第160話 カエナ岬水雷戦
「命中!!重巡洋艦ミネアポリスに一発命中!!」
「ヨシッ!!」
第3水雷戦隊旗艦、軽巡洋艦川内の艦橋では歓声が上がる!
しかし、司令官橋本信太郎少将は無念の表情を浮かべている。
「まさか大半が早爆し、かろうじて命中弾一発か。」
「はい。最新兵器である酸素魚雷による隠密遠距離発射が、まさかこのようなことになるとは。」
隣の島崎利雄艦長が答える。
「血の滲むような訓練を重ねてきたが、その反面、実弾射撃は瀬戸内海で一度きりだったからな。」
「はい、秘密兵器とのことで補充もありませんでしたし、信管設定機能まで付いていたのが仇となりました。我々も不発とならぬよう指示しておりましたから、当然担当員は鋭敏に設定するでしょう。しかしまさか海中のうねりで誤爆する程とは想定しておりませんでした。」
「残弾については既に信管設定を鈍くするよう示達は済んでおります。」
「うむ、残弾はどうか。」
「はい、本艦は2発、初春、初霜は無く、吹雪型14隻は残り3発なので計44発です。」
「うむ、1発は突撃用に残す!各艦2発発射だ!」
「各艦2発発射了解!」
「よし、敵戦艦部隊は大和に任せよう。我々は敵水雷戦隊との戦いになる!皆!切り替えて行くぞ!」
「了解!!」
「敵水雷戦隊の規模と距離はどうだ!?」
「はい!敵水雷戦隊!軽巡洋艦3隻!駆逐艦21隻!距離九千です!!」
「敵さんもヤル気満々のようだ。問題は何処で魚雷を放つかだな。」
「はい、敵の魚雷は通常魚雷ですから、おそらく距離五千メートル付近で発射するのではないかと思われます。」
「そうだな。そして、我々が一斉に左回頭したらどうだ?」
「十中八九、アメリカ艦隊は右回頭して同航魚雷戦に持ち込むでしょうな。」
「そうだ、奴等は戦艦部隊のお供だからな、左回頭はしない。そして艦数も上回っているとなれば、正々堂々と同航戦を選ぶだろう。大量の魚雷を放つはずだよ。奴等はまだこちらの魚雷性能に半信半疑なはず。従って我々は同速度で右回頭するその予想地点に向けて中距離発射を行う!よいな水雷長!計算急げよ!!」
「各艦に通達!これより本戦隊は左回頭し、砲雷同時戦に臨む!縦陣形にて本艦に続け!敵艦隊は必ず右回頭するので、その未来位置に中距離発射を行う!!各艦の発射角は本艦が指示する!」
「本戦隊は左回頭し、砲雷同時戦に臨む!縦陣形にて本艦に続け!敵艦隊の右回頭未来位置に中距離発射を行う!!発射角は本艦指示!!了解!!」
「水雷長!どうだ!!」
「計算終わりました!!敵艦隊が本艦の変針30秒後に同速度での右回頭するものと計算しました!!」
「良い頃合いだ!各艦に計算結果を示達!!煙幕展開!!」
「煙幕展開!!!」
「戦闘!砲雷同時戦用意!」
「戦闘!砲雷同時戦用ォ意ィ!」
「右魚雷戦同航!右砲戦!」
「右魚雷戦同航!右砲戦!!」
号令一下、大砲及び発射管は右舷直角に旋回する!
「目標 敵軽巡一番艦!」
「目標 敵軽巡一番艦!!」
「方位角30度、敵速45、距離8000第三雷速!斉射2発!!」
「取舵!発射始め!」
「取舵!!発射始め!」
大日本帝国海軍、第3水雷戦隊は旗艦を先頭に左回頭、頭をカエナ岬方向に向けると、次々と酸素魚雷を解き放った!!
守護ッ!!座盤ァン!!守護ッ!!座盤ァン!!
酸素魚雷は海中の魔物となって時速89キロメートルで疾走を始めた!!
「今度こそ頼むぞ、酸素魚雷!!」
橋本司令官は海面の見えない航跡を見詰めながら激を飛ばす!
「さて、それでは身軽になったことだし!砲術長!砲撃戦を頼むぞ!」
「判りました!主砲、目標 敵軽巡一番艦!打ちィ方 始めェー!、発射用オオォ意!!」
「発射用オオォ意!!」
「打てェェェェ!!!!!!」
孥孥ゥン!孥孥孥ゥン!!孥孥ゥン!!!!
軽巡洋艦川内に搭載された主砲は50口径三年式14cm単装砲が7門であり、重量38キログラムの砲弾を最大射程19キロメートル、1分間に10発の発射が可能であり、世界標準的な能力を備える砲である。
第3水雷戦隊が左回頭すると、先頭のアメリカ軽巡洋艦セントルイス、フェニックス、ホノルル、そして駆逐艦21隻の水雷戦隊は、予想通り、約30秒後にセントルイスから順次右回頭を始めた。
アメリカ側は頭を抑えられた丁字戦法の形となるため、直進は不利、右回頭ならば同航戦で望ましい形となるからだ。
既に各艦は主砲の斉射を始めており、未だ命中弾は無いが、第3水雷戦隊の放った砲弾による水柱が激しく立ち昇り、時に視界を奪うのであった。
両艦隊とも、速度は約45キロ、相互に接近すれば1分間に約1500メートル接近する。
1分経過、相互の距離6500、旗艦川内にも敵艦の砲撃が数発被弾、後続艦も被弾し始める。
アメリカ艦隊の旗艦軽巡洋艦フェニックスも被弾してゆく。
1分30秒経過、相互の距離5700、アメリカ水雷戦隊は、魚雷発射の計算を終えた。
各員が発射の命令を待つ。アメリカのMk15魚雷は最大速度設定だと時速83キロで射程距離は5500メートルだ。性能としては、日本の旧式魚雷である90式と同等である。
日本艦隊もアメリカ艦隊も、激しく煙幕を上げる。
アメリカ側は確信する。距離五千で互いに撃ち合うことになるだろうと。
さながら西部劇の決闘のように。その距離が、お互いの銃の有効射程であることに疑いもなく。そして、西部劇で勝利するのは必ずアメリカの白人であることも疑わないのだ。
日米とも、お互いに若干の中腰姿勢をとり、銃にそっと手をかける。
アメリカはカウボーイハットの下の表情は余裕そのもの。保安官ワイアット・アープといったところだ。
日本は保安官に楯突いた、土地を追われ悪事を働くインディアン。奪った粗悪な銃で土地を取り戻そうとやってきた白人の敵。周りに味方は一人も居らず、決闘と言いつつも背後からも当然狙われており、勝利しても命の無い身だ。
1分40秒経過、相互の距離5400。二人は静かに佇む。
その地中から、インディアンの大いなる神秘ワカン・タンカの稲妻が音もなく近付いてくる。
1分50秒経過、相互の距離5200。稲妻がその力を解放させようとしている。日本はその力を理解しており、秒読みに入った。
ten!
nine!
eight!
seven!
six!
five!
four!
three!
two!
one!
ジャスト2分!
距離5000!!
アメリカ水雷戦隊指揮官か高らかに命じる!!
「Fireァ!!弩貫唖唖阿吽!!!!!ア?GAァ!!!
弩貫唖唖阿吽!!!!!
弩ッ貫唖唖阿吽!!!!!
弩ッ貫唖唖阿吽ゥン!!!!!
指揮官は命令を最後まで発する機会を与えられず!軽巡洋艦セントルイスは一瞬で予期せぬ高レベル破壊エネルギーの炸裂を左舷中央喫水線下に受け!船体が浮き上がると誘爆しながら艦橋の司令官もろとも亜空間に転送させつつ数秒間滞空!そのまま中央から二つに折れ曲がりながら着水!そのまま爆発を繰り返しながら海中に没していった!!
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