第14話

 ハースと共に街へ出掛けるエクレール。

 オルグに入ってから領主の館まで馬車の中にいたので初めての散策だ。

 ハースが馬車を出すと言ったが、エクレールはせっかくだからと歩いて行こうと言う。結果館から冒険者ギルドへ歩いて向かうことになる


「来るときも思ったんだけどこの辺はあんまり人がいないね」


「ハザード様のお屋敷は街の外れに有りますからね。急ぎの用事の時に人通りが多くて、なんて事では困りますからね」


 でも正門から遠かったら意味がないのではと思うエクレールだったがなんとなく言わないでおく。


 5分ほど歩くと人通りが多くなってくる。街並みはThe異世界といった感じの中世風だ。神界で一時期流行った日本のアニメや書物の中に入り込んだようで少しワクワクする。


「冒険者ギルドまでまだかかる?」


「いえ、実はもう見えてます。正面に見える大きな建物が冒険者ギルドです」


 他の建物より大きな建物があるとは思っていたがそれが冒険者ギルドだったようだ。


「おー、おっきいね。もし迷ってもオルグ中心部で1番大きい建物探せばギルドにつくって感じかな」


「そうですね、この辺りだと一際大きいですね。さ、中に入りましょう」


 ギルドに入ると中には人がごった返しており、よく見ると大きな掲示板と受付がある。右に逸れると酒場があるようだ。


「朝なのにすっごい人いるね、人混みに酔いそう」


「朝でしょうね」


「朝?というと?」


「あの掲示板に依頼書が貼ってあって、それを受付に持っていってクエストを受けるんです。その依頼書が朝に張り出されるので、より良いクエストを受けるために朝から集まっているということです」


「なるほどね、お昼とかに来ると他の冒険者が受けなかった所謂余り物しかないわけだ。だからこんなに混雑してるってことね」


 エクレールは納得してウンウンと頷く。そして受付の方を見て嫌そうな顔をする。


「…で、あれに並ぶの…?」


 受付は何人かいるがそのどれにも、十数人単位で列ができている。列に並んで待つのはあまり好きじゃない。


「いえ。事前にハザード様からエクレール様の事は伝わっていると思うので並ぶ必要はないかと。少々お待ち下さいね」


 そういうとハースは受付の方へといってしまった。

 並ばないと言っていたし、おそらくあまり時間はかからないだろうからここは大人しくじっとしていよう。

 そう思い近くの柱に寄りかかっていると


「おねえさん綺麗だね!もし暇なら一緒にお茶しない?もちろん奢るからさ!ね?」


 金髪でそこらのヤンキーみたいな男が声をかけてきた。こういう輩は少し苦手だ。人の話を聞かないところが、どこぞの創造神を思い出してイライラする。


「今、人を待っているからほかをあたってくれる?」


「そうなんだ!じゃあ待ってる間話し相手になるよ!今日はなんの用事でギルドにきたの?」


 ほら、他を当たれと言っているのに当然のように粘着してくる。ハースが戻ってくるまで適当に流そう。ハース!早く帰ってきてくれ。


「冒険者になろうと思ってね。」


「へぇ、武器を持ってないから魔法とか使うのかな?魔法使いは数が少ないから重宝されると思うよ。そうだ!もしよかったらうちのパーティーに来ないか?女のコもいるからすぐに馴染めr痛い痛い!」


 怒涛の勢いでエクレールをパーティーに誘っていた男が、いつの間にか後ろにいた茶髪の女性に耳をつままれている。


「ゴメンね!こいつ女の子見かけるといつもこうだからさ。そうだ、こいつがパーティーに誘ってたってことは冒険者なのかな?私はネル、でこっちはキース。」


「私はエクレール。よろしく、まだ冒険者じゃないけど」


「まだってことは冒険者になりに来たって訳ね。頑張ってね!さ、戻るよ!」


「ちょっ!耳つまんだまま引っ張んな!あ、エクレールさん頑張ってねイタタタ!」


 そう言い残すとキースはネルに引きずられて酒場の方へ去っていった。


 とちょうどハースが帰ってくる。もう少し早めが良かったかな。


「おまたせしました。諸々の手続きは済んでいるので、後は冒険者試験だけです。訓練所で行うそうなので行きましょう」


「もうそこまで終わってるのね。分かった、ちゃちゃっと終わらせようか」


 そうしてエクレールはハースに連れられ試験会場である訓練所に向かうのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る