第5話
「……ラっ!ミ…ラッ!!…ミラッ!」
誰かにずっと名前を呼ばれている。起きないと…でも、なんでだろう。身体がいう事を聞いてくれない。指一本動かす事でさえ…
「ミラッ、お願いだ…独りにしないでくれ」
この声は…嗚呼、私の番の……
「レ、ル……?」
やっとのことで絞り出せた声。
ゆっくりと目を開けると、レルフは私を抱いた儘、ボロボロと涙を零し泣いていた。
ずっと泣いていたのだろう。目が真っ赤に腫れている。
「ごめ、んね……レル。寂しい思い……させてしまいました、ね」
私は涙でしっとりと濡れた頬に手を伸ばし、優しく撫でた
頬の毛が絞れそうなくらい濡れていて、脱水になっていないかと私は心配になる
そしてふと違和感に気付いた。
先程噛まれた首から、手足に向かって熱が流れて行くような感じに私は首を傾げる
この感じ、念話に似ているなぁ。と考えながら、私はその熱に身を任せていた
「悪ぃ。俺の魔力が弱すぎたから、ミラに辛い思いさせちまった。守るって言った傍から自分でミラを傷つけるなんて……ははっ、俺は結局災厄なんだな」
レルフはそう言うと自嘲的に笑い、再び私を抱きしめる。少し震えているその様子はまるで迷子の子供みたいだ。
「私は大丈夫ですよ。レル、もう少しだけこうしてて。レルの体温、凄く心地がいいの。」
私は動けない身体を無理矢理動かし、レルフの背中へと腕を回した。そんな私を見て、レルフは更に強く抱き締めてきた。少し息苦しい。
けれどそれが心地よく、段々体の熱が馴染んでくるのが分かった。
そのまま数十分程度だろうか。やっと私の意識がはっきりとしてきて、熱も馴染みいつも通りに身体も動かせるようになった。
私はレルに「もう大丈夫だよ」と告げると、窓の外を見た。
明け方位の明るさだろうか、という事は…私は丸一日ほど寝込んでいたのか……と思っていると、レルフが「3日も目覚めないから死ぬかと思って…俺、ミラを殺す所だった」と、爆弾発言をした。
私は訳が分からない、とレルフに伝える。
どうやら番になるには、本来魔力量が同じくらいじゃないと、魔力の多いほうが死ぬんだとか。
私は神の加護を受けているが小柄な為、魔力量も少ないだろうと思った俺の判断ミスだと言われ、深々と頭を下げられた。
「レル、誰にだってミスは有るから大丈夫ですよ。それに、私ちゃんとこうして生きてますし!!……ね、それにこんなに魔力量の違いが有るのに、ちゃんと私達番になれたんだよ?」
私はレルフを元気付けようと微笑む。実際死ぬのは嫌だし怖い。でも、今こうして生きているからそれで良い。
未だにしょんぼりと項垂れているレルフに私は「元気出して」と、座り込んで同じくらいの高さになっているレルフの頭を撫でてあげた。
表情は未だに強張ったままだが、尻尾は嬉しそうに左右に揺れている。
早速外へ出て辺りを見て回ろうと提案したが、レルフに即却下されてしまった。
「まだ病み上がりだから」と、暫くはこの小屋にお世話になる事となった
私は食料を狩りに行くレルフを毎日見送り、出迎えた。
食事位は私が作ろうと言ったが、それも却下。
しかしレルフの作った食事はとても美味しかった。
どうやら、此処はフリットランとは正反対の場所らしく、吸血族の町が近いことをレルフが教えてくれた。
正反対の場所ならば追手も来ないだろうし、吸血族ならば獣人達と違ってレルフと私を受け入れてくれるかもしれない…!!私はそんな希望を抱きつつ、残りの療養生活を過ごした。
そして私は遂に外出の許可が下りた。
やっと外に出られる!!外はどんな感じなのだろう。ワクワクしながら荷物を纏めていると
<コンコン>
と、誰かが小屋の扉をノックした。
レルフと私は顔を見合わせる。もし、獣人族だった場合…私達は直ぐに殺されてしまうだろう。兵士の追手ならば、私は助かるかもしれないがレルフは……。
私は武器のレイピアを手に持ち、戦闘態勢へと入った。
レルフも拳を構えている
<がちゃり>
ゆっくりとドアが開いた。
神様!異世界に転生したけど、これは聞いてない!! 紫くらげ @396cat
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