第11話

 誰かが扉に近づく気配がして目を覚ましたエクレール。とても寝起きはいいとは言えないが、自宅以外だとすんなりと目を覚ますのは完全には警戒が解けていない証拠だろう。


 コンコンッ


「エクレール様。ご夕食の準備が整いました」


 ドアがノックされハースの声がする。


「分かった〜すぐ行くよ」


 特に着替え等をする必要もないので、簡単に髪を整えるだけでドアを開ける。


「行こっか」


 そういうとハースに案内を促す。

 食堂に着くと既にハザードとエシリアは席についており、エシリアの横には17歳位の男の子と15歳位の女の子が座っている。


「エクレール様、こちらの席へどうぞ」


 とエシリアに向かいの席へと促される。エクレールは言われるまま席につくとテーブルの上の料理に目をやる。

 鳥の丸焼きを始めとした手の込んだ料理が並んでいる。これが通常運転なのであれば厨房は大忙しだろう。それこそ休む時間がないほどに。


「やけに豪勢な食事だね。いつもこんな感じなの?」

「まさか。今日は妻が帰ってくる日だったのから事前に準備させておいただけだ。それに君を歓迎するためにいつもよりは豪勢にしてみたが」

「気を遣わせたみたいで悪いね。で、そっちの子は?」


 と訊ねるとエシリアが子供に向かって目線を向ける。すると2人が立ち上がり


「俺はグラン・メルセン。ローヤル魔法学院の3年首席だ。以後お見知りおきを」

「私はシエラ・メルセンと申します。兄と同じローヤル魔法学院の1年です。よろしくおねがいします」


 やっぱり2人の子供だったみたいだ。というか魔法学院なんてものがあるんだな。


「私はエクレール。2人共よろしくね」


 各人の自己紹介が済んだところでハザードが口を開く。


「では、冷めないうちに頂こうか」

「「「「いただきます」」」」


 どの料理も神界でもなかなか食べられないようなクオリティで、とても満足のいくものだった。

食事は進みエクレールはシエラに気になっていたことを聞いてみる。



「魔法学院って名前の通り魔法を学ぶところなの?」

「そうですね、魔法に関する知識や技術を互いに切磋琢磨し合う場所だと思っていただければいいと思います。ローヤル魔法学院はこの国でも最高峰の学院なんです」

「なるほどね。2人は優等生って訳だ?学業頑張りなよ?応援してる」

「はい!あ、そういえば、エクレールさんはどこから来たんですか?その御召し物から察するにスキノの方でしょうか?」

「スキノ?」

「違うのですか?スキノではそういう召し物をよく着ると聞いたのですが」


 聞けばスキノでは着物を着たり、特有の訛が合ったりするようだ。神界にいた頃に日本というところを眺めていたことがあるが、そこの一部の文化と似通っている。そのうち行ってみようかと思う。


「私は師匠と隠れ里で暮らしていてね。生きるのにその里の中だけで完結してたから、外のことは分からなくてね。そんな状態で師匠に空間魔法で、ここの近くの大きい森に転移させられちゃったから、何処から来たか自分でも分からないんだよね」

「メルフィー大森林に転移したのですか!?彼処は高ランクのモンスターが数多く生息していることで有名な場所ですよ!?良く無事でしたね」

「モンスターなんて一匹も見なかったけどね」

 そんなこんなで料理も無くなり各々部屋に戻ることとなった。


 部屋に戻ったエクレールは今後について考える。

 とりあえず確定しているのは明日ハースに街を案内してもらって、冒険者になることだ。

 そこからは未定な訳だが、冒険者の仕事になれるまでは、ここでやっかいになることになるだろう。その後にシエラの言っていたスキノにでもいこうか。


 そんなことを考え、ワクワクするエクレールだった。



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