第3話
2度目の眠りから覚めると日は高く昇っており、結構な時間眠ったらしいことが分かった。
「うーん…夢オチであってほしかったなぁ…」
徐々に覚醒していく意識がこれが夢でない事を証明している。
意識がはっきりしてくると、まずやるべきことが見えてきた。
それは
「お腹…すいたな…」
この空腹を満たすことだ。何をするにしても空腹ではモチベーションが上がらないというものだ。ここで問題なのが、今まで神気によって発動していた空間魔法の中のものを、神気が使えない今取り出せるのかということだ。空間収納の中には食料や装備等が山ほど詰めてあるので、これが使えれば食糧問題は完全解決だ。
まあ、考えていても答えは出ないので、とりあえず今まで通りに発動させてみる。魔法陣が宙に描かれるまではよかったが、途中で霧散してしまった。結果は言わずもがな失敗。
霧散したということはおそらく魔法陣を構築する魔力が足りていないのだろう。今度は魔力を思いっきり注いで発動させてみる。魔力を神気の20倍ほど込めたところで、目的のものを取り出すことができた。
「いつもの20倍か…神気に慣れてるとキッツいなぁ」
とはいうもののそもそも神気を1使って発動していたものが
魔力を20つかうことになっただけだ。エクレールの総魔力ならば空間収納内のもの(どこぞのAUOの宝物庫並み)をすべて取り出して、もう一度全て仕舞い直してもおつりがくるので、魔力的には全然余裕ではある。
まあそんなことはどうでもよくて。
大事なのは今取り出したこの包みだ。中に入っているのは、鳥の照り焼きとレタスとマヨネーズを挟んだシンプルなサンドイッチが4切れ。空間収納内の時間は止めておいてあるので、もちろん出来立てだ。
「それじゃ、いただきま~す」
甘辛いタレとジューシーな鶏肉。マヨネーズの酸味とレタスのみずみずしさ。それらを挟むパンはタレを吸い込んでしっとりかつフワフワで、いくらでもたべられそうだ。包みの中のサンドイッチは瞬く間になくなってしまった。
満腹とはいかないが十分満足だ。神界で気に入ったものを余分に買っておいてよかった。
とりあえず空腹をしのぎ、空間収納が使えることが分かったのは大きい。
ともあれここから行動開始だ。
「まずはこの格好をどうにかしようか」
白いワンピースに羽衣を纏っているだけだ。空間収納から適当なものを見繕うか。
そして選んだのは、フェンリルの毛皮を使ったコートだ。魔法、物理ともにとても高い耐性を持ち、コートの中は自動空調付きの万能装備だ。もふもふしていて肌触りが
いいのがお気に入りでよく着ていたものだ。コートの中は肌触りだけで選んだノースリーブのシャツと短めのズボンだ。
「こんなものか」
衣装を整えながらエクレールはつぶやく。その立ち姿は抜群のプロポーションも相まって、一流のモデル顔負けなほどな着こなしで、それこそ見ている人に女神だと錯覚させるほどだ。(事実女神なのだが)
装備も決まり腹も満たせば残るは、この大森林から抜け出すだけ。
なのでもう一度サーチ魔法を発動させる。エクレールを中心に魔力の波がはなたれ、その波はぐんぐんと進んでゆく。数分続けてもやはり端は見えてこない。なので人が住みやすそうな空気中の魔力濃度の低い南に向かうことにした。
「なるべく早く人に会えるといいな!」
そうと決まればそのあとは早かった。
神気が使えなくなっても龍種由来の圧倒的な身体能力と、桁外れの魔力は問題なく行使できるので、まるで木々が避けていくような錯覚すら覚えるほどの速度で、森を駆けた。そしてそろそろ日が沈み切る頃。
「もうサーチしたところは過ぎたけどまだ続くのかな?」
休むか進むか判断しようとしたとき、エクレールの耳に入ったのは
「助けてっ!!!」
遠くでかすかに聞こえた女性の悲鳴だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます