第25話
「君たち、生きてる?」
エクレールは振り返りながらそう冒険者達に声をかける。
「え、あ、ああ。」
剣士の男がなんとか答える。絶体絶命の中、急に魔言により動きを止められ、目の前で虐殺の言っても過言ではない戦闘を見せられたのだから、咄嗟に返事ができただけ大したものだ。
「かなりギリギリだったみたいだね。」
全員ボロボロだが中でも魔法使いっぽい子が酷い。足を噛まれたのを強引に引き剥がしたのか単に噛み切られたのか分からないが骨が見えてしまっている。それ自体致命傷とはなり経ないが、このままでは失血死してしまうだろう。エクレールが声をかけようとすると、
「あ、あの!エコーを助けてくれませんか?私達にできることなら何でもします!だから…」
魔法使いの子を助けてと盗賊の子に言われる。
「「「お願いします!!!」」」
他の3人にも頭を下げられてしまった。最初から見捨てるつもりはないが、こうお願いされては手を抜けないというものだ。
「うん。任された!」
エクレールはそう言うとエコーと呼ばれた子の所へ近づき、患部に手を近づける。
「
エクレールがそう唱えると周囲に目視できるほどの魔力が渦巻き、エコーを包み込む。それだけではなく他の4人も同様に魔力に包まれていく。
5人が魔力に包まれ数秒、包んでいた魔力は霧散し消えてしまう。
5人は何事かと戸惑っていると自分の体の傷や疲れが完全に回復している事に気づく。
エコーの足もまるで何もなかったかのように元通りだ。
「…すごい」
エコーがそう呟くと、他の四人がエコーに駆け寄る。
「良かったな!」
「俺たちの傷もこの通りだ!」
「こんな魔法見たことない…」
「みんな、喜ぶのもそうだが、それより先にやることがあるだろう?」
エクレールが微笑ましげにそれを見ていると、5人がこちらに向き直り、
「「「「「ありがとうございます!!」」」」」
そう言って頭を深々と下げる。
「いいよ、助けたなら最後まで面倒見るのが筋ってもんだからね。それになんでもしてくれるんでしょ?」
エクレールがニヤリと言うと盗賊の子が肩をビクッとさせる。
「な、なんでもとは言ったけど……できることでお願いします!!」
と早口で言い切る。
それを見ていた4人も僕らにできることなら、と言ってきた。
「じゃあ、この狼の死体集めてくるから解体お願いできる?こういうのあんまりなれてなくてさ」
それを聞いた5人は顔を見合わせる。
その後槍使いの男がこう尋ねる。
「それでいいんですか?もっとこう、お金とかマジックアイテムとかあるでしょう?かといって僕らにその辺を期待されても困るというのが本音なんですが…」
うんうんと他の4人もそう言いたげだ。
「お金に関してはこれとといって困ってないしマジックアイテムの類はあったら便利かもしれないけど、自分の魔法で足りてるしね。それよりもこの数を解体する働き手の方が今は必要かな。もちろん働いてもらった分報酬も出すよ。まぁ疲れたからやってほしいってのが本音だけどね」
エクレールはそう言って舌をペロッと出す。
エクレールには領主から貰った光金貨があるし、魔法を極めているのでイメージ出来ることは大体魔法で再現できてしまう。故にマジックアイテムはあったら便利かも?位の認識でしかない。
なによりさっき使った
しかしながら当然この凄まじい能力を使うにはそれ相応に大量の神気を必要とする。
だが現在エクレールは神気を封印されているため、その大量の神気を魔力で無理やり代用したのだ。その結果、底なしのエクレールの魔力がゴッソリと持っていかれ、一気に魔力を失った代償として気怠さに襲われているのだ。
それでもまだ半分以上魔力が残っているので気怠いだけで済んでいるのだが。
そんな事情を蒼空の鷹の面々が知るわけもなく、なんて謙虚なんだ…と勝手に解釈しているようだ。事情を詳しく話して解釈を改めさせる程のことでもないので放っておくけど。
「でもこのままここで解体するのは危なくないか?この血の匂いでまた他のモンスターがよってくるぜ?」
「かといってこの量のフォレストウルフをどうやって他の場所に移すのよ?フォレストファングもいるのよ?見張りながらやるしかないでしょ」
蒼空の鷹は早速解体をどうするか話し始めたようだが場所と量が問題のようだ。
「移動に関しては問題ないよ。こうしておけばカンタンに運べるからね」
エクレールが空間魔法でフォレストウルフを出し入れすると5人は黙ってしまう。エクレールはどうかした?といった表情で首を傾げる。少ししてみなが口を開く。
「…いやもう凄すぎて…ホントに…」
「こんな凄い魔法使いがマーリン様以外にいるんだな…」
「いや剣も使ってたぞ。魔法剣士だ。」
「洗練された剣技に無詠唱の5色の魔法、私達全員を一瞬で回復させる回復魔法に空間魔法まで…」
「もしかして私達、とんでもない人に助けてもらっちゃった?」
皆ふと冷静になって考えた結果に驚いているようだ。確かに神界でもここまで器用になんでもこなす神はほとんど存在しない。大抵皆なにかひとつの事に特化しているのがきほんだ。神界でも昔にこんな反応をされた覚えがある。
「そんな褒めても何も出ないよ?さあ、早めに死体回収して場所を移そうか!」
そう言って手を叩くと、空間魔法により周囲の死体がフッと消える。
その場にあった死体を一瞬にして回収し終わると蒼空の鷹が逃げてきた方向へと歩いていく。
「「「「「あ、ちょっとまってくださいよ!」」」」」
それを慌てて5人は追いかけていくのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます