第28話
エクレールと蒼空の鷹の面々はすぐに支度を済ませて帰路につく。
それから何事も問題は起こらず2時間ほどが経ち、一行はオルグへと到着したのだった。
「「「「「ついた!」」」」」
皆オルグについただけで大喜びだ。まぁ、つい数時間前に命の危機に直面してたのだからしょうがないというものだ。
「喜ぶのはいいけど並ばないと入れないよ?」
「あっ!…はい、そうでしたね…」
私の言葉に我を取り戻したのか周りの視線に気づき皆少し居づらそうだ。
ちゃちゃっと街に入るに越したことはないので、このまま最後尾へと並ぶ。
帰ってこれたのが嬉しいのは分かるけど場所を考えなよ?とか周りの人の事も考えな?などと、説教じみた話をしているとすぐに私達の番がくる。
「蒼空の鷹の皆さんですね。お疲れさまでした。ギルドカードをお願いします。っとあれ?お早いお戻りですね?エクレールさん」
対応してくれたのは行きのときと同じ青年だ。
「まぁ色々あってね。……ってあれ?名前教えたっけ?」
「あっ…ギルドカードを確認した際に見たのを覚えていたので。…あと、その…自分はハルトって言います!」
そうか。よくよく考えるとギルドカード見せるのって個人情報開示してるみたいだな。まぁだからこそ身分証明になるんだよな。なんて思いつつ適当に返しておく。
「なるほどね、よろしくハルト。あとはい。ギルドカード」
「はい。確認しました!冒険お疲れさまです!」
そう言うとハルトは綺麗に敬礼をしてくれる。私は適当に手を振ると先に終えて待っていた蒼空の鷹の方へと向かうとなにやら話しているようだ。
「薄々気づいてたけどエクレールさんってば結構な人たらし?」
「ハルトさんのあの顔見たユラ?あれは恋してるね…」
「仕方ねぇよ。顔もスタイルもめちゃめちゃ整ってて、性格も良くて慈悲深い。その上超絶強いときた。こんなの惚れねぇ方がおかしいまである。」
「それだとカートも惚れてるみたいだな?」
「バ、バカ言うんじゃねぇよルド!エ、エクレールさんは命の恩人でそういうんじゃ!」
「はいはい。そういうことにしといてやるよ」
「お前らそのへんにしとけよ」
私のことについて話していたようだが、私の接近にいち早く気づいていたライルが止める。まぁ、私の聴力だと全部聞こえてたから意味ないんだけどね。ここはカートのためにも聞かなかった事にしてあげよう。
「待たせたね」
「いえ、そういえばこのあとはどうするんです?僕らはこのままギルドに向かうつもりですが…」
「私もそのつもりだよ。クエストの報告しないとね」
「では行きましょうか。ほらお前ら置いてくぞ?」
ライル以外の4人は恋バナに花を咲かせていたようだが私とライルが先行すると慌ててついてくる。
そして今朝ぶりのギルドへ到着する。
ギルドに入ると明らかに朝よりも人が少ない。皆クエストを受けていったのだろう。
とりあえず蒼空の鷹と一緒に今朝と同じ受付嬢のところへ行く。
入ってきた時に既に気づいていたのか向こうから声をかけてきてくれた
「あら?どうかされましたか?エクレールさん。それに蒼空の鷹のみなさんもご一緒に。」
「とりあえず完了報告をお願いします。僕らのと、あとエクレールさんもですよね?」
ライルがそう言いながら自分たちの分の討伐証明部位を受付へおく。
「うん。これお願い」
エクレールもそれに倣って討伐証明部位をまとめた布袋を受付におく。
それを見た受付嬢は一瞬ポカンとした表情を浮かべた。
「も、もう討伐してきたんですか…?ここから西の森まで行って帰って来るだけでも、もう少し時間がかかると思うんですが…」
受付嬢はかなり驚いているようで口の端が引き攣っている。
「走ればそんなかからないからね。帰りも一人だったらもう3時間は早くできたかな〜」
なんて冗談を言うと
「私達お邪魔でした!?」
すかさずユラがツッコミを入れてくれる。
「いやいや、冗談だよ。解体手伝ってもらって感謝してる。まぁ3時間早くできたってのは本当だけど」
なんてやり取りをしてる間に我に返ったのか受付嬢は討伐証明部位の確認をしていた。
「なにはともあれ、とりあえず証明は取れたのでクエスト完了です!こちらが報酬です!」
さすが冒険者の街の受付嬢というべきか仕事は早いようだ。私は報酬を受け取るとついでとばかりにフォレストファングのことを報告する。
「そういえば倒したフォレストウルフの中に一回り大きいのがいたんだよね。フォレストファングっていうんだっけ?」
「え!フォレストファングと戦ったんですか!?いやまあアルトさんを倒したエクレールさんなら倒せるんでしょうけど…西の森でフォレストファングの発生は初めてですね…」
どうやらフォレストファングがあの森に現れるのは初めてらしい。そういうのはあんまり良い予感がしないな。
「それについて何だけど、あの森のモンスターの分布が全体的に手前寄りになっていた気がする。それにモンスターが少し攻撃的だったんだよね。まるで何かに怯える感じで」
とユラが補足を入れる。それを聞いて受付嬢は少し考えると、
「そうですか…なにかあるといけないので、高ランクのパーティーに調査を依頼するように上に交渉してみます。一応ですがそのフォレストファングの魔石はありますか?」
と聞いてきた。
魔石はあるが何に使うのだろうか?
「あるけど魔石で何か分かるの?」
「魔石はモンスターの情報の塊なので、専門の人が解析すると色んなことが分かるんです。もちろんその魔石は適正な値段で買い取らせて頂きます!」
あの石ころから情報が得られるのか。魔道具を動かすのに使うのは知っていたが、それは知らなかった。
「そうなんだ。私はそれでいいけど、いいよね?」
「もちろんです!そもそも私達は助けられた身で、戦闘にも加わってませんから素材をどうするかはエクレールさんの自由ですから!」
エコーがそう答えると他の皆も頷いている。
「ってことだからはい、これ」
エクレールは拳程の魔石を取り出す。
「はい。確かに。一応規則なので本物かどうか確認してきますね」
受付嬢はそれを受け取ると少々失礼しますと行って奥へと引っ込んでいった。
貰った報酬を確認していると受付嬢が戻ってきた。
「おまたせしました!確かにフォレストファングのもので間違いないですね。こちら代金の金貨10枚です。」
今確認していた報酬が銀貨15枚なのでとんでもなく高値がついたようだ。
「随分と高いんだね?」
「上位種の魔石はとても貴重なので値段が高くなるんです。それに今回は西の森で初めてのフォレストファングの確認なので、少し色をつけせてもらいました!」
「なるほどね。他なんか用ってあったりする?」
「いや、これで終わりだと思うぜ?」
「そうだな」
カートとルドがそう言う。
「それでは西の森の調査結果は皆さんにもお伝えしますね。では皆さんお疲れさまでした!」
そうして受付を後にすると蒼空の鷹の皆に惜しまれながらも、感謝を告げてエクレールはギルドから出るのであった。
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