気付けば迷子。

え、あれ…どうしよう。ここは何処だろう。

取り敢えず辺りを見回すも、此処が何処か全然分からない。

恐らく何処かの公園だろうが、見たことのない景色に無意識的に私の身体は縮こまっていた。

どうしよう、どうしよう…。

恐怖で震える身体。都合が良すぎるとも思うが、いつもは邪険に扱っていたあの飼い主を今日は必死に呼び続けた。

ねぇ私は此処だよ。早く…早く見つけて、怖いよ。

誰か、誰か…私は必死にか細い声でみゃあみゃあと鳴き続けた。

そう思っていると一人の男性が此方へ近寄ってきた。

心配そうな顔をして此方を見詰めている

助けてくれるかもしれない、と思ったが全く知らない人物だ。

知らない人に着いて行ってはいけないよ、と言う飼い主の言葉を思い出した私は、小さく震える身体で必死に威嚇した

だがその男性は気にも留めない様子で此方へどんどんと近付いてくる。

どうしよう、助けて要…！

本気で怯える私にその男性は一言。

「怖くないよ、虐めたりしないから…大丈夫。」

飼い主とは違う、ゆっくりとした口調。

低い声で優しく「怖くないよ。大丈夫、大丈夫。」と何度も繰り返しながら、私の視線に合わせるように合わせるように身を屈めてそっと、ゆっくりと近付いてくる。

「よし、捕まえた」

男性の声と動きに気を取られ私は捕まってしまった。

逃げようと藻掻こうとするも、その男性の腕の中は暖かく、そして壊れ物を扱うかのように優しかった。

子猫の身体ではあり得ないだろう距離を必死で走って逃げた私は、抵抗する間もなくその優しい腕の中ですやすやと眠ってしまった

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