第36話

奴は何処だ!


目を離して数秒、最後に見た奴は旋回を始めたところで、距離は十分にあった。


私は必死に頭を廻らせ、風防から見えるハワイの空と水平線に目を凝らす!


僚機と敵機が格闘戦に入ってゆくが、一瞬で有利な展開であることが判る。


奴が見えない!


太陽か!?・・・居ない。


次の瞬間、凄まじい殺気を感じた!


まさか?!見えていないが、居る!

いてもたってもいられない!


とっさに操縦桿を倒す!


機体が反応し、左に急旋回する!


弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾!


轟音と供に幾条の弾丸が私が居た空間を切り裂く!


下だー!


全身から汗が吹き出す!体が警告してくる!こいつはヤバイ!


奴は急上昇して一気に駆け上がってくる!


私は機体を回転させて後方を視野に入れると、奴は急旋回で機体に描かれた牙を私に向けようとしており、唸りを上げたエンジンは空の獣が咆哮をあげたようであった。


私は直感的に降下すると殺られると感じ、スロットルを全開にして奴の挙動と反対方向に急旋回し、捻りこんで急上昇に移る!


どうだ?!ついてくるか?!


P40の反応速度は零戦ほどではない!少し鈍重で離れる!しかしパワーがあるのでまた距離を詰めてくる!


例えると、コーナリングは零戦が速いが、直線はP40が速い印象だ。


私は叫びながら操作する!


ついてこれるかぁ!







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る