第8話
「では、始め!」|
エクレールとアインの模擬試合が始まった。
掛け声と共にアインが仕掛ける。
「
瞬く間に繰り出される8つの斬撃。最初からフルスロットルのようだ。それにこの技は高ランク冒険者でも受けられるものはほとんどいないほどに洗練された技だ。しかし、
「いいねぇ!
対するは、全く同時に放たれる10の斬撃。
その完成された技の美しさに周りの騎士たちは目を奪われる。
アインは7つの斬撃を相殺するも1つは相殺しきれず2つはもろに食らう。といっても鎧の上からなので衝撃で後ろに飛ばされた位だ。
もし実戦なら刃に魔力を流しているので、この時点でかなり深い傷を負っただろう。
「クッ!
飛ばされたアインは着地と共に前へ踏み込み横薙ぎの一閃を放つ。それこそ、この場にいるエクレール以外には目にも追えない速度の一閃。だがエクレールにははっきりと見えている。
「
エクレールは一歩引きながら、横薙ぎの一閃を放つ。アインの斬撃を相殺しても、勢いは死にきらずアインは剣を飛ばされそうになるが、瞬間的に後ろに飛ぶことで剣が飛ばされることを回避する。
距離を取った二人は互いに構え直し睨み合う。
速さでも手数でも負けているアイン。ならば一撃の威力にかけ、次で終わらせるしかない。
エクレールもアインがそう来るであろうことはわかっていたので、納刀し抜刀術の構えを取る。
それに戸惑ったアインだったが、それがどうしたと前に出る。
「
受けるもの全てを粉微塵にするような、全身全霊の大上段からの切り下ろし。
対するは
「
光をも置き去りにする神速の抜刀術。
アインの斬撃がエクレールに届く前に、エクレールの刃がアインの首筋に触れていた。
「…そこまで!」
圧倒的な速さの抜刀術によりエクレールが勝利を収めた。
時間にしてみれば1分にも満たない短い試合だったが、その内容は濃厚なんてものではなかった。それはこの場にいる全員がわかっていた。
「いや〜、完敗だな!ここまで圧倒的に勝たれると逆に気持ちがいいってもんだ」
「結構いい線言ってたと思うよ?アインの剣も。あの奥義にまともに打ち合ったら流石に勝てなかったかな」
「あの剣術見せられたあとに言われても素直に喜べねぇよ」
そういってアインが肩を竦める。
「そこはありがとうでいいと思うよ?」
「エクレール殿!剣術は友人の鍛錬に付き合っていただけだと言っていたのは嘘だったのか!?明らかにそんなレベルではないだろ!?」
「まぁ少なくとも同じレベルじゃなきゃ鍛錬の相手にはなれないからね。それだけ向こうの実力が高かったことかな」
「類は友を呼ぶとは言うが、やはり強者の元には強者が集まるものなのだろうか……」
フラムはなにやら考えているみたいなので放っておこう。
「エクレール殿、その強さに敬意を評し、改めてメルセン騎士団は貴方を歓迎致します。」
そういってアインが敬礼すると、他の騎士たちも一同に敬礼する。
「そういう堅苦しいのはいいよ。こっちも改めてよろしくね、アイン」
エクレールが手を差し出しアインと握手をすると、
「エクレール様、ハザード様とエシリア様の準備が整ったので、お呼びに参りました。」
メイドのハースがエクレールを呼びに来たのだった。
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