第17話

 アルトはエクレール達にの合格を告げギルドの方へ去っていった。


「エクレール様、無事合格できたようで何よりです」


 アルトが立ち去るのとほぼ同時にハースが駆け寄ってきた。


「さぁ、受付でギルドカードを受け取りましょう。これで冒険者ですね!」


「そうだね。」


 エクレールとハースは早速ギルドカードを受け取りに行こうとする。

 すると


「ちょっとまってくれ!」


 ゾイルがエクレールを呼び止める。エクレールは何?といった様子で振り向き首を傾げる。


「呼び止めて悪い。聞いてたか分からんが俺はゾイル。さっきの技について少し聞きたくてな」


「さっきの技?」


「上段からの切り下ろしを地面スレスレで止めて、そこから切り上げるアレだよ」


「あー燕返しのことね。極めれば、回避不能の剣って言われるほどの速度に達するって言われてるけど、私は思いつきでやっただけだからね。実際剣で受けられてるしね」

とはいうもののエクレールが本当にアルトを倒すつもりなら言葉の通り回避不能の技にはなるだろうが。


「燕返しって言うのか……って思いつきであの技の鋭さなのか!?」


「そうだよ?何度か燕返しを受けた事はあるけど、私が使うのは今回が初めてだからね。詳しく教えてあげたりはできないよ」


「な!?そこをなんとかおねがいできないか?」


「うーん。とりあえず無理かな。割と忙しいからね。機会があればちょこっと相手する位ならしてあげるかも」


 そういいながら手を振ると、エクレールはハースを連れ受付の方へ去っていった。


「良かったのですか?」


「家庭教師引き受けてなきゃ見てやったかもね。タイミングが悪かったね」


 受付まで戻ってくると、来たときよりはだいぶ人が減っている。皆クエストを受けて出発したということだろう。


「あっエクレールさんですね?こっちです」


 受付に近づくと先程ハースの対応をしていた女性に呼ばれる。


「何事もなく合格とアルトさんから聞いてます。おめでとうございます!これで貴方は冒険者です!」


 受付嬢は満面の笑みでそう言う。


「ありがと、それでギルドカードってのは?」


「はい!こちらですね。」


 そういって銅色のカードを渡される


「これが…」


「それが貴方を冒険者であることを証明する物です。どの国へ赴いても身分証として使えます。アーティファクトで作られているので、偽造はできませんね。もし仮に偽造するようなことがあると重い罪になるのでくれぐれもやめてくださいね。」


「分かった」


「ギルドカードにはどのクエストをどれだけクリアしたかや、どこの街に入ったかなど重要な情報が詰まっているので無くさない様にお願いしますね。もし無くしたりすると再発行するのに面倒な手続きをしなければなりませんし、時間もかかるので、重ねて無くさない様にお願いします」


「では冒険者の制度についての説明ですね。基本クエストは自分のランクより1つ上の物まで受けることができます。エクレールさんはDランクなので1つ上のCランクのクエストまで受けることができます。同時に受けることができるクエストに制限はありませんが、クエスト失敗時には違約金を払っていただくので、自分ができる範囲での受注をオススメします。」


「要は失敗しなければ何個でも受けていいってこと?」


「そういうことです。それと2年間全くクエストを受けずにいると、ギルドカードは無効化されてしまうので気をつけて下さい」


「忙しくてもたまに顔出せってことね。分かったよ」


「主な注意事項はこんな感じですね。別途分からないことがあったらいつでも聞いてくださいね。」


「じゃあ早速なんだけど、どの国でも身分証になるって言ってたけど、ギルドカード持ってればどの国にもいけるってこと?」


「そうですね。冒険者ギルドは世界各国に展開しているので基本どの国へ行っても冒険者として活動することができます。一部冒険者ギルドがない国もありますが、その国でも身分を証明する物としては有効だと思いますよ」


「なるほど。分かった、ありがとね」


「いえ、今日はこのままクエストを受けていきますか?でしたらオススメのものをいくつか選んできますが」


「いや、今日はいいや。午後から他の予定があるんだよね。」


「そうでしたか。ではクエストを受けたいときはお声がけくださいね」


「うん、ありがと」


 受付嬢との話を終えると時間はもうすぐ昼前といった時間だ。


「じゃあ帰ろうか。授業しなきゃだし」


「そうですね、街の屋台で何か買って帰りましょうか」


 そうしてエクレールとハースは街を散策しながら領主の館へ帰るのだった。

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