第145話 夾叉
大和、伊勢、日向、山城の戦艦4隻の主砲発射速度は、概ね40秒に一発である。
戦艦大和をコンサートマスターとして、戦艦群が奏でる破壊の調べはハワイの空に響き渡る。
初弾発射から数分後、4射目の弾着報告!
「ダンチャーク!夾叉(きょうさ)!」
「弾着夾叉!」
宇垣参謀長と黒島参謀が顔を見合せ、共に頷く。
「長官!いよいよメリーランドは主砲の網に掛かりましたぞ!!あとは命中を待つのみです!!」
「うむ、夾叉まで早いではないか、優秀だな、皆は。」
「はい、これで敵艦はどう出ますかな。」
黒島参謀が進言する。
「敵艦列はメリーランドのみ発砲しており、その精度も低い状況です。4対1の敵側としては明らかに不利な状況。敵艦列は今後、深い角度で右回頭して距離を縮め、テネシーとペンシルベニアの射程距離、約20000メートルまで接近を図る可能性が高いと思われます。」
「可能性は高いな、私だってアメリカ側の立場ならそうするだろうし、それしか打開策がないだろう。」
「はい。それか煙幕を張って逃走するかでしょうか。」
「フフ、それはないな、ここで逃げたらアメリカの威信とやらに傷が付くだろう。戦ってもいない黄色人種の軍隊から逃げ出したとな。まぁ、そもそもあの戦艦は足が遅い。どのみち逃げ切れないから、その選択肢はないな。」
宇垣参謀長が意見具申する!
「長官!それでは、敵艦列が右90度回頭ならば丁字の理想形となりますのでそのまま全艦で先頭のメリーランドを狙います!敵艦列が135度以上の右回頭ならば、こちらもそれに合わせて取舵し、一定の距離を保ちつつ、先頭のメリーランドを狙うということでいかがでしょうか!」
「よかろう。」
伝令が駆けてきて報告する!
「報告します!水雷戦隊司令官、橋本信太郎少将から入電!突撃準備ヨシ!突撃準備ヨシ!です!」
山本長官以下、一瞬顔を見合せると、ニヤリと笑みを浮かべる。
「第三水雷戦隊は、もう待ちきれないようですな。」
「うむ、そのようだな。しかしもう少し待て、騎馬隊の突撃にはまだ速い!待てと伝えよ!」
「ハッ!!」
「艦長!敵艦列の右回頭を念頭に発射を続けよ!」
「ハッ!砲術長!敵艦列の右回頭を念頭に調整!発射連続!」
「さあ、どう来る!アメリカさんのお手並み拝見といこうか!」
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