第18話

 領主の館へと近づくと門前に馬車が停まっている。盾に龍が描かれたような金色の紋章が印象的だ。


「盾と龍の紋章か。なにか関わりがあるのかな?」


「あれはこの国、親龍王国ラザールの国章です。」


 そういえばこの国の名前を初めて聞いた。


「かつて魔王を倒した勇者様御一行の1人、聖騎士ウォーロック様が共に戦った星龍セイルズ様と共に築いたのがこの国なんです。なので聖騎士の象徴である盾と、星龍であるセイルズ様を象徴する龍の紋章が描かれているんです」


「よく勉強しておりますな。さすがメルセン家のメイドと言ったところでしょうか」


 後ろから急に老人の声がする。


「これはマーリン様、御健勝のようで何よりでございます」



 エクレールは最初から気づいており、ハースは何度も同じような事をされているので慣れていた。


「なんじゃ、面白くないのぉ 」


 マーリンと呼ばれた老人は無下にされ不貞腐れている。

 そんな様子とは裏腹にこの老人が秘めている魔力は相当な物だ。


「ハース、この人は?」


「この国の筆頭宮廷魔道士マーリン・フォン・アストハイム様です。」


「マーリンじゃ、よろしくの。ところでお嬢ちゃんこそ何者だい?只者じゃないってのは分かるんじゃが」


 国の筆頭宮廷魔道士ともなれば相当高い立場だ。そしてその地位につくためには確固たる力が必要となるわけだからエクレールが感じた魔力は間違いでは無い。


「こちら冒険者のエクレール様です。今日から魔法と戦闘の家庭教師としてご指導頂きます」


「冒険者のエクレールだ。よろしく」


「冒険者か!異名はなんていうんだ?」


「異名?今日冒険者登録したばかりだからそんな大層なものは無いよ」


「なんと!ではこれからに期待というわけじゃな!ホッホッホッ」


「ま、ぼちぼち期待しててよ」


 そんなやり取りをしながら館の方へと歩を進める。


「それでマーリンはなんでここに?」


「ちとハザード殿に用事があっての」


「ならこんなところで私達の相手なんてしてていいの?」


「いいんじゃよわしは付き添いみたいなもんじゃからな」


 とマーリンがいうと、タイミングよく誰かが駆け寄ってくる。


「マーリン殿!こんなところにいたんですね!!さあ、行きますよ!!!」


「げっ、カルラ殿!……少し迷子になっただけじゃよ!で、ではまた今度じゃ!」


 マーリンはそういうとカルラと呼ばれた金髪の騎士に歩み寄っていく。


「うちのジイさんの相手させてすまないな。私は国王直属の星龍騎士団副団長のカルラ・アイザックだ。よろしく頼む」


「私は冒険者のエクレール。よろしくね」


 カルラはうんと頷くとマーリンと共に館の中へ入っていった。


「そういえば、授業ってどこでやるの?」


「魔法の授業は騎士団の修練場の一角を使ってやることが多いので本日もそちらに集まると思いますよ」


「集まる?というとシエラ一人じゃないの?」


「それは行ってみれば分かることです」


 それ以上はきいても答えてくれなそうなので、エクレールは騎士団の修練場の方へと歩いていくのだった






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