第9話 光る夜空
七月四日、午後九時四十八分、真人たちが住む南関東の夜空が突然パッ、パッ、と二回点滅するように光った。その時、外を歩いていた人たちは、何事かと夜空を見上げた。
「おっ」
「あっ」
そこで、人々は今まで見たこともない光景を見た。
「おいっ、昨日見たか」
「何をだよ」
登校するなり、石村がいつになく興奮気味に真人に話しかける。
「火球だよ。火球」
「かきゅう?」
真人はなんのことやらまったく分からない。
「そん時、俺ちょうど窓開けてたんだよ。それでパッパッって光ったんだよ。でも俺外見なかったんだよなぁ。チクショウ」
石村は心底悔しそうに言う。
「だから、かきゅうってなんだよ」
「巨大な流れ星さ」
そこに木田が来て言った。
「なんだよ。そんな話か」
「なんだよじゃねぇよ。お前、ネットの動画見なかったのか、滅茶苦茶すげぇんだぞ」
石村が興奮して言う。
「確かにすごかったな。もう花火みたいにパア~っと光ってな」
木田も続く。
「そうそう、まさに火の玉って感じで。滅茶苦茶デカかったんだぞ」
「へぇ~」
しかし、真人は相変わらずあまり関心がない。
「しかも何十年に一回とかいう大きさらしい。この町で見れたのは観測史上初らしいぜ」
木田がどこで調べたのか訳知り顔で言う。
「そうだよ。流れ星だって早々見れるもんじゃねぇんだぞ。それが、火球だぞ火球。火の玉みたいにでかい流れ星だぞ」
石村は、このすごさを何とか真人に分からせようとさらに声を大きくする。
「お前が、星に興味があるとはね」
しかし、真人は意外という顔でそんな石村を見るだけだった。
「いや、そういう問題か?誰だって見たいだろあれは」
石村が言い返す。
「そんなもんかね」
真人はやはりあまり関心がない。
「あっ」
「どうしたんだよ」
そこで石村がいきなり大きな声を出した。真人は驚く。
「ああ、火球に真希ちゃんとの仲をお願いすれば、絶対うまくいっていたのにぃ。クッソ~」
石村が滅茶苦茶悔しそうに顔面に力を籠める。
「結局、お前はいつもそこに辿り着くんだな」
真人は呆れる。
「でも、火球の出た年は災厄の年だっていう説もあるみたいだぜ」
木田が言った。
「災厄?」
真人は木田を見る。
「ああ、凶兆だって昔の人は考えていたらしい」
「凶兆ねぇ・・」
しかし、真人は火球以上にその話に興味を持たなかった。
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