第161話 カエナ岬沖海戦

日本水雷戦隊の秘密兵器、九三式魚雷の中距離発射により、アメリカ水雷戦隊は旗艦セントルイス及び駆逐艦5隻が轟沈。ほか駆逐艦2隻が大破し急速に減速して戦線離脱した。


これでアメリカ側は16隻。日本は17隻となった。


しかしアメリカ水雷戦隊も艦列を立て直し不屈の精神で攻撃する!!

セントルイスの後続艦である軽巡洋艦フェニックスが指揮をとり、4連装魚雷発射管からMk15魚雷を次々に発射!!


その数は各艦合計で64本!アメリカの鮫が日本水雷戦隊に向け牙を突き立てるべく、海中の疾走を始める!!


「敵艦隊!左舷から一斉に魚雷発射!60本以上です!!」


「来たか!」

全員が双眼鏡を覗き込む!


「水雷長!敵魚雷の到達予想はどうか!?」

橋本司令官は双眼鏡を構えたまま確認する!


「約200秒後です!!」


「各艦に伝達!面舵30!速力一杯!!」

「各艦に伝達!面舵30!速力一杯了解!!」


「司令!面舵で魚雷と敵艦隊に突っ込む形でよろしいですか!!」

島崎艦長が確認する!


「さもあらん!!ここで直進しても敵魚雷の餌食、取舵では敵に背後を見せる形となり、魚雷回避には良いが砲撃戦に不利。ならば活路は敵中突破よ!!」


橋本司令と島崎艦長は顔を見合わせてニヤリと笑う!!


「ハッ!敵中突破了解であります!!」


「更に伝達する!これより先、水上見張りを厳にし、敵魚雷回避後は子隊単位で突撃、敵艦隊を分断せよ!!!」


「水上見張りを厳にし、敵魚雷回避後は子隊単位で突撃、敵艦隊を分断了解!!!」


命令が伝達されると、旗艦である軽巡洋艦川内の艦本式タービンは凄まじい唸りを上げ煙突から爆煙を吹き上げて一気に加速!!速力を時速61キロメートルに加速しながら右回頭を開始した!!


後続の駆逐艦4子隊16隻も一斉に右回頭!敵艦群に対して4列突撃隊形を整える!


しかし紺碧の海面には白色の雷跡か幾筋も連なり、敵魚雷が扇状に、まるで蜘蛛の糸のように日本艦隊に急速に接近してくる!!


日本艦隊は魚雷に正対したことでかなりの数の魚雷が左舷方向に逸れていくが、それでも各艦1,2本は衝突コースにある。


川内の見張りから報告が入る!

「雷跡!距離1000メートル!1時と4時2本来ます!!」


艦長が叫ぶ!!

「面舵20!!」

「面舵20!!ヨウソロー!!」


1キロ先の魚雷との最接近までは30秒もない!


「戻ォセェィ!」

「戻ォセェィ!」 


海面には雷跡が2本、そして川内はその狭間に艦を入れることに成功した!


全員が固唾を呑んで魚雷の行方を見守る。このときばかりは無言だ。


珠座座座座座座座座ァァ!!ァァ!!

珠座座座座座座座座ァァ!!ァァ!!


白い雷跡が絶妙な間隔を保ちながら艦の両舷を通過!!!


フゥー・・・

全員が胸を撫で下ろす。

「躱しましたな!」


「よし!ほかはどうか!被害知らせ!!」


「はい!!現時点・・・・被害ありません!!被害ナシ!であります!」


「被害無し!?あれだけの魚雷を全艦回避したのか?若しくは不発か?何れにしても天佑我にあり!我が艦隊の不断の努力が実を結んだということよ!!」


「よし!このまま全艦突撃せよ!!」

「全艦突撃!!!!」

「全艦突撃ィィ!!!!」


孥孥ン!孥孥ン!!孥孥ン!!孥孥ン!孥孥ン!!孥孥ン!!孥孥ン!孥孥ン!!孥孥ン!!


牙牙亜亜吽!!!

「被弾!!!!魚雷発射管に直撃!吹き飛びました!!」


橋本司令官は努めて冷静に激を飛ばす!!

「この程度!!!当艦が被害担当艦となれば子隊はその分有利に戦えるというものだ!!敵軽巡洋艦を叩けば駆逐艦は敵ではない!」


「征くぞ!!水雷屋の血潮ォ!!!」


「進軍せよ!!進軍せよ!!もっとも大なるものに!!危険を意図とせず進軍せヨォ!!!」


「打てい!!!!打てイィ!!打ち続けィ!!!」


最大船速の両艦隊は急速に接近!!もはや双眼鏡など不要の距離であり、煙幕、排煙、爆煙の漂う戦場は、超接近戦に移行する!!


日本側の主砲は軽巡洋艦が14cm単装砲が7門。駆逐艦は主に12.7cm連装砲3基6門。


アメリカ側の主砲は軽巡洋艦がMk16 6インチ(15.2cm)三連装速射砲5基15門。

駆逐艦が主に5インチ(12.7cm)単装砲5門である。


相互の主砲は、1分間におよそ10発の発射速度であり、威力自体は戦艦の主砲とは比較にならないものだが、その分お互い防御力も低いため砲弾は易易と装甲を突き破る!


両艦隊は激しく打ち合い、激しく被弾

しながら交錯する!!


孥孥!孥孥!!牙牙亜亜吽!!!孥孥!!孥孥!孥孥!!牙牙亜亜吽!!!!!孥孥!孥孥!!孥孥!!

牙牙亜亜吽!!!孥孥!牙牙亜亜吽!!!


「突っ切れぃ!!!!打てイィ!!打ち続けよ!!!」


孥孥!孥孥!!牙牙亜亜吽!!!孥孥!!孥孥!孥孥!!牙牙亜亜吽!!!!!孥孥!孥孥!!孥孥!!

牙牙亜亜吽!!!孥孥!牙牙亜亜吽!!!

敵艦は炎に包まれるが、こちらも各所が被弾炎上!弾け飛ぶ装甲!甲板の水兵も血塗れで吹き飛んでゆく!!


「敵艦隊を突っ切れぃ!!!!25ミリは敵艦の艦橋を狙え!!指揮能力を奪え打てイィ!!打ち続けィ!!!」


打打打打打打打打打打打打打打打打

打打打打打打打打打打打打打打打打

打打打打打打打打打打打打打打打打!!!!!


日本側は4列となり、主砲だけでなく25ミリ3連装機銃も含めて全ての火力を先頭の敵軽巡洋艦2隻に集中させる!!

九六式25ミリ3連装機銃は有効射程3000メートル、毎分130発の発射速度で250グラムの弾頭が連続発射される!!

数発に一発含まれる曳光弾で敵艦橋は赤色のレーザー光線が照射される様で、艦橋内を蜂の巣に変えるのであった。


「突破します!!」


そして遂に水雷戦隊は次々に敵艦隊の狭間を突破!至近距離から必殺弾をブチ込む!!

対するアメリカ艦隊は各子隊先頭艦を砲撃するが、その後続艦には間に合わず無傷のまま攻撃突破を許す形となった!!


「敵軽巡洋艦!!艦橋吹き飛びました!沈黙です!」


この4縦隊突破によって日本艦隊は駆逐艦2隻大破炎上、アメリカ艦隊は軽巡洋艦2隻、駆逐艦1隻大中破となった。


「よし!!敵は指揮系統に混乱を来した!!全艦取舵!!各艦目標を定め魚雷発射せよ!!」


「全艦取舵!!各艦目標を定め魚雷発射了解!!!」


アメリカ艦隊は各所で陣形を分断されたところに指揮艦を喪失、艦隊での変針も困難となり闇雲に射撃を続ける!!


そこに吹雪型駆逐艦13艦が残していた酸素魚雷13本を急速取舵発射!!


アメリカ側も6隻が反応し、24本の魚雷を発射!!

相互の魚雷は海中に解き放たれると、スクリューを激しく回転させて加速度的に猪突猛進する!!


「司令!当艦も魚雷を打ちたかったですなあ!!この距離なら必中ですぞ!!」


「そうだな!!結果的に敵戦艦に打ちすぎたな!まあそれも重畳!!!駆逐艦隊に任せよう!、なあ水雷長!!」


「ハッ!この距離であれば命中確実です!敵艦は海の藻屑となりましょう!」


「それにしても敵さんの魚雷は雷跡がよく見えるな!!」


「はい!躱します!!」

「操艦任せたぞ!!」

「了解!!面舵一杯ィ!!」


戦隊は砲撃を続けながらも魚雷の回避運動をとる。


一方酸素魚雷は殆ど雷跡を出さず、高速でそれぞれ定めた相手に向けて疾走する!


図呉呉呉呉吽!!!図呉呉呉呉吽!!!図呉呉呉呉吽!!!図呉呉呉図呉呉呉珠呉吽!!!図呉呉呉呉吽!!!


まずは日本側の酸素魚雷7本がアメリカの駆逐艦5隻に命中!!!3隻は艦首をもぎ取られ、艦尾をもぎ取られ、又は中央から真っ二つとなり轟沈、ほか2隻も戦闘能力を失った。


その数秒後はアメリカの反撃だ!



「くそ!流石に避けきれません!!一本左舷後部に喰らいます!!対衝衝撃体勢!!」


「対衝撃に備えろォ!!!」


珠座座座座座座座座ァァ!!ァァ!!


珠座座座座座座座座ァァ!!ァァ!!


!!!我亜亜亜安ァン!!!


鋼鉄を叩いた大音量が艦内に響き渡る!!

橋本司令官以下、皆で周りを見渡す。

「やられたか?」

見張員か叫んでいる!

「不発ゥ!!不発ですゥ!!!」


水雷長も応じる!

「不発です!!敵魚雷は起爆せず!弾き返した模様!!」


「確かに今の音はそのようだな!先程もそうだが、敵さんの魚雷も起爆に問題があるのではないか?なあ艦長。」


「はい、これは、間違いないですな!我が方も起爆ミスを犯しましたが、敵さんも同じようですな!!ワッハッハ!!」


「戦はな、ミスの少ない方が勝つのだ!!よいな皆の者!!ここからは詰将棋!!ミスをしなければ勝つぞ!!」


「了解ィ!!!」


「各子隊指揮!!各個撃破に移れ!!ただし深追いはするな!!」


「各子隊指揮!!各個撃破に移行!!深追するな了解!!」


このあとアメリカ水雷戦隊は完全に統率を失い、単艦で挑むものもあったが、日本水雷戦隊の集中攻撃で次々に火達磨となっていった。


そして、主戦場カエナ岬沖で戦艦大和等がアメリカの戦艦部隊を壊滅させると、アメリカ水雷戦隊も戦場を離脱していった。


日本側の損害は17隻中、駆逐艦2隻大破自沈、2隻中破。川内含めて小破4隻。

アメリカ側の損害は24隻中、軽巡洋艦2隻、駆逐艦8隻が撃沈、駆逐艦6隻が大破自沈、3隻が中破、3隻が少破、損傷軽微は2隻のみであった。



ここに、世界初の水雷戦隊同士の戦いが終焉を迎え、日本の圧勝で幕を閉じたのである。


九三式魚雷という、大いなる神秘ワカン・タンカの稲妻は、驕るアメリカに神の一撃を与えたのである。


後世おいてこの海戦は、カエナ岬沖海戦と呼称されることとなったのである。

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