第2話 お名前は?

佐和山さわやまさーん、荷物は以上ですか?」

「はい、ありがとうございました」


 手早く荷物を運び込んだ引っ越し業者が引き上げていくや、座敷わらしが柱の影から走り寄ってきた。


「クロエちゃんの荷物はこれで全部?」

「基本的な家具は既に揃っているからね。もともとシーズンオフの服とかはトランクルームに預けているし」


── ここに住むなら収納が多いからトランクルームは解約してもいいな。



「それよりも、どうして隠れていたの?一般の人には見えないんでしょう?」

「うん。でも稀に見えちゃう人がいるから」

「そうなんだ。でも引っ越し業者の人に見られたところで家族に思われるだけだよ」


「そうかな!家族に見えるかな!」

 座敷わらしのテンションが高い。家族というのがよほど嬉しいらしい。


「ところでお名前は?」

「座敷わらし!」

「…秋田犬のハチとか猫のタマとかあるじゃん?」

「でもずっと座敷わらしって呼ばれてきたよ」

 座敷わらしが困り顔だ。

「大じいちゃんも?」

「うん」

「それは呼びづらいな…ワッシーは?」

「やだ!」


 断られると思ってたよ。咄嗟に思いついたのはザッシーかワッシーか…


「…梅は?」

「梅?」

「着物の柄」

 座敷わらしが自分の着物を見下ろして、顔を上げた。

「いいと思う!」


「気に入った?」

「うん!」

「じゃあ今日から梅って呼ぶよ」

「うん」


仲良くやっていけそうだ。

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