第12話 気になる真人

 真人たちが麻美たちに襲撃されたその昼休みの終わる頃、気づくと真希は、やはり、いつものように午後の授業が始まる前にはちゃんと自分の席に戻っていた。真人は、麻美たちのことがあったこともあり、何か気になりそんな真希をさりげなく見つめた。

 真希はたんたんとしている。自分がクラスの中で浮いた存在になっていることは、気づいているだろう。しかし、そんなことを気にする素振りをまったく見せず、落ち着いた態度を保っている。

「・・・」

 本当にどんな子なんだろう。真人は気になり始めていた。それに、いったい真希はお昼休みいつもどこに行っているのだろうか。

「何見てんだよ」

 いつの間にか前の席の石村が振り向いていた。真人は慌てて、真希から視線を反らす。

「えっ、いや・・」

「真希ちゃんか?」

「いや・・」

「お前、ついに惚れたな」

 石村が真人を覗き込むように見る。

「ち、ちげぇよ」

「赤くなってるぞ」

「だから、ちげぇって」

「隠すな隠すな」

「隠してねぇよ。ただ麻美たちのこともあったし、気になって見てただけだよ」

「いいんだよ、いいんだよ。それが男子として健全な姿勢よ」

 だが、石村は真人の言い訳を全然聞こうとしない。

「だから、ちげぇって」

「いいんだ、いいんだ。真希ちゃんに惚れない男子はいない」

「勝手に納得するな」

「はははっ、いいだろ別に隠すなよ。俺とお前の仲だろ」

「あのなぁ」

 と怒りつつ、そこで真人は急に黙った。

「どうしたんだよ」

 石村が急に黙り込む真人に驚く。

「あいつ、なんか・・」

 真人が真希を見る。

「なんかなんだよ」

「ただ・・」

「なんだよ」

「いや、なんか、あいつちょっと違うなって」

「あん?」

「なんかこう・・」

「たしかに他の女子にはない何か純な美しさがあるよな」

「そうじゃなくてさ」

「なんだよ」

 石村はさらに怪訝そうに真人を見る。

「かわいさとかじゃなくて、その・・、なんていうか、うまく言葉にできないけど、なんか違うなって」

「そこが気になると」

「ああ?」

 真人が石村を見る。

「それが恋の始まりなんだよ」

「だからちげぇって、しつこいぞ」

「はははは」

 そこで石村は笑った。

「マジでちげぇって」

「自分で気づいてないだけなんだよ。恋心に」

 だが、真人がむきになればなるほど、その姿はからかわれていった。この辺真人は真面目過ぎた。

「マジで違うって、なんかあいつ陰りがあるっていうか・・、同い年の俺たちにはないなんか妙に大人びたとこないか」

「う~ん、確かにそういう雰囲気はあるかも」

 石村は真希を見た。

「そこがな・・」

 真人は何かが気になっていた。亜里沙に言われた、真希の意外な一面のこともある。

「そこがいいのか?」

 だが、真人の真面目な話にも石村はおどける。

「だからぁ~」

「授業始めるぞぉ~」

 そこに、物理の鴨志田が入ってきた。そこで石村は慌てて前を向き、話は終わった。そして、いつものけだるい午後の授業が始まった。

「・・・」

 だが、授業が始まってからも真人は一人、真希のことが気になっていた。

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