!!大丈夫よ!!」
「高度は1000メートル!!大丈夫私が付いてる!!私を信じて一緒に行こう!!」
「わかったわ!!アローハ!!」
「よし!!機体を反転させる!!逆さまになったら、力を抜いて!!そのまま落ちるんだ!!大丈夫私がすぐ側に行く!!」
「はいぃぃ!!」
「3!!」
「2!!」
「1!!」
新海は機体を反転させる!!
視界にはオアフ島の大地が広がる!
「GO!!!」
「キャアアアア!!!!ソラァァァ!!!」
新海はほんの少し両手で踏ん張り、後部席のノアが一瞬先に落ちたのを確認して操縦席を蹴って飛び出した!!!
ノアはハワイの引力に惹かれて落ちる!!両手を新海に差し伸べる!!
新海も同じだ!ハワイの引力に惹かれて落ちる!!両手をノアに差し伸べる!!
そして一瞬!二人はその両手をガッチリと重ねる!!
そして一瞬!二人のパラシュートは同時に開傘する!!二人はその手を重ねたまま、背中の羽を羽ばたかせたかのように大空に飛び立つ!!!
そう、この瞬間万有引力は、この二人にだけ、万有の力を示さなかったのである。
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