第14話・二十八夜目の昼〈式神遣い〉
常坂黄泉。
確か、協会と呼ばれる術師が在籍する組織からやって来た、桐子さんと同じ派遣の術師……。
現在では、この総合病院を中心に活動を行っているらしく、彼女の命令によって術師が活動しているらしい。
因みに協会と言う組織には階級が存在し、この女性はかなり偉い人物だとか。
しかし、そんな人が俺に用事とは一体何なんだろうか。
「何か用……すか?」
俺は敬語を使って話を伺う事にした。
彼女は人形の様な乾いた笑みを俺に浮かべる。
美しい顔ではあるが、それはまるで模造品の様で、気味が悪く思える。
「はい。貴方にお願いがあって来ました」
お願い?
それは俺に出来る事なのだろうか。
取り合えず話くらいは聞いてみる事にする。
「私が都市内に張り巡らした式神から救難信号が出ました」
「救難信号?」
式神……と言う名前からして、この人の術理は式神を従える能力なのだろう。
そして救難信号、と言う事は、この人が扱う式神は生存者を探す事に長けていて、人を発見すると彼女に分かる様になっている、と言ったところか。
桐子さんが術理の説明をしていた時、式神と感覚共有をする事が出来る、なんて話を聞いた事がある。
しかしその代わり、式神の能力が低くなったり、遠距離になればなる程に感覚共有が鈍くなったりするらしい。
彼女の口ぶりからして都市内に複数の式神で生存者を探索させ、感覚を共有させる事でその式神と生存者がどの位置に居るのかを察する事が出来るのは並の術師程度じゃ出来ない所業だ。
「……つまり、そのSOSを発した場所に向かって、生存者を救えって話っすか?」
「そうなります。病院周囲を警護する術師に人員を割いており、また食料や、同じ様に救難信号を受けて遠征を行っている術師が居る為に、術師不足なのです。そんな時、桐子のお弟子が病院に居ると聞き、こうして依頼を承諾してもらうよう、私が来ました」
成程。
そりゃあ、術師が不足になるのも仕方が無い。
正規の術師……協会から派遣されている術師は、たった二十八名しか居ないらしいからな。
百物語が展開されているこの都市内に外部から侵入出来る術師は一夜に一名のみとルールが定められている。
だから、術師不足になるのは仕方が無い事だった。
「その話ですけど、桐子さんに聞いてみない限りはどうとも言えないっす」
俺を頼りにしてくれるのは嬉しいが。
何をするにも、まず桐子さんの判断が必要だった。
俺と言う術師は新参も良い所。
自分の実力ですら良く分かっていない。
だから俺を良く知る桐子さんが良しと言わなければどうにもならない。
「そうですか、では、桐子を呼びましょう」
そうして、常坂さんはアナウンスを使って桐子さんを呼び出して事情を説明した。
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