第13話
コンコンッ
扉がノックされる音で目覚めたエクレール。一夜にしてここまで警戒が解けているのは、実力に自信がある故かのんびりとした性格故か。
「エクレール様、朝食をお持ちしました。」
「んんぅー入ってー」
ハースが入ってくるといい匂いがしてくる。
ベッドの上で寝ぼけ眼を擦っていると、あっという間に朝食の準備が整う。
「エクレール様、準備が整いました。」
「ん。ありがと」
用意されたテーブルへ向かうと並んでいたのは、焼き立てのパンとカリカリに焼かれたベーコン、野菜が沢山入ったスープだ。The朝食って感じがする。
そんな朝食をささっと済ますとエクレールは髪を整えながら聞く。
「今日の予定ってどんな感じになるか分かる?」
「そうですね。まずこのあとハザード様が家庭教師の件について詳しく話したいと仰っていましたので、そちらへ。その後は街へ出て冒険者ギルドへ行き冒険者登録を済ませます。午後は特に何もないのでフリーということになると思いますよ」
「なるほどね、じゃあハザードのところへ行こうか」
「その前に食器を片してしまいますね。また手が空き次第戻ってまいりますね」
「分かった」
ハースは慣れた手付きで食器を纏めると部屋を後にした。
5分程待っていると再びドアがノックされハースの声がする。
「只今戻りました」
「早かったね、じゃあ行こうか」
滞在一夜にして既に3度目のハザードの部屋への訪問。さすがに道も覚えてきたものだ。
そうしてハザードの部屋につくとハースがノックし、声をかける。
「ハザード様、エクレール様をお連れしました」
「ああ、入ってくれ」
部屋に入るとハザードは書類の山とにらめっこをしていた。
「領主ってのは朝から大変だね」
「全くだ。とりあえずかけてくれ」
と言うと、書類からこちらへ顔を向ける。
「今呼んだのは家庭教師の件について詳しく決めようと思ってな。授業をいつやるのか、給金はいくらにするのか、期間はいつまでかとかな」
「確かに、昨日はやるって決めただけだったもんね」
そういえば何も決めてなかったなと思う。
「始めに期間なんだが、学院の夏期休暇の間。つまりシエラが学院へ行くまでってことで良かったよな?」
「問題ないよ。冒険者って仕事になれる為にもしばらくはこの街にいるつもりだったからね」
「よし、では授業についてだが週に3回午後いっぱいってのが今までの魔法の授業の時間なんだが変えるか?」
「いや、そのままでいいよ。魔力は使わないと育たないからね。もっと多くしてもいいくらいだね。冒険者と兼業じゃなければ」
「分かった。それとなんだが魔法だけではなく戦闘指導もできればやってやってほしい。なんでもアインに勝ったそうじゃないか。それほどの実力者の教えはなかなか受けられないからな」
「いいよ。多分言われなくても多少はしてただろうしね」
エクレールはすんなり了承する。
「それでなんだが魔法と戦闘についての指導を受け持ってもらうことになるから、給金は他の教師よりも多くしておく。具体的には他の教師が月に銀貨50枚の所金貨1枚にしようと思っている」
2つのことを教えるから倍ということだろうか。冒険者の傍らにやる副業としては破格ではないだろうか。
「とりあえずそれで問題はないよ。ところでいつから始めるの?」
「そうだな…問題なければ今日の午後が元々魔法の授業の時間だったから、午後からということになるが」
「午後は予定もないからそれでいいよ」
「うむ。では最終確認だが、期間はシエラが学院へ行くまで。午後からの授業を週3回。給金は銀貨20枚ってことでいいな」
「うん。問題ないよ」
そう言って用意されていた紙にサインをする。
「では契約成立だ。この後は冒険者登録に行くんだったか。軽く試験があるが頑張ってこいよ」
ここに来て新事実だ。ギルドに行けば冒険者になれると思っていたが、何かしらの試験があるとは。
まぁなんとかなるか。
しらんけど。
「頑張ってくるよ」
「ああ、これからシエラをよろしく頼む」
「こちらこそよろしくね」
そういうと、エクレールはハザードの部屋を出てハースと共に街へ出かけるのだった
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