第17話 真希を見る目
次の日、少しずつ火事の全容が明らかになって来た。やはり、真人の学校の生徒が犠牲になっていた。一年生の三人の女子生徒だった。全体の死者数も現段階で三十六人に上っていた。その火事の規模の大きさに、全国版でも連日大々的に報道されていた。
「さすがにここまで続くとなんか怖いな」
石村が言った。
「ああ」
朝のホームルームの前、またいつもの三人は、真人の机の前に集まっていた。
「いったい何人死んでんだよ。うちの生徒」
木田が言った。
「・・・」
三人はそこで黙る。
「こんな死ぬことってないだろ。同じ学校の生徒が」
木田が言う。
「確かにな」
石村。
「偶然にしては多過ぎるな」
真人。
「しかも、ここ最近でだぜ」
自然と三人はそこで同時に真希の席を見ていた。真希はまだ登校していなかった。よくないことと分かっていながら、でも、三人は真希のことを意識せずにはいられなかった。
「まさか、神居がまたあそこにいたとか」
そして、そんな時、真人がなんとなしに、ちょっと冗談めかしてぼそりと言った。それはほんとになんてことない思いつきの冗談だった。
「おいっ」
すると、石村がそれにものすごく反応した。
「なんだよ」
真人があまりの勢いに驚いてビクッとなる。
「そんな噂があるんだよ」
石村が二人に顔を近づけ、声を潜めて言う。
「マジか」
木田が驚く。
「でも、それはただの噂だろ」
真人が言う。
「まあ、そうだけどな」
しかし、それは噂ではないようなそんな気が三人はした。多分、真希はあそこにいた。そのことの根拠はないが、しかし、そんな確信めいた考えが三人の頭の中を支配していた。そして、それは多分、クラスメイトたちも同様だった。
「・・・」
三人は再び黙る。だとすると・・。その先は、考えるのがなんとなくためらわれ、三人は三人とも目を伏せた。
クラス内に少しずつ、真希のことを不気味がるような空気が生まれていた。あまりに事件が重なり過ぎる。しかも、複数の人が死んでいた。同じ学校の。それは真希が来てから、急に起こり始めた。しかも、その事件の現場には真希がいたという。
「・・・」
みんなの真希を見る目が、何か恐ろしいものを見るものに変わっていた。
少しずつ、教室に流れていた不穏な空気がはっきりとした形になり始めていた。真希が教室に入って来ただけで、教室中の空気が恐ろしいほどに変わった。真希の一挙手一投足が、教室の空気をピリピリと刺激し、凍らせていく。授業中、教師が真希を当てただけで、微妙な空気が生徒たちの間で流れた。
「きゃっ」
そんな時、授業中、突然、女子生徒の叫ぶ声が教室に響いた。全員がその方を見る。それはただ、真希の机の横を通っただけの菜穂子が、ちょっと、真希の机に太腿をこすっただけのことだった。
「・・・」
しかし、その菜穂子の叫ぶ声の意味を、教室中の生徒はみんな理解していた。
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