第158話 遠雷

華華華華華華華華華華華華華華華華

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


「きゃっ!」

「光った!!」

「ワン!!」

新海とノア、そしてケオケオは、突然の閃光に目を奪われると、次の瞬間には、アメリカ艦隊先頭の戦艦メリーランド中央付近から鋼材や砲身等が上空に高々と飛散し、炎が吹き荒れた!!


「命中だ!!やった!!」

「凄い・・・・」


その激しさは、付近の空間が揺らめいて見えることからも、メリーランドが尋常でない高温にさらされていることがみてとれた。


ゴゴ業業業業業業業業業業業業業業業業ゥゥゥ!!!!!!


「きゃあっ!!」

「ワゥン」

数秒後、遠雷のように激しい破壊音が到達する!!


そして戦艦メリーランドの籠マストが緩やかに傾斜し折れ曲がり、最上部の観測室が海中に没していった。


「一気に速度を落とした。エンジンにダメージを与えたぞ!」


「大丈夫かしら、あんなに凄いなんて、信じられないっちゃ。」


「私も見るのは初めてだけど、凄すぎるぞ!」

「ワンワン!!」


戦艦メリーランドは炎を吐きながら一気に速度を落とした。後続艦はメリーランドを避ける形となったが、その動きは突然の指揮官不在で進退を決めかねて緩慢としており、統率が乱れ始めている様子であった。


「ヤマト艦隊はキレイに並んでこっちに戻ってくるっちゃ。しかも全艦撃ちまくってるっちゃよ。」


「そうだね撃ちまくってる!このあとは一気に距離が縮まる!接近戦になるぞ!」


「そう。私、ちょっと怖いナ。もう帰りたいかも・・・」

ノアはケオケオを抱きしめる。


「・・・・確かに、戦場が近付いてきている。もっと登ってここから遠ざかろう。」


「うん・・・」

「クゥーン」


そして二人と一匹は戦場を背に距離をとりはじめる。


私達は時々振り返りながら、戦場の様子を確認する。


戦艦メリーランドは時速10キロ程度の速度に減速し、主砲の方位盤射撃は不能となったようで、各砲がバラバラに発砲していた。


現在アメリカ艦隊はカエナ岬の西端の位置を時速33キロメートルで北進、日本艦隊はカエナ岬北西方の位置を時速44キロメートルで東進している。

ざっくりとした計算で、1分で1キロメートル相互に接近する位置関係であった。


日本艦隊は一糸乱れぬ動きで波を掻き分け突き進んでくるのが見える。


一方アメリカ艦隊はかろうじて北進を続けているが、旗艦脱落の影響で各艦の動きは鈍い。

しかし既にカエナ岬西端を北進通過しており退路もないのだ。迂闊に回頭して岬に接近すれば、座礁する危険性もある。


アメリカ艦隊の上空を見上げると大和以下の戦艦部隊が発した零式水上観測機がキラキラと光を反射させながら飛び回っている。

観測機は弾着観測が主任務であり、その距離が遠距離となれば極めて重要な存在となるのだ。


更に西方では、両軍の水雷戦隊が交錯しようとしている。

南進する日本艦隊は17隻、北進するアメリカ艦隊は24隻だ。

相互の距離は約7000メートル。


水雷戦隊同士の接近も凄い迫力だ!このあとは魚雷戦、そして砲撃戦に移るのだろう。


私は申し訳無さを感じながら、ショックを受けている様子のノアの手を取り、ゆっくりと登っていくのだった。


風は、いつの間にか鉄と油と破壊の匂いをハワイの空に運んできていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る