第99話 突破
我々は再び高度を上げる!
機体を捻らせながら360度周囲を確認する!敵影無し!
下方では敵戦闘機が乱舞しているが、零戦隊を追う者、護衛に戻ろうとする者、回避で高度を失った者と統制を失った状況だ。
その混乱で敵機は貴重な一瞬を失うなか、零戦隊は生き残りのドーントレス数機に追撃をかける!
零戦の旋回性能は抜群だ!擦れ違ったと思ったら体操選手の鉄棒種目のように美しい捻り込み旋回であっという間にドーントレスの背後に急速接近する!
ドーントレスの後席が我武者羅に7.7ミリ旋回機銃を撃ちまくる!
零戦は僅かに射線を反らしつつ肉薄!ぶつかりそうだ!
弾弾弾弾弾弾弾!鈍鈍鈍鈍鈍鈍!
一閃!
爆亜亜亜吽!!
やるなぁ!惚れ惚れする!
ドーントレスの壊滅は時間の問題だ。
我々の獲物は次だ!メインの爆撃機編隊を殺る!!
零戦隊という名の騎馬隊は敵の第一陣、第二陣を軽々と突破!
その勢いを増し、敵の本陣に斬り込む!
アメリカ陸海軍混成航空部隊のパイロット達は、日本軍戦闘機の速度、旋回性能、攻撃力を目の当たりにし、あまりにも事前のブリーフィングで聞いていた情報との違いに戸惑い、そしてその偏見に満ちた情報で作戦を立案した指揮官に怒り、それを当然のように信じた自分自身にも怒りを覚えながら、生き残ろうと決意するのであった。
そう、すでにアメリカ側の心理状態は、ジャップの殲滅から、自分達が殲滅を逃れるための戦いに、無意識のうちに変容させられたのである。
騎馬隊による突撃というものは、古の時代から兵の心を挫く抜群の効果があるのだ。
突撃しながら陣形を整えて牙を剥く零戦隊!
対する本陣で待ち構えるは大型爆撃機という名の城塞!大空の城攻めだ!
B18ボロ爆撃機15機、B17フライングフォートレス爆撃機5機、A20ハボック攻撃機が5機の計25機が水平爆撃のため密集隊形をとっている!
各機体に設置された旋回機銃が狙いを定める。
水平爆撃とは、高高度から先頭の指揮官機に続いて次々と大型爆弾を投下する爆撃法である。
爆撃手が投射位置・投射角・高度・風向等の繊細な要素を計算しつつ、爆弾照準器に合わせて投下することから、目標を決めて爆撃コースをとったら投下まで基本的に進路変更は出来ない攻撃法である。
進路、速度を変えてしまうと、爆弾の着弾地点は大きく変わってしまうのだ。
大型爆弾を高高度から投下するため命中した時の破壊力は極めて抜群だが、爆撃コースを直進するので回避されやすく、艦船に対する命中率は低い。
基本的に地上目標の破壊を目的とした爆撃法といえるだろう。
とはいえアメリカの空中城塞は各機が1000キロ爆弾を数発搭載しており、直撃すれば空母は一撃で轟沈する可能性がある。
決死の攻城戦が始まる!
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