第137話 敵艦判明
それから数分間、艦橋内は緊張と静寂が支配し、静かな気迫に包まれている。
再び伝令が報告してくる!
「水上偵察機より報告!敵艦隊の詳細が判明しました!」
宇垣参謀長か応じる!
「報告せよ!」
「ハッ!敵戦艦は先頭にメリーランド、後続にペンシルベニア、テネシーの縦隊!そこに重巡洋艦3隻が並列した複縦陣を組み、その後方には軽巡洋艦3隻、駆逐艦21隻とのことです!更に戦艦は損傷があり、メリーランドは艦首部分に被弾痕、ペンシルベニアは後部小破、テネシーは第3砲塔破損とのことです!」
黒島参謀がリストをめくる。
「戦艦メリーランドは40.6センチ2連装砲4基搭載の強敵です。長門、陸奥と並ぶビッグセブンの一角ですな。ペンシルベニアとテネシーは35.6センチ3連装砲4基搭載の旧式戦艦です。しかも損傷もあるようですな。」
黒島参謀はニヤリと笑みを浮かべると、宇垣参謀長も応じる。
「フフフ、長門陸奥には悪いが、ビッグセブンを超越した存在がいることを教えてやろうではないか。」
高柳艦長が答える。
「しかし、その長門と陸奥が居れば盤石の布陣でしたが、両艦ともさぞや悔しがりますね。」
「そうだな、しかし長門と陸奥は、この作戦のカモフラージュのため、積極的留守作戦が必要だったのだ。我々も相当悩んだところだが、結果的にはアメリカを見事に油断させることに成功したと言える。」
「はい。我が艦隊の士気は最高潮に達しており、長門陸奥の不在を補う働きは間違いありません。」
艦長は参謀長から山本長官に向きを微妙に変え報告する。
「現在当艦隊の針路は南西250度、カエナ岬までの距離10キロです。間もなくカロア岬を西に過ぎ、南方海域の視界が開ければ、敵艦の視認が可能となります。」
山本長官が頷く。
「うむ。いよいよだな。」
「ハッ!敵の偵察機は先程撃墜していますので、敵艦隊は航空観測も出来ないでしょう。」
「そうだな、鮮やかに撃墜した零戦2機は、翼にハワイ王国旗が描いてあったな、見事な腕だ。」
「はい、事前の取り決め通り、艦隊直掩に来た赤城所属機でした。鮮やかな攻撃でしたが、通常は3機編隊のはず、1機はやられたんでしょうか?」
「そうだな、多分、あの小隊は私が推薦した陸軍上がりのエース小隊ではないかな、奴だとすれば無事なようだな。」
黒島参謀がポンと手を打つ。
「長官が経歴を気に入って推薦した少尉でしたな、名前はなんでしたか」
「名前は、確か、新海だったか。面白い男だよ。私の勘だが奴はそう簡単に撃墜されるようなタマではない。おそらく奴はあの零戦2機のどちらかに乗っており、この海戦を見ているに違いないさ。」
山本長官は、上空を飛ぶ零戦を一瞥しつつ、左前方のカエナ岬を見つめるのであった。
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