第15話 目撃
「?」
次の日、真人が、登校して教室に入ると、いつもと違う何かを感じる。なんか空気がおかしい。真人は不思議に思いながら、いつものように自分の席に行き、鞄を置き座る。
「おいっ」
真人が席に座ったと思った瞬間、今日は部活の朝練で先に来ていた石村が自分の席から振り向き真人に声をかける。
「お前聞いたか」
「何をだよ」
「やっぱりか」
石村は、がっかりした表情をした。
「なんだよ」
真人が気になり石村に迫る。
「いたらしいんだよ」
「誰が」
そこで石村が真人に顔を近づける、
「真希ちゃんだよ」
「神居がどこにいたんだよ」
真人がいぶかしがる。
「現場だよ」
「なんの現場だよ」
「飛び降りだよ。この間、飛び降りただろ。うちの生徒二人が。屋上から」
「ああ」
「その現場にいたんだよ」
「は?なんで神居がいるんだよそんなとこに」
真人が驚く。
「それは知らねぇよ」
「て言うかなんでそんなこと知ってんだよ」
「もう、学校中の噂だよ」
やはり、今回も知らないのは真人だけだった。
「そうか・・、でも、なんで、そこに神居がいたって分かったんだ?」
素朴な疑問を真人が投げかける。深夜の学校など、そうそう人がいるはずがない。
「目撃者がいたんだよ」
「は?」
「見た奴がいたんだよ。そこに神居がいるのを」
「誰だよ」
「それは今のとこ分かってない。だけど、それがいたんだよ」
「・・・」
「やっぱり、昨日佐川に連れていかれたのはそういうことだったんだよ。俺の読み通りだったんだ」
石村がちょっと興奮気味に言う。
「でも、確かあれって深夜だろ。なんでそんな時間に神居が学校にいるんだよ」
「だからさ、そこだよ」
石村が訳知り顔で言う。
「うん」
真人が食い入るように石村を見る。
「そこが、謎なんだよ」
「なんだよ。それは分かってないのかよ」
真人はがっかりした顔をする。
「でもだ」
「でも?」
「まだあるんだ」
「ああ?」
「前に交通事故があっただろ」
「ああ、うちの生徒が死んだっていう?」
「そう、あの現場にもいたらしい」
「はあ?」
真人は訳が分からなかった。
「神居がか?」
「そう」
石村は断言口調で言う。
「ほんとかよ」
「それがほんとらしいんだ。それも目撃者がいたんだよ」
「マジかよ・・」
真人は言葉もなく、呆然とする。
「な?すごい話だろ」
石村が得意げに言った。
「それはでも、偶然じゃないのか。たまたまそこにいて・・」
「確かにその通りだ。だけど、交通事故の現場にたまたまいるって、かなりの確率だぞ」
「確かに・・」
真人は今まで十七年間生きてきて、交通事故の現場など見たこともない。それに深夜の学校にいたということは、たまたまでは説明ができない。しかもその日、飛び降り自殺が起こっている。
「・・・」
真人はその突然降って湧いたような話に、困惑せざるを得なかった。
ちょうど、そこに真希が登校して来て、教室に入って来た。その瞬間、教室が凍ったように静まり返った。クラスの同級生全員が真希を見る。そして、真希の動きに合わせてその視線が、真希を追いかけていく。
しかし、真希はまったく動じた様子もない。いつものように、自分の席に行くと、鞄を置き、席に座った。まったく無駄のない、いつもの動きだった。
「・・・」
真人と石村もその様子を黙って見つめていた。
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