第171話 Tidal Wave attack of triple star
ガ我亜亜亜亜運!!!
50キロ爆弾の直撃を受け、日本陸軍の九五式軽戦車ハ号は大爆発を起こし、57ミリ戦車砲搭載の砲塔は軽々と上空に吹き飛ぶ!!
砲塔は竹トンボのように赤黒い火煙をまき散らしながら上空を回転するなか、赤と黒の彗星をあしらった複葉機が華麗に飛び去ってゆく。
地上からは日本兵たちが小銃で応射するが、複葉機は華麗な回避行動を取り再び高度をとる。
Triple starのリーダー、マクガイア大尉は機体をロールさせながら地上を見下ろすと、戦車2両、野砲1門が破壊されて狼煙のように黒煙が上がっていた。
彼は戦果に満足し、揃えられた口髭を上げて不敵な笑みを浮かべる。
「サンダース!ジョージ!被害はないか!!」
「ありません!!ジャップの戦車を粉々にしてやりましたぜ!!」
「あんな小銃で撃ったところで当たるわけがありません!」
この機体に備えられた最新式の無線機は感度良好だ。二人の声が明瞭に聞こえる。
「よし!!我が軍の陣地も相当盛り上がっているぞ!!」
数キロ離れたところにはアメリカ陸軍スコフィールド基地があり、防御陣地を構築中の陸軍兵の士気は天を衝く勢いであった。
「よし!天候不良で敵機が居ない今がチャンスだ!帰投して爆弾を搭載し、爆撃を続ける!!」
「Sir!Yes, sir!!!」
そして3機は機体を翻す。高度は1500メートル。上空にはグレーの雨雲が広がり、雨が風防を打ち視界を遮る。
弾弾弾弾弾弾!!
「・・ッ機!!右前方2時!!2時の方向!!距離4000!!」
ジョージから警告射撃と無線が入る!!
キャプテンマクガイアが右前方を見つめると、かすかにグレーの雲に重なるような機影を発見する!
「ジョージgood job!!高度上げるぞ!!」
マクガイアはスロットル全開で加速しながら操縦桿を引き付けて急上昇に移る!!
列機を見ると、当然のように追従しておりフォーメーションにブレは一切ない!!長年連れ添った仲間。この状況であれば言われる前から上昇するのは阿吽の呼吸というものだ!!
敵との会敵まで約30秒か?!敵機は3機同数!!!しかもフロート付きの複葉機!?!大きく見えたのはそういうことか!!
「敵は複葉の水上機です!」
同時にジョージから無線が入る!
「Okay!!まさか初戦が複葉機同士の同高度反航戦とはな!サンダース!ジョージ!フォーメーションケルベロス!!」
「フォーメーションケルベロス!!2号機了解!!」
「ケルベロス3号機了解!!」
Triple starの3機は上昇しながら広めのトライアングル隊形を取る。1機が狙われれば残り2機が喰らいつく。
三つ首のように相互に連携して攻撃するTriple starでないと到達し得ない必殺のフォーメーションだ。
対する日本軍は大和以下の戦艦部隊から発進した零式水上観測機3機だ。この機体は敵艦上空で空戦をしながらの弾着観測を想定した機体であり、その搭乗員が技量優秀であることは言うまでもない。
3機の編隊は別の艦所属であるが、長年の勘で自然とTriple starと同様の広めトライアングル隊形を取った。
手信号でそれぞれの獲物を決めて加速してゆく!!
零式水上観測機は時速370キロメートル!
P12triple star専用機はスーパチャージャーが唸り時速330キロメートル!
一秒間に約200メートル接近する!!!
キャプテンマクガイアは敵速を感じ
「厶?!敵機は速いぞ!!我らよりも速い!!気を付けろ!!」
「Yes, sir!!」
千メートル!
九百!
ハ百!
七百!
六百!
五百!
四百!
弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾!!!
最初に口火を切ったのは零式水上観測機一番機だ!!
弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾!!!
弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾!!!
列機も続いて撃ち始める!!!
キャプテンマクガイアはその一瞬で察する。
敵の武装は機首の7.62ミリ機銃で同じ。そして撃つのが早く間合いが甘い。攻撃に焦りがあり実戦慣れはしていない。
敵弾に撃たれながらもフットバーを操作して軽くいなすと、敵弾は発光しながら後方に逸れてゆく。
狙いも雑!!7.62ミリならばよく狙わんと当たっても微々たるものだ!!
口髭を上げて不敵な笑みを浮かべつつ無線を入れる!!
「プランB!プランBだ!!!」
「プランB了解!!!」
プランBは例えるなら闘牛士。躱しながら敵の隙を付いて必殺の剣を首筋に叩き込む作戦だ。
二百!!
百!!
弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾!!!
弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾!!!弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾!!弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾!!
Triple starがロールを打ち背面となりながら必殺の間合いで射撃を開始すると僅か一秒間。相互の空間はドス黒い殺気と交差する7.7ミリ弾丸で飽和状態となる!!
先頭の日本軍パイロットもベテランである。
一瞬だけ放たれたtriple starの殺気を受けると咄嗟に回避行動を行う!!
頑頑頑頑頑頑頑頑頑頑!!!
次の瞬間激しく被弾!!!
しかし被弾箇所を僅かに逸らして致命傷を避けたが、全てを躱すことは出来ず後部偵察員の右肩を一発の7.62ミリ弾が貫く!
操縦士も、そして当の偵察員も自らの身体に何が起きたのか理解してはいない!相対速度約700キロメートルでお互いに擦れ違う!!!
その瞬間操縦士は確かに見た!!
あの口髭のヤンキー野郎!笑っていやがった!!ふざけやがってぶっ殺してやる!!!
直ちに操縦桿を引き付けて一気に宙返りを打つ!!旋回性能には絶対の自信がある!!
零観3機は足並みを揃え、上空を占める灰色の雨雲の手前で縦旋回!ど派手なP12は想定通り、零観よりも鈍い旋回を続けており無防備な姿を晒している!!
敵機に機首を向けた零観3機はスロットル全開で突撃を開始する!!
それはまさに赤色の翼を見て怒りに身を震わせた闘牛の様!!
零観の八百馬力級瑞星エンジンが吠える!!加速して急速に接近するなか、Triple starは背中を見せて緩やかな上昇を止めない。
五百メートル!!
再び零観は照準器越しに敵機を睨みつけ、スロットルレバーの上の機銃引き金に指をかける!!
今度はTriple starは急上昇!!!
弾弾弾弾弾弾!!!
少し遠かったが零観は無防備に上面を晒したTriple starに射撃を開始!!
ズ没!!ズ没没!!!
しかし有効打を与える前にTriple starは灰色の雲の中に身を隠してしまう!!
弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾!!!
弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾!!!弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾!!
零観3機は一瞬の逡巡のあと、2番機のみ雲の中に突入追撃し、残り2機は雲の下で待ち構えることとなった。
零観隊は雲量を確認していないため無理に雲海の中に入って各機分散するより、優位な性能差を活かして待ち受ける戦術をとった。
零観2機は加速しながらTriple starが消えた雲の下を駆け抜ける!!
しかし次の瞬間!!
ズ暴!!ズ暴暴暴!!!
弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾!!!
弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾!!!
Triple starは盲目状態となる雲海のなかにあっても潜水艦のように正確に 急速浮上し、更に零観2機の未来位置を正確に狙いすまして上方至近距離から集中砲火を加える!!!
「敵機上方ォ!!!」
後部偵察員はいち早く発見し叫ぶ!!7.7ミリ旋回機銃の銃把を握ろうとするが、右手が言うことを聞かず、ようやく自ら被弾していることに気付く!!
次の瞬間!!
頑頑頑頑頑頑頑頑頑頑頑頑頑頑頑頑頑頑頑頑!!!!!!!!
Triple star3機による7.62ミリ弾の嵐が吹き荒れる!!
暴炎!!!ガガ餓餓餓餓!!
エンジンが火を吹き!機体は制御を失う!いや、制御する者は既に事切れて空を舞う資格を失い緩やかに墜落する!!
キャプテンマクガイアは人差し指を立てて右手を高々と上げる!!
「フー!アー!(Hoo-ah)」
2番機サンダース中尉、3番機ジョージ少尉も人差し指を立てて右手を高々と上げて応える!!
「フー!アー!」「フー!アー!!」
「者ども!!次は急降下で回避したジャップの3番機だ!!フォーメーションダブルヘッド・イーグル!!ジョージは警戒に当たれィ!!」
「フォーメーションダブルヘッド・イーグル!!2号機了解!!」
「ダブルヘッドイーグル3号機了解!!
Triple starの3機は急降下に移りながら前2機、少し離れて1機の隊形を取る。2機が攻撃し、1機が警戒と守備に当たるフォーメーションだ。
狙われた零観3番機は性能差を活かして左旋回の巴戦を挑む!!
零観の操縦士も腕に自信はある。
味方を落とされた怒りと復讐心がたぎるなか、機体の速度性能は明らかに優位、更に旋回性能でも同等以上で後部機銃も使えるため、2機ならば同時に相手が出来る、上空の味方が現れれば逆転可能と判断したのだ!
零観とP12の計3機はタイフーンのように重圧に晒されながら急旋回を続ける!!!
誤算としてはあまりのGの強さに偵察員は旋回機銃を構えることが出来ない!!!
1周!!2周!
旋回半径も零観のが少し上だ!!少しずつ、少しずつ敵機が照準器に近付いてくる!!
3周!!4周!!
よし!!!待ちに待った瞬間!!
両手で持っていた操縦桿から左手を離して引き金に手をかける!!!
「喰らえ!!」
弾弾弾弾弾!!!
初弾を発射するのを待っていたかのように、先頭のP12が急旋回を止めてヒラリと縦旋回に移る!!
しかしその動きは鈍重だ!!!急旋回で失った運動エネルギーは大きく、縦旋回にかける力は僅かしかない!!
好機到来!!!
しかし零観の操縦士は片手を離しており、再び両手で操縦桿を握り込み追従するのにコンマ3秒を要した!!
一瞬見失う!!しかしその次の瞬間には眼前の必中距離に現れるはず!!!
「それでお前は終わりだ!!!」
叫ぶ!!それは一瞬のことだった。目の前から敵機が消えたことで、言いようのない嫌な予感がした。
一瞬後、思い出した。過去に一度だけ、この体験をしたことを。
あのときは・・・・
そして、何秒かもわからない。それとも一瞬だったのかもわからない。まるで自分自身の時間が止まってしまったような錯覚を感じた。
敵機は・・・・見えない。何故だ?
頑頑頑頑頑頑頑頑頑頑頑!馬脚!頑頑頑頑頑頑頑頑!!馬脚!頑頑頑頑頑頑頑頑頑頑頑頑馬脚馬脚馬脚馬脚馬脚馬脚馬脚馬脚馬脚!!!!!!!!
錐揉みで落下する機体を見詰めながら
キャプテンマクガイアは人差し指と中指を立てて右手を高々と上げる!!
「フー!アー!(Hoo-ah)」
2番機サンダース中尉、3番機ジョージ少尉も人差し指と中指を立てて右手を高々と上げて応える!!
「フー!アー!」「フー!アー!!」
すると上空から最後の零式水上観測機が現れる!!
二本の黒煙が落ちる様子を見て一瞬で状況を理解した零観の操縦士は、自分の判断ミスで仲間を各個撃破されてしまった深い後悔と、それに勝る怒りを燃え上がらせて急降下して攻撃態勢に移る!!
この零観の操縦士こそ、大和所属のエースであった。
エースはTriple starの3機を相手に怯まず、怒りながらも冷静に、技量の限りを尽くして戦う!!
やがてTriple starの3機はフォーメーションを保てなくなり、2号機のサンダース機は少なからず命中弾を受け、もう少しで撃墜も可能と思われた。
ガイア大尉も危機を感じており、もはや打開するには一つしか方法がないことも解っていた。
あとはその出しどころだ!!
「サンダース!ジョージ!!!タイダルウェイブアタックをかけるぞ!!!!」
「タイダルウェイブアタック!!2号機了解!!」
「タイダルウェイブアタック3号機了解!!」
3機は無謀にも急速に接近する!!
まるで展示飛行のように相互の距離は数メートルまで接近!!
そしてそのまま縦方向の宙返りに入る!!
零観のエースも追従!!無防備な挙動を見て一瞬嫌な感覚を感じたが絶好の機会を逃す訳にはいかない!!
思い切り操縦桿を引き付ける!!
グ具具具具具具具具具具ググ!!!
凄まじいGをねじ伏せる!!!
そして宙返りして一周!!今までと異なり、アメリカの3機の速度と旋回半径が大きい?!
3機はおよそ真下に位置しており、最下点に至る数秒後には絶好の射撃位置に付けるであろう!!
「3機とも撫で斬りにしてくれるわ!!」
自らを鼓舞しながら引き金に指をかける!!
ガイア大尉は叫ぶ!!
「今だ!!引き潮!!エッブタイド!!」
そのときアメリカの3機が急減速する!!
零観は大きく前に突出してしまう!!
「何ィ!!しかしあんな動きでは失速するぞ!!」
零観からは、複葉の翼が邪魔して敵機を視認出来ない!!!加速して離脱を図る!!
彼の想像では、アメリカの3機は失速したかその寸前。脅威とはならないはず!!
弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾!!!
弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾!!!
「下から撃たれている?!近い何故だ!!速度差は圧倒的だった!!敵がそんなに急加速出来るはずがない!!」
Triple starの超必殺技。タイダルウェイブアタックとは、極限まで接近したスリップストリームを利用して3号機を超加速させて必殺の一撃を加え、更に発射台となった2号機1号機も高波のような波状攻撃を加える神技であった。
頑頑頑頑頑頑頑頑頑頑頑頑頑頑頑頑頑頑頑!!馬脚!頑頑頑頑頑頑頑頑頑頑頑頑馬脚馬脚馬脚馬脚馬脚馬脚馬脚馬脚馬脚!!!!!!!!
「何故だ何故だ何故だ!!・・・スマンみんな!長官・・・申し訳ありません・・・・」
錐揉みで落下する機体を見詰めながら
キャプテンマクガイアは三本指を立てて右手を高々と上げる!!
「フー!アー!(Hoo-ah)」
2番機サンダース中尉、3番機ジョージ少尉も三本指を立てて右手を高々と上げて応える!!
「フー!アー!」「フー!アー!!」
「フー!アー!」「フー!アー!!」
この撃墜劇は両軍共に地上で固唾を飲んで見守られており、大日本帝国陸軍の兵は立ち尽くすのであった。
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