第21話
「皆様、夕食の準備が整いました」
「わかった。じゃあ今日はここまでにしようか。2人共よく頑張ったね!」
龍神式の特訓が始まってから数時間。
ようやく訪れた終わりにグランとシエラは歓喜した。
「やっと…終わった…」
「私達強くなれたのでしょうか…」
エクレールの魔法によって体と魔力に問題は無いものの、精神的なダメージはまだ残っているようだ。
途中から痛覚をかなり鈍らせてみたのだが、それがなければ恐らく廃人となってしまっていただろう。
そんな過酷な特訓は確かに2人の力を格段に上げていた。
「とりあえず実戦経験も積めたし、魔力量も結構増えたみたいだから、次からはもっと技術的なことを教えるよ」
「「…はーい…」」
こうして、家庭教師1日目は終了したのだった。
次の日
朝早く起きたエクレールはハースに見送られ、冒険者ギルドへ向かっていた。
「さて、何から始めたものか」
特に迷うこともなく冒険者ギルドに着いたが、なにから始めればいいのかが分からない。
「確か受付の人がクエストを受けたいときは声かけてって言ってたっけ」
エクレールは昨日のことを思い出す。
ギルドカードを受け取る時に確かそんなことを言っていた。
なので並んでいる列を避けて受付の方へ向かうと
「ねぇちゃん見ねぇ顔だな?今日は何しに来たんだ?」
ガタイのいい強面の男から話しかけられた。
「クエストを受けに来たの。問題ある?」
となるべく穏便に済ませようと普通に返す。なお、顔には多少不機嫌さが見て取れるが。
「そう嫌な顔しなくたっていいだろ?それに冒険者がクエスト受けるのになんの問題もねぇ。ただ依頼書を持ってねぇみたいだから気になっただけだ。」
確かに、クエストの依頼書のある掲示板には目もくれず、列にも並ばず受付直行は不自然だっただろうか。
「そうか。実は冒険者になったばかりでね。昨日受付の人がオススメのやつを選んでくれるって言ってたから聞きに行こうと思ったんだ。」
「新人か!なら俺がいくつか見繕ってやろうか?ランクはFだよな?」
「いや、Dだね。ちょっと色々あって」
ハザードの名前を出すと面倒だと思ったので適当に誤魔化す。
「新人でD?…ってことはアンタがアルト教官を倒したっていう
「あー、そんな有名なの?」
「いや、まだそこまででもないな。だが情報屋の間では既に周知の事実だな。ハザード様の推薦で元ランクA冒険者のアルトを倒して、ランクDから冒険者を始めたとんでもないやつがいるってな」
いや全部バレてる。まぁバレたからどうこうなる訳ではないのだが。
「そ、そうなんだ。じゃあ私は行っていいかな?」
もういいだろ?と目で訴えながら問いかける。すると男はこれ以上止めても良いことはないと察したのか
「ああ、引き止めて悪かったな。あ、そうそう。俺はエッグ。なにか困ったことがあればいつでも相談にのるからよ!」
と言い残し掲示板の方へ歩いていった。
エクレールはそういえば名乗ってないなと思いながらも受付へと歩を進める。
受付の端からなかを覗くとちょうど昨日対応してくれた受付嬢と目が合う。
「あ!エクレールさん!今日はクエストを受けに来たんですか?」
と駆け寄ってきた。
「うん。昨日こえかけてくれって言われたからきたよ。」
「では、アルトさんに勝ったエクレールさんならCランクのクエストでも問題ないとは思いますけど、初めてなのでDランクのクエストから見繕ってきますので少し待っていてくださいね!」
そうして5分程その場で待っていると受付嬢が戻ってくる。
「おまたせしました!比較的簡単で割のいいものを選んできたのでみてください!」
そう言われて渡された依頼書は3枚。
フォレストウルフ5体の討伐
コボルト5体の討伐
キャタピラー3体の討伐
の3枚だ。
フォレストウルフは名前の通り森に住む狼型のモンスターで単体ではそこまで強くないが、大抵10以上の個体が群れているため危険度が上がりDランクだという。
コボルトは二足歩行の犬といった感じのモンスターだ。モンスターとしてよく知られるゴブリンのように群れで行動し、人の行動を真似たりして武器や防具を身に着けていることがあるらしい。
キャタピラーは大きな芋虫のようなモンスターだ。動きは遅いがキャタピラーの吐く粘性の強い糸に絡め取られ、動けなくなった所を襲うらしい。あと体の表面が弱毒性の粘液が薄く覆っており、攻撃が通りにくいのだとか。
どれも聞けば厄介そうな相手だがエクレールからしてみればどれも対して変わらんというのが感想だ。
「これ全部ってのは?」
「問題ないですけど…時間的に今日1日だと少し厳しいと思いますよ?」
「そこはこっちでなんとかするよ」
なんたってエクレールには探知魔法や龍種故の強靭な身体能力がある。片っ端から探知して見つけたそばから狩って行けばなんとかなるだろうという考えだ。
「…分かりました。ではこの3つのクエストを受注しますね。場所は全てオルグの少し西にある森です。ではいってらっしゃい!」
そう笑顔で送り出され、エクレールはギルドをあとにするのだった。
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