第1話
「起きて下さい。大丈夫ですか?」
あれ、私…死んだはず…?
目を開けると、そこには真っ白で毛並みの美しい猫が居た。金色の瞳が申し訳なさそうに此方を見ている。
「はい、貴女は死にました。ですが、貴女が助けたのはただの猫じゃないんです」
普通の猫じゃない…?それっていったいどういう…?
私は言っている意味が分からず首を傾げていると、その白猫の後ろから先程の黒猫が顔を出した。
「あ!さっきの!」
私がつい声を上げ黒猫を見ると、黒猫は私に深々と頭を下げた。
「俺を助けたばっかりに、お主の人間という生を終わらせてしまった。本当にすまない。」
私は尚も首を傾げている。
もしかして、助けたと思った黒猫も一緒に死んじゃったって事…?
「ごめんなさい、私…助けられなかったんですね」
じわりと浮かんでくる涙を堪え、私は頭を下げた。
暫くの間、無言の時間が続く。
怒っているんだ…そう思い、身体を強張らせた私の頭上からクスクスと笑う声が聞こえる
「ふふ、貴女はとても優しい子なのね。大丈夫、この子は死んでませんよ」
その言葉に私は顔を上げる。
白猫は怒る事もなく、優しく微笑んでいた
「多分、貴女勘違いをしているわ。勿論貴女は死んでしまったけれど、この子は死んでないの。」
そうして、白猫は私に分かりやすく説明してくれた。
まず、私はあの世界では死んでもう火葬もされて生き返せないという事。
私が助けた黒猫は、私の世界とは別世界の神様で、少し遊びに来ていた所を私に助けられた。
そして此処は「神の間」という所らしい。まぁ要するに神様の家?みたいなものらしい。
白猫の子は生を司る神様
黒猫の方は死を司る神様
お互いは対であり、どちらかが居なくなると、その世界は崩壊するが、神が死ぬなんてことはまず有り得ないらしい。
「つまり…あの時助けてなかったら、世界は…」
「はい、そういうことです。私の対を助けていただき、ありがとうございます」
私は知らぬ間に世界を救っていたらしい。
「ですが、私の対の為とは言え…貴女の人間としての生を終わらせてしまいました。なので、転生という形にはなりますが私達の世界へ産まれ変わってみませんか?」
「もし転生するのならば、俺を助けてくれたお礼ということで少しならば特典を付けてやれないこともないぞい」
これは…!もしかして今噂の異世界転生!?しかもチート付き…
「是非お願いします!」
「少し貴女の居た世界とは違う点が有りますが、そこは私達が助けますので、ご安心を。」
もしかして、私凄くラッキー…?
「じゃあ、早速ですが…行ってらっしゃいませ」
「次は良い死に方を選ぶ事をお勧めする。まぁ…俺達が居る限り死なせはしないがの」
「…しろちゃん、くろくん、ありがとう」
「「…?」」
二匹は首を傾げ、顔を見合わせる
「その…{しろちゃん}{くろくん}というのは…?」
「え、名前ですよ?無いと不便でしょう?」
二匹は驚いた表情をするも、直ぐに笑顔へと変わる。
「ありがとう、私達に名付けてくれて。では、お返しに私達からも貴女に名を付けましょう。」
「俺達に名付けするなんて変わり者は居ないからのう。お主には特別な名を捧げてやろうぞ」
「「貴女は今、この瞬間からミラエルという名を「しろ」と「くろ」と名の神から授かりました。それにより、神の加護が与えられます。ミラエル、貴女に最大の神の加護を。さぁ、いってらっしゃい。これからの人生、大いに幸有らんことを」」
そうして私は暖かい光に包まれ、意識が途切れた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます