第130話 談笑
ノアはテキパキと火を起こすとヤカンを火にかける。
その動きは洗練されていて、手伝いの声を掛ける余地もない。
そして持ってきたコーヒー豆をガリガリと挽くと、辺りはコーヒー豆独特のとても良い香りが漂う。
良い香りだ。思いっきり深呼吸する。
ケオケオもそう感じるのだろうか、チラリと見たが、あまり興味はなさそうだ。
シュッシュツっとお湯が沸くと、程よく挽いた粉末にお湯を注ぎ淹れ、漆黒の珈琲、ハワイブレンドが誕生した。
「さあ、どうぞ、砂糖もたくさんあるっちゃよ。」
ノアは流麗な仕草でコーヒーカップに注ぐと、私の手元に置いてくれた。
「ありがとう。」まずはブラックで一口、酸味と苦味が広がる。
「旨い!本物だ!」
「当たり前っちゃよ。」
彼女は嬉しそうに微笑む。
お互いに一口飲むと、ノアはコーヒーカップを置きつつ、気になっていた事を一気に聞いてきた。
「ねえ、ソラ、あなた、これからどうするの?見つかったら、捕まってしまうわ。」
「・・・・」
「日本はアメリカと戦争を始めてしまったんでしょ?なんで?そんなに仲が悪かったかしら?」
「・・・・」
「それに、あのレインボーエアクラフトの翼に描かれていたのはカラカウア王のロイヤル・スタンダード。ハワイ王国の旗よ。一番わからないのがそこよ。どういうこと?」
「そして、日本は、ソラはどうしたい訳?」
どうやら、気になっていたことを一気に全部聞くことにしたらしい。
彼女は真摯な眼差しを向けてくる。その双眸は知性に溢れ、中途半端な回答は出来ないという言い知れぬ気迫すら感じた。
私は少し考えるが、彼女に対して嘘や曖昧な返答は失礼だと感じたので、正直に答えることにした。
「レインボーエアクラフトって、私の乗っていた戦闘機のことかな」
「あ、そうよ、あなたの飛行機から虹が見えたの。それでレインボーエアクラフトよ。素敵でしょ?」
「うん、虹かぁ、出てたのかな?そこはわからないな。それじゃあ最初から、私の知っている限りで答えるよ。」
「うん、頼むっちゃよ。」
「その、ちゃって言葉、なんだろ、あまり馴染みがないけど、良いね。」
「変だっちゃ?隣の人の話し方を真似してたらこうなったっちゃ。」
「フフ、グッドダッチャ!」
「あっなんかバカにしてるっちゃね!」
アハハ!ハハハ!
話がすぐに逸れる。
ケオケオは薪の炎にあたりながら、そんな2人を見つめるのであった。
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