第6話

領主の館へ到着しまず玄関前で出迎えてくれたのは青髪のメイドだった。

「お帰りなさいませエシリア様。あら、お連れの方も歓迎致します。私はメルセン家専属メイドのハースと申します」

ハースは礼儀正しくそう言ってきた。


「出迎えありがとうハース。此方は私達の命の恩人であるエクレール様です。くれぐれも丁重にもてなすように」


「かしこまりました、エシリア様」


「エクレール様、少し準備をしてきますので先にお部屋で休んでいてください。準備ができ次第お呼びしますね。ハース、お部屋への案内頼むわ。」


「かしこまりました。エクレール様、此方です」


「は、はあ」

ハースが部屋へ案内してくれるようだ。エクレールは案内されるがままついていこうとすると、フラムに呼び止められた。


「エクレール殿、これからうちの騎士団の稽古があるから、もし時間があればご足労願えるとありがたい」

メルセン家は自前の騎士団を持っているのか。フラムほどの実力者が居るのであれば後で見に行って見るのも悪くないかもしれない。


「分かった。暇になったら顔出すよ」

そういうとフラムは満足そうに頷いて、

「来ていただけますか!ならばより鍛錬に気合を入れなくては!」

そう言うとフラムは行ってしまった。振り向くとハースがこちらを向いて待っていたので声をかける。

「待たせたね、改めて案内お願いするよ」

「はい。こちらです。」


ハースが歩き出したのでエクレールもその後を追う。

玄関を入り、すぐの大広間を抜け階段を登っていく。その間廊下の壁に高そうな絵が飾られていたり、高そうな壺が飾られていたりする。

「流石領主ってだけはあるか」

「ハザード様は一代にしてこのオルグをここまで大きく発展なされた偉大な御方です」


おっと心の声が漏れてしまっていたようだ。二階へ上がり2つ目の部屋に来たところでハースの足が止まる。

「こちらのお部屋をお使いください。」

そう言って通されたのは凄く広い部屋だった。端的に言えばスイートルームって感じだ。天幕の付いた大きなベッドや座り心地の良さそうなソファ、化粧台にクローゼットとあったらいいなと思うものは大体揃ってるそうな部屋だ。

「うわっここがわたしの使う部屋?」

「お気に召しませんでしたか?これ以上の部屋はないのですが…ご希望があれば何なりとお申し付けください。可能な限り揃えてみせます」

「いやいやそうじゃなくて、気に入ったよ、こんな良いところでいいのかなと思ったんだよ」

「エシリア様の命の恩人であるエクレール様に、最上級のおもてなしをするのは当然です。是非ご自宅だと思ってゆるりと過ごしていただければ」

「そう?ならそうさせてもらおうかな」

「何かあればお申し付けください。ではエシリアとハザード様の準備ができ次第お呼びに参ります」

そういうと、ハースは頭を下げ行ってしまった。

さて、呼ばれるまでの間何をしようか。そういえばさっきフラムに顔を出すと言ったっけ。早速だが行ってみることにしよう。

そうしてエクレールは部屋を出て玄関前まで戻ってきた。

「戻ってきたはいいものの場所聞いてなかったな、どこだろ?」

そういえば何処でやっているのか聞くのを忘れていた。

とりあえず散策ついでに庭を歩いてみる。庭に生えている草木は見事に整えられている。中には鹿のような形に整えられた木すらある。ここの庭師は優秀なようだ。

そんなことを思いながらダラダラと歩いていると、剣戟の音が聞こえてきた。

「ハァッ!」

「ふん!」

見れば二人の騎士が模擬戦をしている。

二人共拮抗した実力のようだ。両者譲らずに切り合っている。審判はフラムが務めているようだ。

そんな中審判をしていたフラムが私に気づいたようで、


「両者やめ!エクレール殿、早速来ていただけたのですね」

二人の戦いを止めて声をかけてきた。


「二人の戦い止めてよかったの?邪魔した?」

「この二人はいつもなかなか決着がつきませんからね。いつも適度なところで止めるんですよ」

それでいいのだろうか。まぁ口出しする気は無いけど。

「アイン団長!エクレール殿が来てくれましたよ!」

フラムが奥にいたフラムと同じ赤髪の貫禄のある中年の男に声をかける。


「貴方がフラムの言っていたエクレール殿…ほう…いい目をしている。」

男は私の目を見てなにかを察したようだ。


「失礼。俺はメルセン騎士団団長アイン・シュベルツだ。よろしく頼む」

「よろしく、知ってるようだけど私はエクレール。冒険者志望の旅人だよ」

アインが自己紹介をしてきたので、エクレールも軽い自己紹介をした。


「急な願いで悪いのだが、俺と戦ってはくれぬか?フラムが絶賛するほどの腕。しかとこの身で確かめたい。」

自己紹介を終えるとアインはエクレールに模擬戦の申し出をしてきたのだった。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る