第126話 ハワイ上陸作戦開始

戦艦大和第一艦橋内の雰囲気は落ち着きを取り戻した。


改めて艦橋から見渡すと、晴れ渡る空には直掩の零戦が編隊を組み、幾筋もの飛行機雲を引いている。


眼下には無数の艦隊が連なり、特に上陸作戦に係る揚陸艦と上陸用舟艇は忙しく動き回っている。


艦橋内は、宇垣参謀長以下全員が直立し、山本長官を見ている。いよいよだ。皆、この時を待ち望んでいたのだ。

日本男子として、やらねばならぬこの時を。


山本長官は艦橋内、皆の顔をギロリと睨み回す。


「よし!」

「皆よいか!これより!ハワイ解放作戦を開始する!ハワイ王国旗を掲げよ!

「了解!ハワイ王国旗掲揚!」

手旗信号と発光信号で全艦艇に直ちに伝達され、各艦、既に掲げられている日章旗に続き、ハワイ王国旗がスルスルと掲揚される。

「ハワイ王国旗!掲揚しました!」


「よし。」

「皇国、そしてハワイ王国の興廃この一戦にあり。各員一層奮励努力せよ!」


「上陸作戦、開始!!」

「了解!上陸作戦開始!」

「上陸作戦、開始!!」

手旗信号と発光信号が発光する!


全軍、呼吸を合わせるように、それぞれの行動に移る!


大和以下の戦闘艦艇の砲塔が一斉に旋回し、僅かな敵陣に照準を合わせる。


「発砲は待てよ、敵の出方を見る。」


遠く海岸では、慌てて走り去ろうとする車両や兵士が見えるが、積極的な攻撃の気配はない。

元々、オアフ島の防備は真珠湾の南側に集中しており、北部を守る要塞は僅かだ。

第一段階としては、極めて順調な滑り出しであった。


長官はニヤリと続ける。

「上陸作戦はスピードが命!疾きこと風の如しだぞ!」

宇垣参謀長も思わず脱帽する。

「今度は信玄公ですか、長官の懐の深さ、恐れ入り申した。」


「参謀長、はやるなよ、これは侵略ではない、火の如く攻めるは下策と心得よ。」


「はい、肝に命じます。」


山本長官の人身掌握術は、戦艦大和すら超える器であった。

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