第29話


 ギルドを後にしたエクレールは気になっていた店を巡っていた。

 暇つぶしに下界を眺めることはあっても、下界に下りる機会など滅多になかったため、色々な店がエクレールの興味を引く。中でもお菓子やパンといった食べ物の店が多いのは龍の食欲故なのか。

 とはいえ神なので食事を取らずとも問題無いのだが、美味しい物を食べる事は神界でできた数少ない娯楽の1つなのだ。


 目に留まる全て。とは時間が許さないのでどれにしようか、と吟味しながらいくつかの店で甘いものばかりを買っていくエクレール。


 古本屋や武具屋なんかも目に留まってはいたのだが、甘いものにテンションが上がりいつのまにか「今日のところは食べ物系の店だけ!他はまた次!」と日が傾き始めるまで店を回るのだった。


 帰ったら自室でスイーツパーティー!

 と浮かれながら領主の館への帰り道。

 入った店の店員にすすめられた店を訪ねたりしているうちに、かなり館から離れてしまったようだ。

 だがオルグが広いとはいえ所詮は1つの街の中。屋根伝いにでも飛んでいけばすぐだろうと軽く跳躍し屋根にふわりと着地した瞬間、夕暮れの空にそれは突如として現れた。


 それはエクレールが誰よりもよく知る最強の生物

 龍だった。

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