第159話 伝承

戦艦大和艦橋。


「ダンチャーク!!!!!」

弾着計測員が読み上げた瞬間!


華華華華華華華華華華華華華華華華

!!!!!!!!!!!!!!!!!


「光った!?」

宇垣参謀長が双眼鏡を覗き込みながら呟く。


次の瞬間!戦艦メリーランドから炎が吹き出す!

「命中!!」「命中ゥ!!」「左舷中央に命中!!」


「よっしゃあ!!やったぞ!!」

艦橋内の雰囲気は一気に最高潮に達する!宇垣参謀長と黒島参謀がお互いに全力の笑みを浮かべると、二人で山本長官を見る。


山本五十六聯合艦隊司令長官は、命中の様子を見ても厳しい表情を崩していないものの、その目元は嬉しさを隠しきれていない様子であった。


「メリーランド!減速していきます!」


「進路このまま!!全艦、砲撃をメリーランドに集中せよ!」


「進路このまま!!全艦、砲撃をメリーランドに集中!」


豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪!!!!

豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪!!!!

豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪!!!!


その後も日本艦隊は爆走しながら斉射を続ける。

艦隊は煙突から黒煙、主砲から発砲煙を後方になびかせ、その姿はまるで黒龍達の突撃のようだ。


お互いの艦隊は急速に近付いてゆく。

その姿は黒龍か鎌首をもたげてアメリカの艦隊に喰らいつくような艦隊行動であった。


「徐々に敵艦隊がよく見えるようになってきたな、主砲の発射速度も上がってきたのてはないか。」


山本長官は双眼鏡を構えながら宇垣参謀長に話しかける。


「はい、動きの鈍った敵戦艦に対しては弾道計算も容易となりますので、最速の40秒での発射が可能となりましょう。」


「命中ゥ!!」「左舷後部に命中!!」

メリーランド左舷装甲が弾け飛ぶ!!

「よし!!どんどんやれぃ!!」


その後も戦艦メリーランドには日本艦隊主砲の命中弾が続く!!

その度に上部構造物は激しく損傷飛散し、メリーランドの主砲45口径40.6センチ二連装砲塔四基8門も、3門が停止、5門が散発的に応射する状況であった。


ガ牙牙牙頑亜亜ン!!!

大和艦内に甲高い金属音が鳴り響く!!!


「どうした!!」

皆周囲を見回す!

「被弾!!被弾です!!右舷の模様!!」


「損害は!!!」 

「各分隊状況しらせぃ!!!」

艦長が伝声管で指令する!!


「第1分隊!!異状なし!!」「第2分隊!!異状なし!!」・・・・・・

「第22分隊!!異状なし!!」


「よし!長官!艦内異状ありません!」

高柳艦長が報告する!!


「うむ。」

「長官!メリーランドの主砲は40.6センチ、大和の防御力はそれを凌ぐことが証明されましたな!!ワッハッハ!!」


「うむ、心強いよな。とはいえ集中防御区画、バイタルパート以外であれば貫通するであろう。油断は禁物であるぞ。」


「わかっておりますとも!!さて、メリーランドは戦列を離れつつあり、後続艦が前に出てきました。2番艦に目標を移してはいかがでしょうか。」


「うむ。メリーランドの射撃指揮能力は喪失している模様だな。各主砲単独の射撃だが、距離1万メートル以上ではそうは当たるまいな。」


「はい、先程のまぐれ当りはありましたが、基本的に主砲設置の測距儀では命中率は低下します。5000メートル以内に接近しなければ脅威はありません。」


「よし!各艦に通達!全艦目標変更!!目標は敵2番艦戦艦ペンシルベニア!!各艦長指揮!始めぃぃ!」


「全艦目標変更!!目標は敵2番艦戦艦ペンシルベニア!!各艦長指揮!了解!!」


全艦隊の主砲が2番艦ペンシルベニアに照準を合わせると、熟練の動きで次々に発砲してゆく!!


アメリカ艦隊も主砲を撃ちまくるが、大和の装甲にことごとく跳ね返されてゆく!

戦艦ペンシルベニアと戦艦テネシーの45口径35.6センチ砲では、戦艦大和の装甲を研磨する程度の効果しか得られなかったのだ。

そう、黒龍の鱗は硬すぎたのだ。


そして戦況は刻一刻と圧倒的なものとなっていく。


戦艦ペンシルベニアは距離1万メートルで大和主砲の九一式徹甲弾で左舷から貫通数発。うち一発が主砲塔に命中し、大爆発を起こして爆散、海中に一瞬で没した。


戦艦テネシーは距離八千メートルで九一式徹甲弾がテネシー手前20メートルに着水し、その弾頭の特殊形状により水中を魚雷のように直進、左舷喫水線下に突入したことにより浸水による大幅な速度低下を来し、あとは戦艦伊勢、日向、扶桑、山城の袋叩きによって洋上に浮かぶ平船へと変貌した。


重巡洋艦ニューオリンズも抗すべきもなく爆沈した。


重巡洋艦インディアナポリスは日本艦隊に取り囲まれるなか白旗を掲げ降伏、そのまま海上に漂う水兵の救助艦として生かされることとなった。


重巡洋艦ミネアポリスは酸素魚雷を被弾しており、緩やかに現場離脱し、日本艦隊もあえて追撃していない。


そして史上初の近代戦艦同士の艦隊戦は日本の圧勝という結末で幕を閉じた。


このカエナ岬海戦を詩人が後世に伝えるならば、このように言い伝えることだろう。

「布哇オアフ島の彼永無岬にて、日ノ本から現れた巨大な神の黒龍たちは、稲妻の如き咆哮とともに無数の白金の牙を打ち立て候。

亜米利加から現れた正義の保安官は、日ノ本の黒龍を黄色猿の使役する下等生物として、その巨大な鞭と拳銃を疾走らせ候。

亜米利加の鞭も拳銃も、先住民族を討伐するには必要以上に最適であったが、日本の黒龍の怒りの様相は亜米利加の心胆を寒からしめ、刃向かった全てのものを容赦なく、痛痒なく、事も無げに死という形を与え、その供物となり候。」と。

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