第10話

 エシリアを助けた報酬として、白金貨10枚を手に入れたエクレール。

 すまないと言っていたハザードはそのまま話を続ける。

「時にエクレール。冒険者になりたいそうだが、理由を聞いても?」

 何故か冒険者になりたい理由を聞かれた。

「私の目的として、世界を旅して回るってのがある。それで冒険者になれば世界を回っていても路銀が稼げると思ってね」

「世界を旅して回るか。金を稼ぎたいのであればうちの騎士団はどうかと思ったのだが、余計なお世話だったようだな」

 確かに騎士団に入るのも一興ではあるだろうが、神界に帰るという目的の為にそんな事をしている場合ではない。

「では、私の方から冒険者ギルドへ連絡を入れておく。この手紙を渡せば取り計らってくれるだろう」

 そうして1通の封筒を受け取る。

「他に何か望むものはあるか?」

「特に思いつかないかな。何から何までありがとうね、ハザード」

「うむ、話は変わるのだがこれから冒険者をしていくにあたって貴族に対する言葉遣いは気をつけたほうがいい。私は特に気にしないが、私のような者の方が少ないだろう。少しでもトラブルを避けたいなら、気をつけて置くべきだぞ」

「なるほど、忠言感謝する。ただ特に改めるつもりは無いよ。言葉遣い程度で敵対するような小物に遅れを取る程やわではないし、媚を売ってまでそういう連中と仲良くしたいと思うほどお人好しでもないからねー」

 そういうとハザードは頭に手を当てる。

「今までの態度からそう言うだろうとは思ってたが、あまり敵を作るなよ?後々面倒なのは自分になるんだからな」

「分かった。善処する」

 そう頷くとハザードはやれやれといった様子で腰を上げる。

「じゃあ私は仕事に戻る。エシリア、後は任せるぞ。」

「わかったわ」

 そう言ってハザードは部屋から出ていった。

「エクレール様、その御召し物はどうされたのですか?」

「ああ、私は空間魔法が使えるからね。色々物を空間魔法の中に閉まってあるんだよ。ほら」

 そういって手元に、来るときに着ていたコートを取り出す。

「なるほど。だから身軽だったのですね。」

 エシリアはうんうんと納得している。

「ところでエクレール様、このあとご予定などはあるのですか?」

「特に無いかな。予定はなんにも決まってないよ」

「でしたら今日はそのままお休みください。明日ハースに街を案内させます。」

「いいの?ハースにも仕事があるでしょ?」

「いいのです。他にもメイドや執事はおりますので。それとお部屋ですが、オルグに滞在中はご自由に使って頂いて構いません。」

「何から何まで助かるよ」

 とりあえず明日の予定と宿の問題は解決したみたいだ。

「ハース!いますか?」

 エシリアがそういうとドアが開きハースが出てきた。

「ここに。」

「エクレール様をもう一度お部屋へ案内するように。あと明日街を案内して差し上げなさい」

「承知しました。エクレール様こちらです。」

「ではエクレール様、食事の時までお休みください」

「エシリア、ありがとね。またあとで」

 そう言い残すと、ハースに連れられ充てられた部屋まで戻ってきた。

「夕食まで2時間ほど御座いますので、どうぞごゆるりと。準備が出来ましたら呼びにきます」

「今度は大人しく部屋にいるよ」

 ハースは礼をしていってしまった。

 さて2時間ほど時間が出来た訳だが、大人しくしているといった手前、騎士団のところに顔を出すわけにも行かない。

 特にやることもなくベットに横になる。

 今日一日で相当収穫があった。

 行く宛もどこにいるかも分からない所から、資金を手に入れ、衣食住もなんとかなった。

 私はよく頑張った。のでとりあえず寝るか。

 エクレールが目を瞑るとすぐに寝息をたて、夢の世界へ旅立つのだった。




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