第2話

「まさか…ここって下界?」


 久々の魔力による魔法発動で張り切ってサーチした結果、分かったのはここが大森林であるということだ。神界にも森はあるがここまで大規模なものは無い。

 神界の森は普通に歩いて1日もあれば端にたどり着けるが、この森は恐らく3日以上はかかりそうだ。神界の森ではなくあの創造神が転移させそうな場所。辿り着く答えは神界下に広がる下界。

 下といっても神界が下界より高次元の世界だというだけで、下を覗けば見えるようなものではない。神界から下界への行くことはある程度簡単にできるものの、下界から神界へというのはそう簡単には行かない。

 確か下界のどこかにある神界への門に神気を注げば門が開かれ、そこからなんやかんやしてやっと神界へ入れると最高神が言っていた気がする。

 まさか自分が下界へ降りるとは思っていなかったので適当に聞き流していたのが仇になった形だ。


「ここが本当に下界なら、まずはこの広い世界の中から神界への門を探さなければならないのか…面倒だ…」

 神界へ戻ったらヘレインになにをしてやろうかと考え始めた時、ふと気づいた。

 神気を封じられ、下界へ落される。

 これってもしかして…


なんじゃ…」


 神降ろし。

 神界の秩序を乱したり、神界の害になると判断された神が最高神ら6柱の神(以下6神)によって審判され受ける罰の内、最も重いものだ。

 神としての力を剥奪され下界へ落とされる。その際、体に烙印を押され2度と神界へ足を踏み入ることが許されない。

 腹部の印をこの烙印だと考えれば今の状況は正しく神降ろしだ。それによくよく見てみれば私への当て付けか龍の足跡の様な印だ。

 あとは力の剥奪では無く封印というのが少し気になるが、恐らくエクレールの神気の量(ざっと最高神ら6人の合計と同等)を考えれば、最高神ゼレスであっても強力な封印で封じ込めるので精一杯だったと言われれば納得はできる。


「つまり、仮に神界への門を見つけたとしても神界には帰れない…?」


 ふざけるな。

 私が何をしたのか。確かに寝ぼけて6神の審判所を吹き飛ばしたり、戦神達の鍛練に付き合った時に、戦神達をぶっ飛ばして公共神殿に穴開けたりしたことはあるが、しっかりとへレインに修復させているのでチャラだ。

 仮に審判にかけられても、精々公共神殿の掃除1週間程度で済む程度だ。今まで神降ろしされたのなんて神殺しをした奴くらいだ。


「なんで私が神降ろしされたのだろうか?」


 ぱっと思いつくのは、6神が私の事を恐れてというものだ。

 やったことはないが6神と私が全力でぶつかっても多分勝てると思う。だからそんな私の力を恐れて何も言わずに神降ろしにしたというものだ。

 もしくは、最初の読み通りヘレインのイタズラか。

 ここまで考えてみると明らかに前者な気がする。6神とはなかなか反りが合わないことが多かったがここまでとは。


「いくらなんでもやりすぎでしょ…」


 ここまで考えてふと思った。

 そもそも神界に帰る必要があるのだろうか。神気が使えないのは痛いが、この封印も時間をかければ解くことはできるだろう。向こうにやり残していることは無いし、仮に帰ってもまた同じダラダラとした日常を過ごすだけだ。ならば下界でしばし退屈な日々とおさらばしてもいいのではないか。

 当面の大きな目標は神界への門を探すことと、神気の封印を解くこと。だが別に急ぐ必要は無いと思うと、なんだかどうでもよく思えてきた。

「まぁなんとかなるでしょ!」


 考えるのを辞め、近くの木の陰で2度寝と洒落込むエクレールであった。


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