第15話

 ハースに連れられ訓練所に来たエクレール。

 そこは闘技場みたいな感じで、グラウンドの外に席が並んでいる。


 観客席側から出てきたエクレール達はグラウンドの中央の人影に目を向ける。

 なにやら試験官風のおっさんと2人の少年と1人の少女が話をしている。


「どうやらあれみたいですね。少し急ぎましょう」


 観客席からグラウンドに出る場所があったのでそこから駆け寄っていく。

 試験官風のおっさんはこちらに気がつくと


「ん?ハースちゃんか。ってことはそちらの女性がエクレールさん?」


 と訪ねてきた。


「こんにちはアルトさん。こちらがハザード様がDランク冒険者に推奨しているエクレール様です。」


「よろしくな。俺はアルト。元冒険者だが色々あってギルドで働いてる。」


「よろしく。それよりDランク冒険者?」



「ハザード様から聞いていないのですか?エクレール様ほどの強者を下のランクで遊ばせておくのは損益だと、Dランクから始められるように手配してくださったのです」


「えーと、ちなみにランクってのはなに?」


そんな初歩的なことを聞き返すとアルトが呆れたように答える。


「そんなことも知らないのか?まぁいい。冒険者にはランクがあってな、下からG.F.E.D.C.B.A.Sと分かれている。Gランクは誰でもなることができるが、街の中の仕事だけしかできない。町の外に出るにはFランクになる必要がある。その試験がこれって訳だ」


「ん?でも私はDランクからなんでしょ?」


「ああ。Dランクともなれば世間的には一人前の冒険者だ。ランクを上げるには一定数のクエストをクリアする必要があってな。その分厳しく見るからな」


「お手柔らかに頼むよ。ちなみになんでDランクなのか聞いても?」


「クエストを一定数こなすだけで上がれるランクがDまでだからだろうな。C以上に上がるには別途試験があるからな。つまりこの試験に受かれば、試験無しで上がれる最高ランクになれるってわけだ」


「なるほど」


 ハザードめ、なかなかに粋な計らいをする。帰ったら礼を言わないとな。


「それじゃあそろそろ始めるか」


「それではエクレール様、私は席で見ていますね。応援しています」


「任せときなよ」


「それでは試験の内容だが、やることは単純明快。俺と戦ってもらう。別に勝つ必要はない。戦いの内容をみて外に出しても問題ないと判断できればそれで合格だ」


 それを聞き少年少女達は緊張している様子だ。


「ちなみに勝てば問答無用で合格ってことでいいの?」


「そうだな、だが俺は元とはいえAランク冒険者だ。そう簡単に負けてやる気はないぞ」


 さっきから動きの端々からなんとなくそんな気はしていたが、やはりなかなかの強者だったようだ。


「では受付順に始めるか。ちなみに武器はいつも使っているものを使ってくれて構わない。魔法も使えるのなら使ってくれていい。実戦だと思ってかかってきてくれ」


 これはおそらく向こうの少年少女に言っているのだろう。私が龍刀で魔法も本気で使って戦ったらたとえアインが10000人いようと勝てると思う。とりあえずアインと戦ったときと同じく、魔法は使わないようにしよう。


「それでは、最初はお前からだ。前に出ろ」


 呼ばれたのは黒髪の気弱そうな少年だ。剣ではなく杖を持っていることから、おそらく魔法を使うのだろう。


「マッド・カイルズです!よろしくおねがいします」


「よし、構えろ。あーエクレール。合図を頼めるか」


「分かった」


 二人が構えたのを確認しエクレールは開始の合図を出す。


「では、はじめ!」


 こうしてアルトとの戦闘試験の初戦が始まるのだった


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