第23話


「今回のクエストも楽勝だったな!」


「そんな調子に乗ってると痛い目見るよ?」


「2人共ー!置いてくよー?」


 5人の冒険者達はクエストを終え帰路についていた。この5人はオルグで活動しているDランクパーティー蒼空の鷹だ。

 タンク、剣士、槍使い、盗賊、魔法使いと少し前衛寄りのパーティー構成だ。


 カサッ


「止まって!」


 クエストをクリアして上機嫌で帰る中、盗賊が茂みの物音にいち早く気づき皆を牽制する。

 すると皆1人前と呼ばれるDランク冒険者なだけあってすぐに警戒態勢に入る。


 すぐに戦闘ができるようにポジションを取りながら音のした方を見ていると、フォレストウルフが姿を表す。

 一匹が姿を表すと、周りから次々とフォレストウルフが現れる。見えるだけで6匹程だ。


「囲まれてるな」

「これちょっとまずいんじゃない?」

「これくらいの数ならどうとでもなるだろう」


 そう言って剣士がフォレストウルフに斬りかかる。

 剣士と盗賊、魔法使いとタンクと槍使いの二組に別れお互いに背を預ける形で戦い始める。

 一匹、また一匹と倒していくが何故か数が減らない。

「どんだけいんだよこれ!」

「とりあえず退こう!南側からは援軍が来てない!そこを一気に抜けるぞ!」


 タンクの男がそう指示をだし、南側へ一気に畳み掛ける。

 幸い被害らしき被害もなく包囲を抜け出すことに成功したが、フォレストウルフの群れはそう簡単に逃してはくれない。

 追ってくるフォレストウルフを捌きながら進むが数が多く、ついには魔法使いの女の足に噛みつかれてしまう。

なんとか振り払うが仲間を置いていくわけにも行かず、魔法使いの女を守る形で戦う事となり状況は悪くなる一方だ。


 既に敵の包囲は完了している。かれこれ15匹ほど倒しているのだが数が減る気配もない。


「みんな私はいいから逃げて!」

「そんなわけにはいかないんだわ!」

「そうだぜ。我らが姫さん!」

「死ぬときはみんな一緒に、だよ」

「皆、気合い入れろよ!」


 皆、士気は高いが士気が高くとも状況は変わらず。

 じわじわと包囲が縮まっていき死が近づいてくる。


 もう後がない。


 ここぞとフォレストウルフが一斉に飛びかかってくる。

 全員が死を覚悟したその瞬間、どこからか声が聞こえる。


「伏せろ!」


 5人はその言葉が聞こえ、意味を理解するより早くその場に身を伏せていた。


 5人が伏せた刹那、ナニカが頭上を通り抜けていった。

 次の瞬間、飛びかかってきていたフォレストウルフが真っ二つに裂ける。

 そこからは見ていたが、あまり良くわからなかった。


 純白を纏う女の人が漆黒の刃を振るい、そのたびに色とりどりの光が宙を舞っていたことは覚えている。


 自分たちを壊滅寸前まで追い詰めたフォレストウルフの群れは、瞬く間に数を減らしていく。それは戦闘ではなく、もはや蹂躪だ。


 フォレストウルフの死体が20を超えたあたりで一際体の大きな個体が現れる。

 フォレストウルフの上位種であるフォレストファングだ。多数のフォレストウルフを統率する知能と優れた身体能力が特徴だ。

 上位種や希少種はランクが1つ上となるので、フォレストファングはCランクのモンスターとなる。


 そんな相手を前に純白の女性は少し笑っているように見えた。


 少し睨みあった後、純白の女性の手元が揺らいだ。

 次の瞬間、残りのフォレストウルフとフォレストファングの首が落ちる。


 全ての敵を仕留め、刃を収める姿はとても神々しく見えた。


 この5人はこの日の出来事を未来永劫忘れることが無かったという。

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