第143話 弾着修正

戦艦大和は主砲発射の影響で艦自体を左右に揺らしながら時速40キロメートルで爆走する。

同時に主砲から出た黒煙は左舷を覆い、後方に黒色の帯を作る。


豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪!!!!


一拍後に三番艦の戦艦日向も敵二番艦ペンシルベニアに向けて45口径四一式36センチ連装砲4基8門を発砲!!!!


凄まじい主砲の重奏が始まる!!


戦艦大和の海面上50メートルに位置する艦橋では、主砲斉射の凄まじい衝撃波が艦内を突き抜けるなか、全員が彼方の敵影を見詰めながら対衝撃体勢をとっている。


相互に放つ砲弾は、日本の46センチ九一式徹甲弾は初速780メートル。36センチ九一式徹甲弾は初速775メートル。

アメリカのAP Mark5は、初速768メートル。

砲塔内部に刻まれたライフリングによって回転運動を与えられ、成層圏に突入する!!


射撃指揮所の弾着計測員が伝声管を通じて読み上げる!

「弾着まで40秒ォ!!」


宇垣参謀長は紐で結ばれた耳栓を外し、山本長官に話しかける。


「メリーランドも発砲したようです!まさか同時とは!」


山本長官も耳栓を外し、堂々と答える。

「うむ、当然我が艦を標的にしているだろうな。」

狙われているというのに、その姿にひとかけらの恐れもない。


「弾着まで30秒ォ!!」


豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪!!!!


大和、日向発砲の10秒後、続いて二番艦、戦艦伊勢の主砲、45口径四一式36センチ連装砲4基8門が火を吹く!!


黒島参謀は答える。

「メリーランドの主砲は40.6センチ砲4基8門ですが、大和の重要防護区画は撃ち抜けないはずです。」


「弾着まで20秒ォ!!」


弾丸は成層圏に到達し、放物線の頂点に達すると、桁違いの運動エネルギーを叩きつける相手を目指して下降に移る!


「うむ、そこはこの大和を信じよう。」


艦長が発する!


「長官!!敵艦の着弾も同時と思われます!!対衝撃体勢願います!!」


「弾着まで10秒ォォ!!!」


「射撃指揮の第9分隊以外!!対衝撃体勢をとれ!!!」

「第9分隊以外は対衝撃体勢!!!」


「初弾用ォォ意!!!!!」


「ダンチャーク!!!!!」


30キロメートル先の彼方の敵戦艦メリーランドの右手奥に、高らかな水中が上がる!!


座座ッ射アァ!座座射アァ!座座座座ッ射アァ!!!


同時に大和から離れた場所に8本の水柱が上がる!!


山本長官は敵弾の水柱を認めながら呟く。

「水柱の大きさが日本海海戦の時の倍以上だな。改めて凄まじいものよ。」


宇垣参謀長は双眼鏡で大和の水柱を

見詰めながら説明する。

「大和の弾着は全て右奥のようですな。距離は300程度か。散布界も悪くはない。次弾からは弾着修正しながらの射撃となりますぞ!」


黒島参謀も続ける。

「敵艦の弾着は1000メートルは離れておりますな。散布界もバラバラです。」


「うむ、この戦艦大和は竣工したばかりの最新鋭艦だ。精度が高いのも当然だな。兵の習熟度が心配であったが、なかなかではないか。」


豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪!!!!


最後に四番艦、戦艦山城が敵二番艦、ペンシルベニアに向けて45口径四一式36センチ連装砲6基12門を発砲した!!!!


艦長が確認してくる。

「速度針路そのままで斉射を続けてよろしいですか。」


「うむ、現状4対1だ。このままで命中弾を与えよう。」


「ハッ!」


「目標そのまま!方位盤射撃指揮!!」


「目標そのまま!方位盤射撃指揮了解!!」


この瞬間も射撃指揮所と発令所では、精密望遠鏡で捉えた弾着の散布状況や、観測機からの弾着報告を基に弾着修正値が速やかに算出され、最終的に砲術長の指示により、ミリ単位で主砲の修正角を決定するのだ。


そして、なるべく早く夾叉(きょうさ)を得て、散布界のなかに敵艦が入るようにし、確率的に命中弾を得るのだ。


一番主砲準備ヨォシ!

二番主砲準備ヨォシ!

三番主砲準備ヨォシ!


砲術長が号令を掛ける!!!!

「打てェェェェ!!!!!!」


剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛業業業業業業業業業業業業業業業業業業業業業業業業業業業業業業豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪!!!!!!


第二射が発射された!戦艦大和はいよいよ主砲の連続発射体制に移ったのである。

それはつまり、破壊の神の降臨であった。


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