第129話 ブレックファースト
ズズン!
ズズン!
何だ!ロッキングチェアからばっと飛び起きた!
周りを見渡すと、朝の光がヨコハマラグーンのなかに差し込み、辺りは幻想的な空間が広がり、優しいさざ波が岩場を撫でる音が聴こえる。
美しい光景に気を奪われるが、耳を澄ましていると
ズズン!
聞こえた!少し振動もある!
これは、もしかしたら、艦砲射撃か?!
遂に上陸作戦が始まったのか?!
ああ寝過ごした!かなり疲れていたようだ。これからどうする?どうすればいい?自分に出来ることはないか?
外に出るか?上陸地点はオアフ島北端だから、ここからは距離がある。
しばらく考える。
とりあえず、出来ることはないな。
でもこうなると、あの娘、ノアは来れないだろうな。それとも、来てくれるかな。
待とう。それで来なかったら、行動開始だ。
それからはビーフジャーキーを少しずつ齧りながら、はやる気持ちを抑えて待つと、救いの女神は意外と早く姿を現した。
洞窟入口の暗闇から静かな波音が聴こえてきたので私は素早く身を隠して様子を伺うと、見覚えのあるアウトリガー舟が見えて、先頭には小さめな犬が乗っている。
次の瞬間には彼女が光の世界に颯爽と現れた。
一瞬見とれていると。
「HEY!ソラ!居る!?」
彼女の声が辺りに響き渡り、我にかえって姿を出す。
「居るよ!ここだ!」
彼女は私を見つけると素晴らしい笑顔を浮かべ、素早く舟を岩場に停めた。
近付いて見るとバスケットが足元に置いてあり、彼女が持ち上げたので私は自然とそれを受けとろうとする。
バスケットを持つ彼女が少しバランスを崩したので彼女の両手を私の両手で押さえてあげる。
彼女の手は温かく、恥ずかしくて眼を逸らしたが、バスケット越しに繋いだ手を起点にして彼女は軽くジャンプして跳び移ってきた。
「ありがとうっちゃ!」
「う、うん!」
なんだがとても恥ずかしい、みんなゴメン。
「ワンッ!」
なんかその流れでチワワみたいな犬も、まるで俺が抱っこするのが当たり前のような気配を出してきたので、抱っこして移動させた。
こいつ、全く物怖じしないな。
ノアは小さい丸テーブルにバスケットを置き、自慢気に両手でふたを開いた!
「ブレックファーストだっちゃ!」
中に入っていたのは食パンと卵焼き、そしてリンゴ、そしてまさか!
「ノア!それって、コーヒー豆かい?!」
ノアはフフンと笑みを浮かべる。
「そうよ!内緒で持ってきたのよ!感謝してね!」
とは言ったものの、少し不安そうな表情になった。
「どうしたの?無理に持ってきて両親に怒られるんじゃないの?」
ノアは食パンに卵焼きを載せて私に渡しながら言う。
「そんなんじゃないわ」
ノアは一転泣きそうな表情になる。どうも本当は不安な気持ちみたいだ。
「私、ママとグランドマザーと暮らしているの。でも昨日帰ったら、2人とも居なくて、書き置きには、急な用事で呼ばれてたので街に行ってくるって、数日空けるかもしれないから、ケオケオの面倒を頼むって。」
チワワみたいな白い犬が足元をぐるぐるぐる回る。
「ケオケオって、この子かい?」
「そう、だから連れてきたわ」フフフと少し笑った。
「この子、一応人見知りする子なんだけど、最初から抱っこをせがむのを見たら、笑っちゃうわ。」
「えっ、そうなの?ずいぶん厚かましいと思ったよ。」
ワン!
抗議しているようだ。
2人の笑い声が重なり、楽しい朝食をとりながらお互いのことを話した。
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